ウィーンの変位則

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ヴィーンの変位則(ウィーンのへんいそく、テンプレート:Lang-en-short)とは、黒体からの輻射のピークの波長が温度に反比例するという法則である。ヴィルヘルム・ヴィーンによって発見された。ヴィーンはドイツの物理学者であるため「ヴィーン」が正しい名称となるが、慣習的に英語読みのウィーンの変位則とよばれることも多い。

<math>\lambda_\mathrm{max} = \frac{b}{T}</math>

ここでT は黒体の温度(K)、λmax はピーク波長(m)、b は比例定数で

b = 2.897 7721(26) テンプレート:E- K · m

である[1]。CGS単位系では b は約 0.29 cm · K である。

物体の温度が高ければ、放射される波長は短くなる。例えば、太陽の表面温度 5780 K の場合ピーク波長は 500 nm にある。 白熱電球をみると、温度の低い時、黄色っぽい光になりさらに温度が低い時赤くみえる(色温度も参照)。

導出

ヴィルヘルム・ヴィーンによって発見されたが、プランクの式から導くことができる。

プランクの式によると、黒体輻射の分光エネルギー密度u は次式で表される:

<math>u(\lambda,T) = \frac{8\pi h c}{\lambda^5}\,\frac{1}{ e^{h c/\lambda kT}-1}</math>

波長の最大値λmax を求めるために、波長分布 u (λ) をλで偏微分して、0 になる波長を求めればよい。

<math>\partial_{\lambda}u(\lambda_\mathrm{max}) = 8\pi h c\left( {hc\over kT {\lambda_\mathrm{max}}^7}{e^{h c/\lambda_\mathrm{max} kT}\over \left(e^{h c/\lambda_\mathrm{max} kT}-1\right)^2} - {1\over{\lambda_\mathrm{max}}^6}{5\over e^{h c/\lambda_\mathrm{max} kT}-1}\right)=0</math>
<math>\therefore\frac{hc}{\lambda_\mathrm{max} kT }\,\frac{1}{ 1-e^{-h c/\lambda_\mathrm{max} kT} }-5=0</math>

ここで<math>x\equiv hc/\lambda_\mathrm{max} kT</math>とすると、

<math>\frac{x}{1-e^{-x}}-5=0</math>

となる。この方程式は解析的には解けないが、ランベルトのW関数を用いて、

<math> x = W(-5e^{-5})+5 </math>

と表現することができる。これを数値計算すると、

<math>x\approx4.965114231744276</math>

となる。x からλmax を求めると、<math>b \equiv hc/kx</math> として、

<math>\lambda_\mathrm{max} = \frac{b}{T}</math>

を得る。

別の導出

振動数で表示されたプランクの公式

<math>R(\nu) = \frac{8\pi h}{c^3} \frac{\nu^3}{e^{h\nu / kT} - 1}</math>

を用いても、同様の導出が可能である。この場合、<math>x \equiv{h\nu_\mathrm{max}/kT}</math> は

<math>\left(3 - x\right)e^x = 3</math>

を満たすものであり、やはり解析的には解けないが、数値計算により

<math>x \approx 2.8214</math>

とわかる。したがってピークにおける振動数は

<math>\nu_{\mathrm{max}} = \frac{kx}{h}T = (5.8789 \times 10^{10}\,\mathrm{Hz/K}) \,T</math>

となる。λmax · νmax = c ではないことに注意が必要である。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

  • CODATA 2010, Wien wavelength displacement law constant