さすらいの太陽

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Sidebar with collapsible listsさすらいの太陽』(さすらいのたいよう)は、藤川桂介原作、すずき真弓作画による漫画作品、およびそれを元に製作されたテレビアニメ

原作漫画は1970年8月から1971年8月まで雑誌連載され、アニメ版は1971年4月8日から1971年9月30日まで放送された。

原作漫画は当時の人気歌手、藤圭子をモデルとしている。また、初めて芸能界を描いたアイドルアニメでもある[1]

漫画

原作漫画は1970年8月から1971年8月まで、すずき真弓によって小学館の『週刊少女コミック』に連載された。1973年若木書房より「ティーンズコミックス」として全4巻がコミックス化されたが、発行部数が少ないまま廃刊になり、さらに若木書房が1982年頃に倒産したことで非常に希少となり一時期高額なプレミアが付いたが、2006年にコミックパークで再刊されたことにより、入手が容易になった。

基本ストーリーはアニメ版とほぼ同じだが、17歳の少女である事をリアルに出すためにアニメ版と原作版でのぞみの誕生日が若干違っていたり、美紀が芸能界入りしたきっかけや道子が悪に染まったきっかけが違っているほか、のぞみが歌手になるために虎の穴で死と隣り合わせの特訓をしたり、アニメ版ではほぼ円満だった恋愛模様が泥沼化した内容となっていたり、殺害されたり恐喝されるキャラがいたりと、アニメ版よりも暗くてかなり殺伐とした内容になっている。また、この時にはまだ「心のうた」(アニメ版のエンディングテーマおよび挿入歌)は作られておらず、のぞみのデビュー曲は「生きた愛した死んだ」と言う曲であった。なお、「心のうた」は原作後半で一度だけ歌っている。

登場キャラの容姿や一部のキャラの設定も大幅に違っており、特にアニメ版でも悪役であった野原道子は物語序盤からのぞみや美紀を愚弄・翻弄したり、のぞみを再起不能に陥れたり、ナイフで刺し殺そうとしたり、美紀に出生の秘密を聞かせて大金を脅し取ったり、のぞみの幸せを奪うために恋人のファニーを平然と殺害してしまうなど、アニメ版よりも性格が非常に冷徹で冷酷なキャラに描かれている。

その他、キャラの相違点:

香田 美紀
生まれてすぐに道子によって峰のぞみと取り違えられて香田財閥の令嬢になったのはアニメ版・原作版と共通だが、アニメ版はのぞみとライバルなだけの関係なのに対し、原作版ではファニーと異母兄妹で、道子から出生の秘密や弱みを握られて精神的に追い詰められたり大金を脅し取られたりと、のぞみに負けないくらい過酷な生活を送っている。また、後に野原 純と恋仲になり、結婚することになる。
ファニー
アニメ版では違う家の養子になって「ファニー森山」として登場するが、原作版では香田家の養子になっており「ファニー香川」として美紀と異母兄妹と言う設定になっている。母親や美紀とは険悪な仲で、物語序盤で家出をしてしまう。のぞみと恋仲になった物語終盤で道子に殺害される。また、のぞみとの兄妹という真実はアニメ版では後期で判明するが、原作版では前期で早々に判明し、のぞみ、ファニーともども兄妹そろって苦悩するシーンが多く描かれている。
野原 純
野原道子の弟で売れっ子の作詞家なのはアニメ版・原作版と共通だが、アニメ版では単にのぞみを気に入っている程度なのに対し、原作版ではのぞみを深く愛して苦しむ反面、姉との葛藤でも苦悩するキャラとして描かれている。
のぞみの師匠である作曲家、江川いさを先生のもう一人の愛弟子。のぞみより一つ年下の少年。原作版オリジナルのキャラでアニメ版には登場しない。彼ものぞみを深く愛してしまい、のぞみを巡ってファニー、純とドロドロの関係を作り出すことになる。

