NHKアーカイブス
テンプレート:基礎情報 テレビ番組 NHKアーカイブス(エヌエイチケイ アーカイブス)は、NHK総合テレビジョンで放送されているテレビ番組である。
目次
概要
基本的には、埼玉県川口市にある過去の番組等を収蔵した施設・NHKアーカイブスとテレビ番組の連動という形を取り入れており、施設開館(2003年2月1日[1])に先駆けて2000年4月9日より毎週日曜日にNHK総合テレビでの番組放送を開始した[2]。基本的には臨時ニュースで一部が放送できなかったとき以外の再放送はない。
2000年度は主に1960年代、2001年度は1970年代にNHKが制作した番組(『NHK特集』、『ある人生』など)を振り返って放送していたが、2002年度以降はもう一度見てみたい番組を視聴者のリクエストなどに基づいて放送している(途中2003年1 - 3月など、一時中断となる時期もあった。これは、施設としてのアーカイブスオープンに伴う映像ライブラリーの収納作業があったためと思われる)ほか、毎年終戦記念日前後にはその関連の映像素材を取り上げている。また番組に出演した縁のある人物をゲストに迎えたり、その場所の現状報告なども行われる場合がある。
2005年4月からは『新日本紀行ふたたび〜NHKアーカイブス〜』が始まった(2012年3月、レギュラー番組としては終了)。サブタイトルに「NHKアーカイブス」とあり当番組の兄弟番組と考えられる。2008年4月の放送時間変更で当番組と『新日本紀行ふたたび』が続けて放送されるようになり、よりその性格を強めた(2010年3月まで)。なお、当番組の放送開始以来『新日本紀行』はたびたび放送されていたが、『新日本紀行ふたたび』開始後、当番組内での『新日本紀行』の放送はなくなっていた。
通信・放送の在り方に関する懇談会が、「(NHKの)番組アーカイブをブロードバンド(高速大容量)上で積極的に公開すべき」との方針を打ち出したことで、総務省がNHKのネット進出容認へ向けた方向で動き出すことになった。[3][4]
オープニング曲は、2005年頃から松任谷由実(当時、荒井由実)の『瞳を閉じて』が用いられ、字幕放送では歌詞が表示されるようになっていた。なお、『新日本紀行』で同曲が作られた経緯を収めた回(1976年4月12日放送「歌が生まれてそして〜長崎県奈留島〜」)が、番組開始間もない頃に取り上げられていた。また、『新日本紀行ふたたび』でも2007年12月15日放送の「歌が生まれた島で〜長崎県奈留島〜」で取り上げている。
2008年4月に時間移動・リニューアル。番組開始以来加賀美幸子がナビゲーターを担当してきたが、リニューアルに伴い桜井洋子と林家いっ平(2009年より2代目三平を襲名)の2人によるナビゲートに変わり、現在は桜井洋子の単独司会となっている。また、ピアニスト・西村由紀江の手による新しいオープニングテーマが登場している。
DVDとしてポニーキャニオンよりNHKアーカイブスドラマ名作選集が発売。2007年11月21日に「テレビ草創期篇」(『どたんば』、『氷雨』、『海の畑』、『魚住少尉命中』、『駅』)、2008年2月20日に「昭和40年代篇」(『大市民』、『ミュージカル わが心のかもめ」、『写楽はどこへ行った』、『幻化』、『赤ひげ』)、2008年5月21日に「昭和50年以降篇」(『極楽家族』、『修羅の旅して』、『しあわせの国 青い鳥ぱたぱた』、『北の海峡』、『失われし時を求めて 〜ヒロシマの夢〜』)が発売。
NHK Eテレ50周年記念の特集番組『ETV50もういちど見たい教育テレビ』での、放映作品はすべてNHKアーカイブス協力のうえで放映されている。
放送時間
日曜日は通常、選挙の投票日に充てられることも多いため、開票速報放送などにより、時間変更・放送枠分割・休止となることも少なくなかった。また、時間帯移動された現在でも、放送する作品により時間を拡大することもしばしば行われている。
以下の放送時間はいずれも原則であり、放送作品の内容によっては終了時間が延長する場合がある。
- 2000年度 日曜23:35 - 24:55
- 2001年度 日曜23:50 - 25:10
- 2002年度 日曜23:55 - 25:15
- 2003年4月から2005年まで 日曜23:10 - 24:30
- 2006年1 - 3月 日曜24:00 - 25:20
- 2006年度 日曜23:10 - 24:30
- 2007年度 日曜23:40 - 25:00(『未来観測 つながるテレビ@ヒューマン』の日曜日移動による)
- 衛星第2テレビでも月曜日15時から放送
- 2008・2009年度 土曜10:05 - 11:25
- 2010年度 日曜13:35 - 14:45(NHKプロ野球などスポーツ中継のため休止となる日がある)
- 2011・2012・2013年度 日曜13:50 - 15:00(NHKプロ野球などスポーツ中継のため休止となる日がある)
- 日曜深夜の放送は前述のように選挙報道などで放送できないことがあったり、夜遅いために生で見られないという声が多かったため、時間移動。
