うちでのこづち

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うちでのこづち(打ち出の小槌)とは、振ることにより様々なものが出てくるとされる伝説上の。多くのおとぎ話に登場する。古来、隠れ蓑、隠れ笠と並び称せられた宝物のひとつで、もともと鬼の持ち物とされた。大黒天の持つ小さな槌も打ち出の小槌と呼ばれる。

一寸法師』では、姫たちを襲った鬼が手にしており、法師が退散させた際に落としていった。一般に知られる話では、小槌の使い方を知っていた姫の手で、法師は体の大きさを変えてもらい、立派な武士(もののふ)として身を立てるが、御伽草子版では、また多くの宝物を出して富を得、宮廷で昇格する。また、御伽草子鬼が島より奪った財宝のひとつとして、つとに有名である。

これら御伽草子のおとぎ話より以前、すでに源平時代から人民では鬼の持ち物と考えられていたことが指摘されている。『平家物語』には、人を鬼と見間違え、その持っているものを「聞こえし」うちでのこづちに違いないと詮索する逸話がある。

平安末期[注 1]の『宝物集(ほうぶつしゅう)』には、打ち出の小槌は、宝物だけではなく人や動物まで出現させる[1][2]。もっとも、出した物はの声を聞くと失せ果せると記される[2]ので、結局は宝ではないというのがこの仏法説話の結論である[3]

他に、異郷を訪問した男が土産として持ち帰り、欲しいものを唱えて小槌を振ると願い通りのものが表れ長者になったという説話もある。その様子を見ていた隣の爺が小槌を借り受け、欲を出した願いを早口で唱えると誤認されて違うものが現れ、その爺は痛い目に合うという話もある。このくだりは花咲かじいさんの勧善懲悪話のような道徳を説いている。

源平時代

平家物語』巻6「祇園女御の事」に小槌を持った鬼騒動の言及がある[4]祇園女御平清盛の母親)が白河法皇の愛人だった頃、ある夜その祇園のほとり住まい近くの御堂に、手には打ち出の小槌らしいものが輝き、頭髪も針の山のごとく光る人影が出現し、鬼であると周囲が恐怖した。ところが北面の武士として護衛に付添っていた平忠盛に確かめさせると、燈籠を灯しにやって来た用事使いの法師であった。手には燃えさしを入れた容器を持ち、頭には濡れまいと小麦の藁を被っていたのだ。『源平盛衰記』にも同じ事件が書かれるが、「土器に燃杙(もえぐい)を入れて」おり、これが消えないようにと息で吹くと「ざと光り、光るときは小麦の藁が輝き合ひて、銀の針の如くに見えけるなり」ということだった[5]

ここで「聞こゆる打出の小槌」という表現は、「鬼の持物として有名なうちでのこづち」という意味にとらえられ、桃太郎おとぎ話がその俗信を取り入れていることが考察されている[5][6]。関連して、『保元物語』で源為朝鬼ヶ島に住む鬼の子孫たちから聞き出した失われた鬼の宝にも、おそらく本来は「打出の小槌」が加わっていたものと推察されている[6]。諸本によって記述が違い、ある系統本では「隠蓑、隠笠、浮履(うきぐつ)、沈履(しづみぐつ)、剣」[7]とあってあきらかに漏れているが、古系の半井本では「うちでの履」という宝があり、これが「打出の小槌」の誤記と考えらるのである。

脚注

補注

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出典

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関連項目


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  2. 2.0 2.1 テンプレート:Citation
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  6. 6.0 6.1 テンプレート:Citation
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