原作には上記の漫画版のほか、藤川桂介が執筆した小説版も存在する。

雑誌連載

  • 週刊少女コミック 作画:すずき真弓
  • 小学四年生 1971年4月号 - 1971年9月号 作画:宮本ひかる
  • 小学五年生 1971年4月号 - 1972年3月号 作画:すずき真弓
  • 小学六年生 1971年4月号 - 1971年10月号 作画:すずき真弓

アニメ

原作の藤川桂介が脚本陣に参加し、当時フリーだった斧谷喜幸(のちの富野由悠季)が演出陣に参加した[1]

アニメ化に際し、原作版の内容では残酷なシーンが多すぎて視聴者となる子供には精神的な負担が大きすぎると判断され、原作のストーリー性を残しつつシナリオやキャラの容姿、設定を大幅に変えることになった。

アニメ作品として初めて芸能界や歌手、音楽、歌謡曲を主体に取り入れ、現在で言うところの「アイドル系アニメ」または「音楽系アニメ」の礎を築いた作品とも言われている。本編では当時の芸能界の内情がリアルに描かれており、多くの流行歌が劇中で使用された。

その後、1997年にフジテレビで放送された特別番組ザッツお台場エンターテイメント!内のアニメデモミー賞にて、本作のシーンが4つもの部門にノミネートされる。歌手の藤山ジュンコが峰のぞみの声優を務めているが、映像を見た浜田雅功からは「(主人公)演技ヘタやなー」と言われてしまった。

アニメ版ストーリー

昭和29年4月12日(原作では昭和28年8月2日)。同じ病院で二人の赤ちゃんが生まれる。一人は大財閥の令嬢、もう一人は下町の貧しい屋台のおでん屋(原作ではラーメン屋)の家の娘だった。だが、ひねくれた看護婦の野原道子は、金持ちの恋人が出世のために道子を捨てて別の女性と結婚した怨み(原作では家への仕送りのため貧しい生活を強いられ、同僚から馬鹿にされていた怨み)から二人をすり替えてしまう。

成長した令嬢、香田美紀は貧しい峰のぞみをいじめるが、二人は歌手になりたいという同じ夢を抱いていた。実は美紀は、のぞみの歌手としての才能に嫉妬していたのである(原作では、美紀が友人たちと一緒にいた喫茶店に偶然入店した歌手を見て、「私はあの人よりうまく歌える」と豪語し、歌手を志願する)。

美紀が親の財力によって難なく芸能界デビューを果たしたのに対して、のぞみは「流し」(当時、カラオケは発明されておらず、酒場でギター伴奏をしたり、お客のリクエストで歌う商売があった)の歌手として下積み生活を続けることになる。

やがて道子の弟・純の紹介でDMプロに入社し、ドサ回りを経た後、美紀の付人としての苦しい下積みの中で、レッスンを休んでまでへとへとになるまで仕事をし続ける美紀を見たのぞみは「これで本物の歌が歌えるのか?」と疑問を抱き、デビュー寸前で江川いさお(原作では江川いさを)のもとを離れ、「本物の歌とは何か」を求め、日本中を放浪する旅に出た。

素直な性格で誰にも優しいのぞみの行動は、旅先で出会った人々に強烈な印象を与えることになる。時々披露される自作の「心のうた」とともに……。

その後、のぞみが芸能界から去り、一安心していた美紀は、奇妙な噂を聞くことになる。ラジオの深夜番組に「心のうた」のリクエストが殺到しているというのである。この噂は芸能関係者の間で「名前も知らない謎の歌手」「幻の心の歌」として、あっという間にひろがった。

相変わらず地方を旅していたのぞみは、音楽祭に参加するというあるバンドグループと知り合った。このバンドと一緒に参加することになったのぞみは音楽祭という思いがけない大舞台で「心の歌」を熱唱することになる。会場は大感動の渦に包まれた。

