イエスタデイをうたって

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テンプレート:Sidebar with collapsible listsイエスタデイをうたって』は、冬目景漫画。『ビジネスジャンプ』(集英社刊)に不定期連載され、同誌休刊後『グランドジャンプ』に移籍し連載中である。単行本は2014年現在、第10巻まで発売中である。1年間の掲載が5回に満たないこともあり、第3巻が出てから第4巻が出るのに2年以上、第4巻から第5巻までほぼ3年かかっている。第6巻発売と同時に、画集『―YESTERDAYS―』が発売された。

概要

大卒のフリーターとして登場した後、物語の進展とともに写真スタジオで働きはじめる主人公を中心に、歳の離れているふたりのヒロインや、個性的で深みのあるサブキャラクターたちが、恋愛、仕事、(美大)受験、家族、夢といった日常的な問題に直面し、一進一退を繰り返しながら、じぶんたちの未来をほんの少しずつ手探りしてゆく人間ドラマ。物語の主な舞台となるのは、“新宿にほど近い私鉄沿線の小さな街”とされているが、横浜金沢も重要な舞台として登場する。『イエスタデイをうたって』というタイトルは、忌野清志郎が率いたロックバンドRCサクセションの曲から採られている。 後述通り『羊のうた』とは世界観を共有している。

ストーリー

大学を卒業したものの職に就くことなく、フリーターとして特に目標もないまま過ごしているリクオ。そんなある日、カラスを連れた黒ずくめの少女・ハルが現れる。彼女の破天荒な振る舞いに戸惑う中、リクオはかつての想い人・榀子が東京に戻ってきた事を知って……。

登場人物

主要人物

魚住 陸生(うおずみ りくお、リクオ)
主人公。大学を卒業しても、就職できなかった(しなかった)いわゆるフリーター
お人よしな性格。自分の方向性を見失っている。カメラが好きだが、仕事にする気はないようだ。自称人は撮らない主義。
一人暮らしで主にコンビニバイトをしており、途中から写真ギャラリーでバイトを始める。第5巻で写真スタジオに正社員として就職した。第6巻でコンビニのバイトを辞めた。横浜市に実家がある。
大学卒業後、榀子に一度告白した。その際、振られているが、榀子とは今でも「友達以上恋人未満」の微妙な関係が続いている。
ハルには第1巻から好きだと告げられ、アプローチを受けており、ふとした瞬間にドキッとさせられたりするなど、微妙な感情を抱くようになっている。よく風邪で寝込むことがある。
野中 晴(のなか はる、ハル)
不思議な雰囲気の少女。常に黒を基調とした服を着て、カンスケという足の悪いカラスをつれている。
かつては都立十泉高校に通っていたが、あるバーでバイトをしていた事を高校に咎められ、自主退学してしまった。現在はミルクホールという喫茶店(夜はバー)でバイトとして働いている。
家庭は母子家庭だが実父の姓である「野中」を名乗っている(母親の姓は秋元)。2巻では母親に再婚の話が出ているが、名前は変えない、と固辞した。祖父が住んでいた古い一軒家で一人暮らしをしている。おにぎりの具をあんこチョコレートなどにするなど、作る料理はとにかく奇抜で周囲を当惑させる。
リクオの大学受験の当日、バス停に向かうリクオが落とした受験票を拾って渡したことがきっかけで、彼に想いを寄せ始めた。破天荒な性格で、リクオをしょっちゅう振り回しているが、恋愛に関してはとても健気で一途。リクオが振り向くまでいつまでも待つつもりでいる。
森ノ目 榀子(もりのめ しなこ、榀子)
リクオの大学の同級生。金沢市出身で、東京の大学を出て金沢で非常勤講師をしていたが東京に戻ってきた。
コンビニ近くの都立十泉高校で、化学の教師をしている。一時とはいえハルの副担任であり、学校に隠してバイトをしていた彼女を庇いきれなかったことに罪悪感を覚えていた。
過去に好きだった幼馴染み、早川 湧(はやかわ ゆう)を亡くしたことをずっと引きずっていて前に進めないでいる。第1巻の途中で長かった髪をばっさりと短くした。
リクオに告白されるも、「友達の関係がいい」と振ってしまう。しかし時が経つにつれ、リクオに対する想いが少しずつ変わりつつある。
早川 浪(はやかわ ろう、浪)
榀子を追いかけるように金沢から上京してきた幼馴染みの少年。榀子の想い人であった早川 湧の弟。
時折左耳に安全ピンピアスのように身に付けている。
年が7つも離れているものの、榀子のことが本気で好き。しかし当の榀子からは弟以上の感情を持たれておらず苦悩している。美大を目指しており、予備校に通っている。女子にモテるのだが、榀子以外の女性には全く興味を示さず、つっけんどんな反応しか示さない。恋敵のリクオに対してたびたび牽制をかけている。
「湧の弟」としてではなく、自分自身を見てもらうために絵(美大)というアイデンティティで自分を示そうとしている。第6巻現在浪人中。
デリバリーで度々予備校に訪れるハルとは顔見知りで、立場上戦友のような関係。