- 近畿地方のみ、2008・2009年度の2年間は、地域情報番組『ぐるっと関西プラス』を10:50から放送するため、2012年度は「西方笑土」放送のため、Eテレで翌週の深夜(2008・12年度は翌週金曜深夜、2009年度は翌週日曜深夜)に放送。[5]
- 北海道では、2008~2011年度の5~6月の2か月間は『北海道環境アーカイブス』(ナビゲーターは沖谷昇)に差し替えて放送していたため本番組の放送は一時休止されていた。ここでは過去に北海道地方で放送された環境に関連した番組のほか、北海道地方のみで放送されるミニ番組『エコは北から』、外国人向け国際放送NHKワールドTVで放送される英語による北海道の自然を紹介する『ネイチャーオブ北海道』を日本語字幕つきで放送していた。
- 石川県では、2011年度から2012年3月まで最終日曜日に限り『石川アーカイブス』(キャスターは亀井和恵)を放送。石川県に関連した過去の番組を放送していた。
- 2012年2月19日放送の「新八犬伝特集」では、終了直前の14:54に茨城県日立市で震度5弱の地震が起き、地震速報に差し替えられたため、最後の部分が放送されないまま終了した。
- 2012年12月9日放送分は当初予定していた内容「ノーベル賞!“生命”の未来を変えた男 山中伸弥iPS細胞革命」のテーマで放送[6]する予定を変更し、「さようなら中村勘三郎さん~芸に生きた日々~」として13:05 - 16:00に放送時間を拡大して放送(リアルタイム字幕放送を実施)。緊急の全国共通放送となった関係で、一部地域で別番組差し替えが予定されていたところでは休止[7]となった。
- 他の地域でも別番組放送(主に全国放送番組で地元地域に関係するもの)で後日時差放送もしくは振り替え放送なしでそのまま休止する場合がある。
通年特集企画
2005年
この年は2つのシリーズを編成。ひとつは、毎月第3日曜日に放送された『NHKスペシャル 新・シルクロード』(21:00-22:00)の放送に合わせて「特選アーカイブス・シルクロード」を放送。これは新・シルクロードで放送された番組の舞台を、1980年の『シルクロード-絲綢之路-』と比較してもらうという意味合いを込めて放送した。このときの進行役は松平定知。なお放送前年の2004年には、デジタルリマスターのために、日本と中国の共同取材で撮影したネガフィルム(初回放送時、日本でフィルムから1インチビデオテープに映像を変換後、中国に譲渡された)を再度、中国から全巻借り出してハイビジョンに変換する作業が行われた。中国側が自国で作業をしたいと申し出たが、すでにNHKがフィルムの補修・洗浄からハイビジョンへのテレシネ作業、NHKアーカイブスでのデジタル修復、そして渋谷放送センターでの編集作業まで、考え得る最善の体制を整えていたことを伝えて中国側を説得し、日本でのデジタルリマスター作業が行われることになった。肝心のネガフィルムは、中国がNHKから渡された状態のままで大切に保管してくれていたため、このリマスター作業により鮮明な画質でよみがえらせることが出来たというエピソードがある。
もうひとつは、この年が終戦60周年であったということで、原則毎月1回程度「平和アーカイブス」と題して戦争(主として広島・長崎の原爆)をテーマにした番組を取り上げた。4月3日放送の『原爆投下・10秒の衝撃』(1998年8月6日放送の再放送)はその1つである。
2006年
この年は、日本の環境公害問題の原点とされている水俣病が確認されて50周年を迎えたのを機に、地球環境のあり方を問うたテーマの番組を集めた「環境アーカイブス」を原則毎月1回程度放送した。
2007年
この年は、「にっぽんくらしの記憶」と題し、いわゆる高度経済成長期の日本人の暮らしを見つめた番組を原則月1回以上の割合で放送した。
2013年
この年はテレビ放送開始からちょうど60年を迎える節目に当たり「シリーズ・テレビ60年」と題し、貴重な映像を通じてテレビ60年の歩みを振り返るというものである。年明け前の2012年12月から5回シリーズでの放送予定で2012年12月は2日連続[8]、2013年1月以降は月1回程度放送される。
- わくわくドキドキ!アニメ&少年ドラマ(ゲスト 多岐川裕美<少年ドラマ「七瀬ふたたび」主演>、松村邦洋)
- 鈴木健二さんと語る懐かしの名番組(ゲスト 鈴木健二<元アナウンサー。「クイズ面白ゼミナール」主任教授>)
- 松坂慶子さんとみつめる大河ドラマ(ゲスト 松坂慶子<大河ドラマに過去7回出演>)
- わたしとテレビ~伊東四朗さんと語る”テレビのチカラ”(ゲスト 伊東四朗)
- 磯村尚徳さんと語る報道番組(ゲスト 磯村尚徳<元記者。「ニュースセンター9時」初代総合司会>)
ナビゲーター
映像のデジタルリマスタリング
このNHKアーカイブスの施設開館、ならびに放送を実施するに当たって、製作された当時の映像を当時の雰囲気そのままに伝えるために、スタッフがデジタルリマスタリング(修復)処理を実施している。この方式は、番組としての『NHKアーカイブス』が放送される直前の2000年1月 - 3月に、総合テレビ深夜放送でシリーズ放送された『よみがえる新日本紀行』で初めて紹介された。