大財閥令嬢としての幸せを奪い、さまざまな試練を見ることを生きがいにしていた道子にとって、のぞみが芸能界に衝撃的デビューを飾ったことは最悪の展開であった。

追い詰められた道子は最後の行動に出るのであった。

登場人物

峰 のぞみ
- 藤山ジュンコ
下町の貧しい屋台のおでん屋(原作ではラーメン屋)の家の娘。流しをして家計を支える。
香田 美紀
声 - 嘉手納清美平井道子
香田財閥の令嬢で何不自由なく育ち、親の財力で芸能界デビューを果たす。
ファニー
声 - 井上真樹夫
熊五郎
声 - 富田耕生
野原 道子
声 - 来宮良子
看護婦。産院でのぞみと美紀を故意にすり替える。その後のぞみと美紀が芸能界デビューした際に
産院で彼女達をすり替えた事を自ら告白する。
江川
声 - 朝戸鉄也
慎介
声 - 梓欣造
静子
声 - 麻生美代子
一夫
声 - 近藤高子
ゆき子
声 - 橘和香
大次郎
声 - 小林修
澄代
声 - 槙伸子
夢麿
声 - 西川幾雄
つね
声 - 麻生みつ子
新田
声 - 青野武
野原 純
声 - 野田圭一
ナレーター
声 - 矢島正明

スタッフ

主題歌

オープニングテーマ - 「さすらいの太陽」
作詞 - 山上路夫 / 作曲・編曲 - いずみたく / 唄 - スリー・グレイセスボーカル・ショップ
初期のオープニング映像にはタイトルに『「少女コミック」連載』と書いてあるが、のちに『週刊「少女コミック」連載』に変更される。なおフォントも変わる。また初期では原作は藤川桂介のみクレジットされていたがのちにすずき真弓も追加。
さらに歌詞の「さがして いるの(最初の方)」の部分と「あしたの たいようを さがして いるの(2番目の方)」の部分で、夕焼けのシーン、のぞみが太陽に向かってジャンプするシーンが異なっている。
オープニング映像には、冒頭にプロローグがあるものとないものの2種類があり、再放送では後者が使用された。
同一カラオケを使った堀江美都子歌唱版も録音されていた[2]
エンディングテーマ・挿入歌 - 「心のうた」
作詞 - 三条たかし / 作曲・編曲 - いずみたく / 唄 - 藤山ジュンコ(挿入歌)、堀江美都子(エンディング)
エンディング映像も初期と中期以降で絵の枚数・種類が異なっている。
堀江が2004年にセルフカヴァーした[3]
2009年11月15日開催の「堀江美都子40周年記念コンサート ~歌は心にこだまする~」の冒頭で歌われた。

各話リスト

話数 サブタイトル 脚本 演出
1 すりかえられた運命 雪室俊一
星山博之
林政行
2 二つの誕生パーティー 山崎忠昭 高橋良輔
3 盗まれたメロデー 藤川桂介 斧谷喜幸
4 私には歌がある 雪室俊一 北島満章
5 初めてのアンコール 鈴樹三千夫 斧谷喜幸
6 訪れたチャンス 山崎忠昭 北島満章
7 歌を忘れたカナリヤ 藤川桂介 斧谷喜幸
8 二人のちかい 山崎忠昭 北島満章
9 さょうならファニー
10 あすへの旅立ち 鈴樹三千雄 斧谷喜幸
11 ひびけ! トランペット 山崎忠昭
12 泣くな花笠 鈴樹三千雄 北島満章
13 ふまれた野の草 藤川桂介 徳丸海太郎
14 涙のワンピース 山崎忠昭
15 めざせチャンピオン 鈴樹三千雄
16 夕陽にうたえ 山崎晴哉
星山博之
17 海女の特訓 伊東恒久
18 港にこだまする歌 山崎晴哉
19 遠い歌手への道 伊東恒久
20 帰ってきたファニー 鈴樹三千雄
21 海に歌えば 山崎晴哉
22 のぞみのデビュー 伊東恒久
23 まぼろしの歌手 山崎晴哉
24 知らされた秘密 伊東恒久
25 父との別れ 沖島勲
26 心の友・心の唄

脚注

  1. 1.0 1.1 さすらいの太陽 - 虫プロダクション株式会社
  2. 「堀江美都子 テレビまんが主題歌のあゆみ」および「堀江美都子 歌のあゆみ1 少女期の想い出」に収録。
  3. 「心のうた ~癒しの歌声~ 堀江美都子BEST」に収録。

テンプレート:前後番組0