準主要人物

早川 湧(はやかわ ゆう、湧)
榀子の幼馴染みで、浪の兄。故人。
生まれつき体が弱く、病弱であったため、自分の死を身近に感じていた。
榀子が高校3年の春の時に夭折するも、いまなお榀子の心の中心に在り続けている。浪からは無敵のラスボスと揶揄された。
顔は一度もきちんと描かれてはいないが回想シーンでの登場数は多く、存在感は大きい。
湊 航一(みなと こういち、湊)
写真家を目指す大学2年生。ハルとは高校時代の同級生。将来はマスコミ関係に進みたいと思っている。それ故に自分のやりたいことが決められず、ふらふらしているリクオとは馬が合わなかった。高校時からハルを気にしており、再会を機にアプローチをかけていたが、思いは遂げられなかった。第4巻で大学を辞め、海外に留学。
柚原 チカ(ゆずはら チカ、柚原)
リクオの高校2年の時の彼女。しかし4ヶ月で破局。
どこかポーッとしており、男心をくすぐるタイプ。お金が無いことを理由に、ある日突然リクオの部屋に寄宿する。その後ピアノ関係のバイトが決まり、無事(?)出て行く。
湊と柚原はリクオ、ハル、榀子の三角関係に微妙な変化をもたらしたキーパーソンであるといえる。
木ノ下さん(きのした)
リクオのコンビニでの同僚。バンドをやっている。母子家庭で妹と弟がいる。第3巻に妹が、『羊のうた』に弟がでている。物語にはあまり深く関わってこないが、第三者的な立場からリクオにいくつものアドバイスを送っている。
第5巻辺りよりライブハウスのバイトをはじめており、コンビニにはリクオ同様あまり顔をみせていないようだ。第6巻でリクオと同じ日にコンビニのバイトを辞めた。
フクダ
リクオと榀子の大学時代の同級生。眼鏡をかけている。第1巻での名刺によると下の名前は総一で、株式会社ミツシタの第四広報部に所属、となっている。しかし第6巻では下の名前が「タカノリ」になっている(作者が総一という名前を第1巻で出したのを忘れていてもう1度名前を付けてしまったため。今後はタカノリ(漢字未定)で統一すると短編集『イエスタデイをうたってEX』のインタビューで答えている。)。
リクオとは正反対に人生設計にぬかりがなく、物事を論理的に捉える。就職・結婚してからもリクオと付き合いが多い。
出番の少なくなった木ノ下さんに代わって、彼がリクオの相談役になる機会が増えた。
杜田(もりた)
榀子の同僚の女性教師。たびたび榀子の相談に乗ったりからかったりしている。
「森ノ目先生の操を守る会」の会長。
滝下 克美(たきした かつみ)
美大を目指して予備校に通う、浪と同い年の少年。絵の技術は浪より上だったが、浪人中。自己分析・他者分析が得意で浪に様々なアドバイスを送るが、何故か恋愛面に関しては例外。
飄々としたところがあって女の子にとてもモテるが、受身の恋愛ばかりだった。6巻で調子の悪い自動販売機に蹴りを入れていた葛原未里に恋をし、すぐに告白したが玉砕した。しかし、それにめげずにアタックを続けている。
狭山 杏子(さやま きょうこ)
喫茶ミルクホールのマスター。大人の色気がある穏やかな女性。
もともとは彼女の祖父の店であったミルクホールを、母親と一緒に継いでいたが、その母親が亡くなり、ハルをアルバイトとして雇って切り盛りしている。ハルがバイト中に着ているメイド服は杏子の趣味である。
独創的すぎるハルの創作料理には困惑している模様。
葛原 未里(くずはら みさと)
予備校の彫刻科に通う少女。髪型はおかっぱ気味のショートヘアで、男勝りな性格。
上にジャージ、下にズボンをよくはいている。6巻でほとんど見ず知らずの滝下に告白され、間髪いれずに拒絶した。その後も付きまとってくる滝下に辟易している。