1959年にNHKは送出用として2インチのアンペックス方式VTRの使用を開始する。それから1981年頃までの間は、送出用として同方式のVTRを使っていた[9]。この方式のビデオテープは非常に高価だったために[10]、テープを使い回しせっかく収録した番組も次の収録で上書きされ失われている場合がほとんどである[11]。一部の番組は「キネレコ」という装置でフィルム映像に変換して残されたりなどしたが[12]、大部分の番組は前記のように失われてしまったため、著作権法に基づく権利を行使し、視聴者のエアチェックなども収集している。現在では、日本で2インチVTRにて収録された番組作品は全てNHK・民放問わず、1インチ、U規格、ベータカム等のアナログVTR、D1・D2・D3・D5等のデジタルVTRにダビングされたものが、地上波・BS・CS等での放送用等の再生に使われている。[13]
元NHKアナウンサーの宮田輝は、1960年代後半からオープンリールの家庭用VTRを所有していた。自身が司会を務めた、1960年代後半の『紅白歌合戦』、『思い出のメロディー』、『ふるさとの歌まつり』の放送は自宅で録画され、その映像は後にNHKに提供された。
特にフィルムの場合は年月を置くと映像・音声とも劣化してしまうため、放送原版のフィルムを一旦特殊な液などで汚れをふき取り、フィルムの破損部などはコンピューターでその部分を修復する処理・加工を行う。
日本のテレビ放送方式(NTSC)では原則として1秒の動画は30コマ(30フレーム)となっているが、走査線が上から下に2回走っていることで1つの画面が構成される。しかしフィルム映像の場合は16mmフィルムでは1秒間24コマで構成されるため、1秒30フレームを、60フィールドに分割し、それをさらにフィルムの24コマに変換する事で16ミリフィルム1コマ単位に置き換えて細心の注意を払った上でリマスタリング作業を実施する。525方式の放送の30分番組の修復時間は平均20 - 30時間、16ミリフィルムからハイビジョン映像に変換した30分番組は平均で40~60時間の修復時間が必要だといわれている(テレシネを参照)。
2005年頃までは、16mmフィルムはハイビジョンに対応出来ないとテレビ業界や映画業界では言われていた。16mmフィルムは映像を記録している面積が狭く、それで対応できるのは525方式までだという考えだった。しかし1999年からNHKの映像修復担当者とテレシネを担当する会社(ヨコシネ ディー アイ エー)は、共同でハイビジョン化の準備をすすめ、ついに2004年にはNHK全体の取り組みとして『NHK特集シルクロード』で16mmフィルムからのハイビジョンへのテレシネを本格導入することになった。『シルクロード』の高画質化はそれまでの常識を覆す出来であったため、その後、16mmフィルムからもハイビジョン化することはごく普通のことになってしまった。
2007年1月よりBS2(現在は廃止)のアーカイブス関連番組の増加に対応するため運営体制の強化が行われた。このため、2003年2月と比較すると数倍の修復能力を持つに至る。2007年の主な修復スタッフ構成は、修復マネージメント1人・技術マネージメント(修復オペレーター兼務)1人・修復専門オペレーター2人の計4人である。この他にも、2インチVTR等の使用についてはNHKアーカイブス全般を管理する技術担当者が放送博物館や渋谷の放送センターと調整を行ったりする場合があったり、フィルムからVTRテープに映像を変換するテレシネを行う企業なども考慮すれば、作業に関わるスタッフは実際には相当な数にのぼる。
2007年1月以降しばらくの間、NHKアーカイブスで映像修復が行われた番組は画面右上に「NHKアーカイブス」のウォーターマークが入っていた(NHKで修復作業が許されている施設は、品質管理の点から川口市にあるNHKアーカイブスのみ)。修復後に放送されている映像には、動画共有サイトへの無断アップデートなど不正コピー対策のためウォーターマークが入っている。
アーカイブスと権利保護
デジタルリマスター処理を行った番組の全てが、公開されるわけではない。それは、法律に基づく様々な権利関係の処理作業が必要となるからである。
アーカイブス番組でも、そのあたりの事情が説明されていたが、デジタルリマスター処理と平行して、番組に映っていた人物などを全て割り出し、本人や遺族など関係者と連絡をとって、再放送や公開に関しての許諾を得なければならない。ひとりでも許諾が得られなければ、その番組は再放送・公開することができない(なお、映像加工されて放送・公開されたことは今まで一度もない)。これは主に肖像権に基づくものであるが、放送以外の手段での公開(DVD化等)に関しては著作隣接権としての録画・録音権なども関係してくる(詳しくは映画の著作物#著作隣接権との関係を参照)。
現在の番組ではこの点を考慮して、ニュースなどを除いては、企画段階においてあらかじめ権利関係を全て処理する作業を行い、DVDソフト販売などを行いやすくするようになっている。