中川五郎
中川 五郎(なかがわ ごろう、1949年7月25日 - )は、1960年代後半から活躍するフォークシンガー、訳詞家、音楽評論家、小説家、エッセイスト、翻訳家。
略歴
1960年代後半に、関西を中心に起きたフォークミュージックのムーブメント「関西フォーク」の代表的人物の一人。 京都などで行われた「フォークキャンプ」などでメッセージ色の強い曲を歌い始める。 関西「フォークの父」高石ともや、「フォークの神様」岡林信康、東京から京都に来た高田渡に続く高石音楽事務所のプロテストソング歌手の末っ子的存在だった。
1967年3月、当時、大阪府立寝屋川高等学校の3年生であった中川はベトナム反戦講演会に参加。ゲストで来ていた高石ともやの歌に衝撃を受け、自身も歌を作っていると高石に話しかけたのが最初の出会いである。以来、中川は高石に連れられて様々な会を一緒にまわるようになったがきっかけとなり、フォークシンガーへと進んでいく。中川は、高石やザ・フォーク・クルセダーズが参加した、第1回関西フォークキャンプ(1967年7月29日、京都・高雄)で歌唱。
1967年、ボブ・ディランの「ノース・カントリー・ブルース」に、受験生を題材にしたオリジナルの詞をつけた「受験生ブルース」を制作する。翌1968年、中川の詞に高石が人懐っこいコミカルな曲をつけたものがレコード化され、有名になる。
1969年4月、小室等のグループ六文銭とのカップリングアルバム『六文銭・中川五郎』でURCレコードからデビューする。「殺し屋のブルース」「うた」など数多くの作品がフォーク・ゲリラのレパートリーになった。
中川は、政治性やメッセージ性だけを意識していたわけではなく、第4回関西フォークキャンプ(1969年8月15日)打ち上げコンサート(京都市の円山公園野外音楽堂)では、恋愛歌であるエリック・アンダースンの「恋人よベッドのそばにおいで」を歌っている。
1969年11月『終り、はじまる』(収録曲=「古いヨーロッパでは」、「殺し屋のブルース」、「いつのまにか」、「主婦のブルース」、「死んだ息子が帰って来たから」、「あなたがもう笑えないから」、「うた」、「かえるそのとき 」、「自由についてのうた」、「俺はヤマトンチュ」、ピート・シーガーの「腰まで泥まみれ」、「終る」)をリリース。
1970年に「歌手廃業」を宣言し、URCの機関紙「フォークリポート」の編集者となるが、その最初の号「冬の号」がわいせつ容疑で押収され、中川はわいせつ文書販売同所持事件の被告人となり、裁判は7年続く。その内容は中川の著書「裁判長殿、愛って何?」に詳しく書かれている。
この「フォークリポートわいせつ裁判」で1970年代前半を棒に振り、1976年妻・青木ともことの生活や愛猫の死などを描いた傑作『25年目のおっぱい』をリリース。 だが、1978年『また恋をしてしまったぼく』(ベルウッド・レコード)を最後にアルバムリリースが四半世紀途絶えることとなる。
その後は、80年代には雑誌『BRUTUS』の編集を担当。また、音楽評論家、ロックの訳詩家、チャールズ・ブコウスキー等の先鋭的な文学作品の翻訳家として知られるようになる。
2004年に、詩人片桐ユズル作詞の2曲を含む待望の新作「ぼくが死んでこの世を去る日」がoff noteからリリースされた。なお、デビュー当時から、現在にいたるまで地道にライヴ活動を続けている。
また、フォークキャンプ、中津川フォークジャンボリー、春一番コンサート、ホーボーズコンサートなど多くのイヴェントの音源が残されており、、彼の活動の一端を窺い知ることができる。 彼はまた、「田舎五郎と魚」、「ヴァギナ・ファック」などのグループも、編成していた。
中川は他に、洋楽の訳詞や、解説の執筆もしている。キング・クリムゾンの"レッド"など。
エピソード
中川五郎とジ・オックスの岡田志郎(本名は史郎)とは中学時代の同級生であり、二人は史郎、五郎として有名人であった。
沢知恵がアルバム「いいうたいろいろ2」で、「三十才の子供」、アルバム「わたしが一番きれいだったとき」で「自分の感受性くらい」をカバーしている。
ディスコグラフィ
- 中川五郎・六文銭(1969、URC)
- 終り はじまる(1969、URC)
- 25年目のおっぱい(1976、フィリップス)
- また恋をしてしまったぼく(1978、ベルウッド)
- ぼくが死んでこの世を去る日(2004、off note)
- そしてぼくはひとりになる(2006、シールズ・レコード)
著書
小説
- 『愛しすぎずにいられない』マガジンハウス 1992
- 『渋谷公園通り』KSS出版,1999
- 『ロメオ塾』リトルモア,1999
エッセイ集
- 『フォークは未来をひらく』高石友也,岡林信康共著 社会新報,1969
- 『裁判長殿、愛って何?』晶文社,1982
- 『未来への記憶 中川五郎的音楽生活』話の特集 1986
- 『友人のような音楽』永井宏共著 アスペクト,2001
翻訳
- ケオラ・ビーマー『ハワイアン・スラック・キイ・ギター』ミュージックセールス 1978
- ジョナソン・グリーン『ロック・クオーツ』クイック・フォックス社,1978
- ラス・バレンバー『クラレンス・ホワイトのギター』ミュージックセールス 1978
- フィリップ・カミン『ポリスクロニクルズ』シンコー・ミュージック 1984
- マーティ・モンロー『ブルース・スプリングスティーン写真集』シンコー・ミュージック 1984
- 『ホールアンドオーツ詩集』シンコー・ミュージック,1986
- 『U2詩集 ヨシュア・トゥリー』シンコー・ミュージック,1988
- 『マーク・ボラン詩集 ボーン・トゥ・ブギ』シンコー・ミュージック,1988
- 『モリッシー詩集』シンコー・ミュージック, 1992
- チャールズ・ブコウスキー『詩人と女たち』 河出書房新社 1992(のち文庫)
- ブコウスキー『くそったれ!少年時代』河出書房新社 1995(のち文庫)
- 『ブコウスキーの酔いどれ紀行』河出書房新社 1995(のち文庫)
- リチャード・ローズ『メイキング・ラブ』文藝春秋 1996
- ブコウスキー『死をポケットに入れて』河出書房新社,1999(のち文庫)
- ハワード・スーンズ『ブコウスキー伝 飲んで書いて愛して』河出書房新社 2000
- ハニフ・クレイシ『ぼくは静かに揺れ動く』アーティストハウス 2000
- ハニフ・クレイシ『ミッドナイト・オールデイ』アーティストハウス 2001
- ハワード・スーンズ『ブコウスキー・イン・ピクチャーズ』河出書房新社 2001
- リー・ストリンガー『グランドセントラル駅・冬』文藝春秋,2001
- ハニフ・クレイシ『パパは家出中』アーティストハウス 2003
- ダン・ファンテ『天使はポケットに何も持っていない Modern & classic』河出書房新社 2004
- 『ボブ・ディラン全詩集 1962-2001』ソフトバンク,2005
- ダグラス・A・マーティン『彼はぼくの恋人だった』東京創元社 2007
- 『追憶のハリウッド’60s もうひとつのディラン詩集』青土社 2010