ゲストキャラ

秋本 陽子(あきもと ようこ)
「ゆらゆら」に登場。
ハルの実母。ハルに似ず長身の女性で、「ハハ」と呼ばれている。ハルとは別居しているが、仲が悪いという訳ではなく、きちんと娘のことを理解している。さばさばして強引なところがややある。
男運が悪く、登場時に再婚の報告をした。ハルの実父を含めて、最低でもこれが3度目の結婚である。
川島 省吾(かわしま しょうご)
「ゆらゆら」に登場。
陽子の再婚相手。温和な性格で、少しハルの実父に似ているらしい。彼女たち親子のことを不思議な関係と言いつつも、認めている。
陽子とは大学時代のサークル仲間で、OB会での再会がきっかけ。
桐島(きりしま)
「川は流れる」に登場。
浪の通う予備校に在籍している女性。元々芸大生だったが、自分の絵と才能に行き詰まり退学、予備校に戻った。しかしなにかのために絵を描くのではなく、純粋に絵が描きたかったのだとして、新たな生きがいをみつけるべく予備校を去った。
彼女の絵は滝下でさえ憧れるほどのものだったという。
木ノ下 楼子(きのした たかこ)
「少年たちと浮遊青年」に登場。
高校生。木ノ下さんの妹(木ノ下兄弟の真ん中)で、ハルの後輩、榀子の生徒にあたる(浪の同級生でもあるが、物語上のつながりはない)。同級生の深町が撮る映画に協力しており、兄に音楽を頼んだり、撮影費のためにこっそりミルクホールでバイトをしたりする。それを学校に見つかり咎められるが、ハルと榀子のお陰で穏便に済んだ。
兄に似ず美人で大人っぽく、杏子に20歳と偽っても全く怪しまれなかった。
深町 泉(ふかまち いずみ)
「少年たちと浮遊青年」に登場。
楼子と同じ高校生。文化祭の出し物のために自主映画を作製している映研部の少年。金策に困った際にも自分の力でなんとかしようとするなど、責任感が強い。しかしそれが意地となって、楼子と衝突。後に和解し、映画を無事完成させる。
映像に携わる者として感じるところがあったのか、リクオはよく彼の面倒を見ていた。
楼子とはお互いに、一定以上の感情を持っているようである。
中原 夏樹(なかはら なつき)
「青春の蹉跌」に登場。
浪の通う予備校の現役生。技術そのものはあまりないが、他の生徒とは一段抜き出た才覚をもつ。船塚とつきあっており、彼を「洋ちゃん」と呼ぶ。同作者の別作品『ももんち』では、もものクラスメートとして登場している。時間軸的には「青春の蹉跌」よりも後のふたりを見ることができる。
船塚(ふなつか)
「青春の蹉跌」に登場。
浪の通う予備校の現役生。中原とつきあっているが、彼女に比べて小手先の技術しかもたない自分にやきもきしている。
夏樹とともに『ももんち』にも登場。

備考

本作品と同作者の代表作『羊のうた』はリンクしており、両作に登場する木ノ下兄弟を介して時間軸を見極めることが出来る。

  • 本作の第3巻にて木ノ下楼子(きのしたたかこ)登場。この時彼女は高校2年生で、舞台は秋。
  • 『羊のうた』第1巻にて木ノ下(弟)が「姉貴も食欲がないって言ってた。まーあっちは受験でだけど」と発言(若干脚色)。楼子は3年であることが読み取れる。この時舞台は春か初夏。

つまり、『羊のうた』第1巻に相当する時間は、本作に当てはめると第3巻と第4巻の間(第3巻終わりで4月初旬、第4巻始まりで8月頃)という事になる。時間の進み具合が全く違うので、『羊のうた』最終巻45、46話は、本作第4巻の「思い出に帰る人達」と同時期(ともに冬)である。

