南の虹のルーシー
世界名作劇場 | ||
通番 | 題名 | 放映期間 |
第7作 | 家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ |
1981年1月 ~1981年12月 |
第8作 | 南の虹のルーシー | 1982年1月 ~1982年12月 |
第9作 | アルプス物語 わたしのアンネット |
1983年1月 ~1983年12月 |
『南の虹のルーシー』(みなみのにじのルーシー)は、フジテレビ系列の「世界名作劇場」枠で放送されたテレビアニメ。放映期間は1982年1月10日から同年12月26日まで全50話。昭和57年度文化庁子供向TV用優秀映画賞受賞。
目次
概要
原作はフィリス・ピディングトンの『南の虹』(Southern Rainbow)で、放映前は未邦訳であったが、放映開始時より産経新聞発行のリビングブックに邦訳が連載される(一関春枝訳、講談社セシール文庫、1982)。オーストラリア開拓時代、農場を持つことを夢見てイギリスのヨークシャーから、オーストラリアのアデレードへ移住してきた一家の物語である。
前半では、一家が南オーストラリアに到着してから、アデレードに住居を購入して生活基盤を築いていくまでのおよそ一年間を克明に描く。動物好きで活発なルーシー・メイが姉のケイトとともに、未開拓の大自然の中で、様々な動物たちと出会ったり、先住民と交流したりする。
後半は、移住から3年の月日が経過しても、未だに希望の土地を手に入れられない中で、支え合って生活する一家とルーシー・メイに起こる事件を中心に物語が展開する。
本作品ではカンガルー、カモノハシ、コアラ、ウォンバット、ワライカワセミなどオーストラリアにしか生息しない動物たちが紹介された。本作品が放映された当時は、まだ日本にコアラはいなかった(東山動植物園等に初めてコアラが来日するのは放映から2年後の1984年のことである)。主人公のルーシー・メイや子供達の役は児童劇団や一般からの候補を募り、60人以上のなかからオーディションで選ばれた。
あらすじ
1837年、ルーシー・メイとポップル一家は農場の所有を夢見てオーストラリアにやってきた。しかし、政府による測量が進まず、なかなか農地を手に入れることができない。一家はアデレードに小さな家を購入して生活基盤を築き始める。ルーシー・メイは姉のケイトとともに家を取り囲む大自然や動物たちとふれあう。
一家がオーストラリアに移住して1年が経った頃、農地を入手できるチャンスが到来するが、意地の悪い金持ちのペティウェルによる妨害で叶わなくなる。それから2年後、一家はアデレードの中心部に引っ越していた。相変わらず農地を獲得できないまま、父のアーサーは次第に希望を失いつつあった。
一家が困窮する中でルーシー・メイが事故で記憶喪失になり、大富豪のプリンストン夫妻に保護されるという事件が起こる。ルーシー・メイの記憶は元に戻り、一家との再会も果たすも、かつて亡くした娘に彼女を重ね合わせるプリンストン夫妻から、養女に乞われた。一旦は断るが、ルーシー・メイは自分が養女になれば一家が農地を入手して幸せになれると考え、承諾しようと決意する。しかし、プリンストンは彼女の本心を見抜くとともに、家族を愛する気持ちに感銘を受け、養女にすることは諦め、一家には良い条件で農地を譲り渡すことにする。念願の農地を手に入れたポップル一家は希望を胸に抱き、新たなる旅立ちを迎えるのであった。
登場人物
ポップル一家
- ルーシー・メイ・ポップル
- 声 - 松島みのり
- 主人公で、オーストラリア上陸時6歳。動物が大好きで、見つけ次第なんでも飼おうとする。勉強が大嫌いで、特に算数は苦手。
- ケイト・ポップル
- 声 - 吉田理保子
- ルーシーの姉で次女。上陸時10歳。よくルーシーと行動を共にする。姉妹の会話はかけ合い漫才のよう。算数が得意。ナレーションも担当。
