オペラント条件づけ

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オペラント条件づけ(オペラントじょうけんづけ、operant conditioning)とは、学習の一種である。道具的条件づけスキナー型条件づけまたはオペラント学習とも呼ばれる。E. L. ソーンダイクによる試行錯誤学習の研究をもとにB. F. スキナーによって定式化された。

ヒトを含む動物が自発する広範な行動が条件づけの対象となり、日常生活の中のいたるところで偶発的に生じている。また経験則として、子どものしつけや飼育動物の訓練などに古くから用いられてきた。 スキナーとその後継者によって行動療法プログラム学習などの応用領域が開拓され、現在では、動作や運転などの技能訓練、嗜癖や不適応行動の改善、障害児の療育プログラム、身体的・社会的リハビリテーションe-ラーニングなど、幅広い領域で自覚的で洗練された応用がなされている。 小児歯科において、治療がスムーズに進行するように利用されることもある。

定義

オペラント条件づけとは、オペラント行動が自発された直後の環境の変化に応じて、その後の自発頻度が変化する学習をいう。

オペラント行動 (operant behavior) とは、その行動が生じた直後の環境の変化(刺激の出現もしくは消失)に応じて、その後にその行動が生じる頻度が変化する行動をいう。レスポンデント行動(respondent behavior)とは異なり、オペラント行動には通常それを“誘発する”生得的な刺激(無条件誘発刺激)は存在しない。オペラント行動は個体が“自発する”行動である。

また、オペラント (operant) とはオペレート(操作する operate)からのスキナーによる造語である。 つまり、ある行動を生起させる要因に対し、行動がある環境に操作を加えることで変化をもたらすことによる。

  1. 強化(reinforcement)とは、オペラント行動の自発頻度の高まりをいう。
  2. 弱化(punishment)とは、オペラント行動の自発頻度の低まりをいう。
  3. 好子(強化子 reinforcer、正の強化子、強化刺激ともいう)とは、出現したことによって直前のオペラント行動の自発頻度を高めた刺激である。
  4. 嫌子(罰子 punisher、負の強化子、嫌悪刺激ともいう)とは、出現したことによって直前のオペラント行動の自発頻度を低めた刺激である。


行動随伴性

行動随伴性(behavior contingency)とはオペラント行動の自発頻度の変化とそれが自発された直後の環境の変化との関係をいう。行動随伴性には、

  1. 好子出現による強化(正の強化)
  2. 好子消失による弱化(負の弱化)
  3. 嫌子出現による弱化(正の弱化)
  4. 嫌子消失による強化(負の強化)

の4種類がある。

また、行動随伴性というメガネを通して行動の分析を試みる事こそ行動分析学の根幹である。

スキナー箱

たとえばスキナー箱に絶食させておいたネズミを入れ、ブザーが鳴ったときレバーを押すとエサがもらえるようにしておくと、やがて、ネズミはブザーの音に反応してレバーを押すようになり、ブザーが鳴った直後にネズミがレバーを押す頻度(確率)が増加していく。これが正の強化の一例である。

  • このとき「レバー押しの動作がエサで強化される」と表現される。
  • エサは出現したことによって直前のオペラント行動の自発頻度を高めたので好子と表現される。
  • 絶食させたことが、餌に強子としての特性を与えた(確立した)ので、絶食を確立操作という。
  • ブザーはエサに先行して出現しているため先行刺激と呼ばれる。
  • ブザーが鳴っているときにはレバーを押し、鳴っていないときには押さなくなった場合、ブザーは弁別刺激と呼ばれる。

トークン

貨幣、引換券、点数など、集めることによって他の好子と交換できる(交換可能性を持つ)好子をトークンと呼ぶ。

たとえば、課題の動作を重ねて行なうと手に入る引換券によってエサが得られるようにしておくと、チンパンジーはこの課題を遂行するようになる。

参考文献

  • 鹿取広人ほか編(1996)『心理学』東京大学出版会.
  • B.F.スキナー 著(1953)『科学と人間行動』二瓶社2003年.
  • B.F.スキナー 著(1987)『人間と社会の省察』勁草書房1996年.
  • 異常行動研究会 編(1969)『オペラント行動の基礎と臨床-その進歩と展開-』川島書店.
  • D.E.ブラックマン 著(1974)『オペラント条件づけ-実験的行動分析-』ブレーン出版1981年.
  • G.S.レイノルズ 著(1975)『オペラント心理学入門-行動分析への道-』サイエンス社1978年.
  • 佐藤方哉 著(1976)『行動理論への招待』大修館書店.
  • S.ヴィノカー 著(1976)『スキナーの言語行動理論入門』ナカニシヤ出版1984年.
  • 岩本隆茂・高橋雅治 著(1988)『オペラント心理学-その基礎と応用-』勁草書房.
  • S.W.ビジュー 著(1993)『子どもの発達の行動分析 新訂版』二瓶社2003年.
  • H.D.シュリンガー,Jr 著(1995)『行動分析学から見た子どもの発達』二瓶社1998年.
  • S.W.ビジュー & E.リブス 編(1996)『行動分析学からの発達アプローチ』二瓶社2001年.
  • 杉本尚子・島宗理・佐藤方哉・R.W.マロット・M.E.マロット 著(1998)『行動分析学入門』産業図書.
  • J.E.メイザー 著(1998)『メイザーの学習と行動-日本語版第2版』二瓶社1999年.
  • 実森正子・中島定彦 著 (2000)『学習の心理-行動のメカニズムを探る-』サイエンス社.
  • D.J.ボールドウィン & J.I.ボールドウィン 著(2001)『日常生活の行動原理-学習理論からのヒント-』ブレーン出版2003年.
  • W.T.オドノヒュー & K.E.ファーガソン (2001)『スキナーの心理学-応用行動分析(ABA)の誕生-』二瓶社2005年.
  • 久保田新ら 著(2003)『医と心を考える 臨床行動心理学の基礎-人はなぜ心を求めるのか-』丸善株式会社.
  • 杉山尚子 著(2005)『行動分析学入門』集英社新書.
  • 小野浩一 著(2005)『行動の基礎-豊かな人間理解のために-』培風館.
  • 伊藤正人 著(2005)『行動と学習の心理学-日常生活を理解する-』昭和堂.
  • 岩本隆茂・和田博美 編(2006)『行動心理学-社会貢献への道-』勁草書房.

関連項目

外部リンク

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