物語の主要人物が携帯電話を使わないという特徴がある(主要人物以外は頻度は低いものの使用しているため、時代設定によるものではない模様)。

単行本

  1. 1999年3月24日発売) ISBN 4-08-875771-8
    ビジネスジャンプ1998年1号 - 4号 / 18号 - 22号に掲載分を収録。
    • 社会のはみ出し者は自己変革を目指す(4話)
    • 愛とはなんぞや? (5話)
  2. 2000年4月24日発売) ISBN 4-08-876013-1
    ビジネスジャンプ・1999年18号 - 2000年4号に掲載分を収録。
    • ゆらゆら(7話)
    • 川は流れる(4話)
  3. 2002年2月24日発売) ISBN 4-08-876274-6
    ビジネスジャンプ・2000年9号 / 11号 / 13号 / 15号 / 2001年2号 / 4号 / 6号 / 23号 / 24号 / 2002年1号に掲載分を収録。
    • 少年達と浮遊青年(4話)
    • 榀子帰郷(3話)
    • ミナトという男(3話)
  4. 2004年7月21日発売) ISBN 4-08-876646-6
    ビジネスジャンプ・2002年22号 - 23号 / 2003年13号 - 15号 / 2004年5号 - 9号に掲載分を収録。
    • 夏と花火と金魚と背中
    • 引越しの手伝い
    • 行方不明のキモチ(3話)
    • 思い出に帰る人達(5話)
  5. 2007年4月19日発売) ISBN 978-4-08-877255-4
    ビジネスジャンプ・2005年15号 / 17号 / 19号 / 21号 / 23号 / 2006年12号 / 14号 / 16号 / 18号 / 20号に掲載分を収録。
    • 青春の蹉跌(5話)
    • 恋人たちの予感(5話)
  6. 2008年11月19日発売) ISBN 978-4-08-877554-8
    ビジネスジャンプ・2007年8号 / 10号 / 12号 / 14号 / 2008年9号 / 11号 / 13号 / 15号 / 17号 / 19号に掲載分を収録。
    • イノセント・ブルー(4話)
    • クリスマス・キャロル(6話)
  7. 2010年11月19日)ISBN 978-4-08-908122-8(ポストカード付き特装版) / ISBN 978-4-08-879064-0(通常版)
    ビジネスジャンプ・2009年10号 / 12号 / 14号 / 16号 / 18号 / 2010年10号 / 12号 / 14号 / 16号 / 18号に掲載分を収録。
    通常版の他、ポストカードブックつき特装版も同時発売された。
    • はじまりの新年(5話)
    • はるの嵐(5話)
  8. 2012年7月19日)ISBN 978-4-08-879366-5
    ビジネスジャンプ・2010年24号 / 2011年13号 / 15号 / 17号
    グランドジャンプ・2011年1号 / 2012年 3号 / 5号 / 7号 / 9号 / 11号 / 13号 / に掲載分を収録。
  9. 2013年7月19日)ISBN 978-4-08-879638-3
    グランドジャンプ・2012年 17号 / 19号 / 21号 / 23号 / 25号 / 2013年2号 / 4号 / 6号 / 8号 / 10号 に掲載分を収録。
  10. 2014年5月19日)ISBN 978-4-08-879775-5
    グランドジャンプ・2013年 12号 / 16号 / 18号 / 20号 / 22号 / 24号 / 2014年2号 / 4号 / 6号 / 8号 に掲載分を収録。

短編集

イエスタデイをうたってEX 〜原点を訪ねて 冬目景 初期短編集〜
2009年11月25日第1刷発行(11月20日発売) ISBN 978-4-08-782255-7
番外編と、「イエスタデイをうたって」の演出方法などを垣間見ることが出来る初期の短編を収録。その他にキャラクター集や作者へのインタビューも掲載されており、ガイドブックとしての側面も持っている。
  • イエスタデイをうたって番外編 其ノ壱(『ビジネスジャンプ』2008年24号)
  • イエスタデイをうたって番外編 其ノ弐(『BJ魂』Vol.46(2009年5月))
  • イエスタデイをうたって番外編 其ノ参(『ビジネスジャンプ』2009年24号)
  • イエスタデイをうたって番外編 其ノ四(描き下ろし)
  • 縁側の人(同人誌『ながまる〜植物的〜』)
  • ユメノ生活(同人誌『ながまる2〜押入〜』)
  • みそののいえ(同人誌『ながまる3〜コワイハナシ〜』)
  • あつあつ(同人誌『ながまる4〜HOT〜』)
  • 帰り道(同人誌『ながまる5〜台風〜』)
  • 石を買う(同人誌『ながまる6〜石を買う〜』)
  • 雨ノ中泳グ(同人誌『ながまる7〜水〜』
  • 田中02(『モーニング新マグナム増刊』Vol.1(1997年12月))
  • サイレンの棲む海(『エクストラビージャン』1999年4月30日号)

小説版

イエスタデイをうたって デイ・ドリーム・ビリーバー
2010年11月19日発売)ISBN 978-4-08-703233-8
冬目景星希代子
  • デイ・ドリーム・ビリーバー
  • ペーパームーン
  • 旅をしませんか
  • どこまでも行こう!

オリジナルサウンドストーリー

イエスタデイをうたって オリジナルサウンドストーリー
ABCA-5018、モモアンドグレープスカンパニー、2003年8月27日発売
オリジナル作品、ビートルズ作品、森田童子作品がそれぞれ4曲ずつ、計12曲が収録されている。編曲は広瀬充寿が担当。作中のキャラクター役として以下の声優が森田童子作品に声をあてている。
  1. 「イエスタデイをうたって」メインテーマ
  2. Penny Lane
  3. ぼくたちの失敗(ボーカル:宍戸留美)
  4. 晴のテーマ
  5. Girl
  6. ぼくが君の思い出になってあげよう(ボーカル:宍戸留美)
  7. 榀子のテーマ
  8. YESTERDAY
  9. 君と淋しい風になる(ボーカル:かかずゆみ)
  10. 宣戦布告
  11. みんな夢でありました(ボーカル:かかずゆみ)
  12. Let It Be

テンプレート:グランドジャンプ連載中