- クララ・ポップル
- 声 - 玉川沙己子
- ルーシーの姉で長女。上陸時16歳。しっかり者。後にマック夫人のパン屋で働く。ジョンと恋仲にあり、最終的には結婚する。
- アーサー・ポップル
- 声 - 堀勝之祐
- ルーシーの父で農夫。器用。理想の農園作りを夢見て上陸してきた。前半は万能ぶりを見せていたが、なかなか土地が手に入らず希望を無くし、徐々に酒に溺れていく。
- アーニー・ポップル
- 声 - 谷育子
- ルーシーの母。しっかり者。アーサーにも毅然としている。
- ベン・ポップル
- 声 - 松田辰也
- ルーシーの兄で長男。上陸時12歳。最初は頼りない印象だったが、次第にたくましくなる。医者を目指していたが、後半には諦めて税関で働く。
- トブ・ポップル
- 声 - 鈴木三枝→高田由美
- ルーシーの弟で次男。上陸時3歳。
一家のペット
- モッシュ
- ルーシーがイギリスから連れて来たハムスター。
- ステッキー
- 雌のヤギ。森で足を木の根に挟まれていたところを助けられ、以後一家に飼われる。毎朝ミルクを出す。また、子ヤギも3匹産む。そのうち1匹は名前が付く前にハッピーに噛み殺され、別の1匹はビリーが譲り受けた。
- リトル
- ルーシーが飼っているディンゴ。親を殺されていたところをベンが見つけ、拾ってきた。子どもの頃より飼われていた為、一家になついている。また非常に頭が良い。
- スノーフレーク
- ルーシーがロングからもらったヒツジ。リトルとは兄弟のように仲が良い。
近隣
- デイトン
- 声 - 肝付兼太
- 移民船の船医だったが、酔いつぶれて船に乗り遅れ、オーストラリアへの移住を決意する。ポップル家の敷地を借りて診療所を開く。大酒飲みではあるが、腕は確か。
- ペティウェル
- 声 - 滝口順平
- ポップル一家と同じ移民船で南オーストラリアに渡った金持ちの実業家。何度引っ越しても、なぜかいつも一家の近くに住む。金を出せば、全て自分の思い通りになると思っており、気に入らないことがあると使用人や飼い犬に八つ当たりするなど、人格的に問題がある。しかし、商売の才能はあるようで、土地の売買や農場の経営などでオーストラリアにおいても財を成している。妻には頭が上がらない。ハッピーがリトルに殺された件を根に持っておりポップル家を目の敵にする。
- ハッピー
- ペティウェルの飼っている黒犬。ポップル家がもらった羊肉を持ち出したり、子ヤギを噛み殺すなど、ポップル一家は何度も迷惑を被った。スノーフレークを襲い、止めようとしたリトルに噛み殺される。
- シルバー
- ハッピーが殺された後、新たに飼われたブルドッグ。
- マック夫人
- 声 - 秋元千賀子
- ポップル一家の隣人。パンを焼くのが得意。作中で夫を病気で亡くし、その後パン屋を経営する。
- バーナード
- 声 - 納谷六朗
- マック夫人の弟。測量事務所の職員。一家にボロ小屋を売った本人。
- ジャムリング
- 声 - 水鳥鉄夫
- 一家と同じ船で上陸した大工。森で足を怪我していた所をアーサーらに助けられる。一家が家を建てるのを手伝う。
- ビリー
- 声 - 鈴木三枝
- ジャムリングの息子。ケイトと同い年で、ケイト、ルーシーとは仲が良い。
- パーカー
- 声 - 増岡弘
- ポップル一家と同じ移民船で南オーストラリアに渡った商人。アーサーがテントの設営を手伝ったことから縁ができて、一家のために牛車を用意してくれるなど親切を受ける。
- ロング
- 声 - 槐柳二
- アデレード郊外の老羊飼い。ルーシーたちとは仲が良い。
その他
- ジョン
- 声 - 井上和彦
- 移民船の船員。クララと恋仲。一旦イギリスへ帰るが、その後再びオーストラリアに来る。
- ヘラクレス
- 声 - 長堀芳夫
- 巨躯の原住民。言葉が通じないためヘラクレスという名前はルーシーたちが名付ける。川に落ちたルーシーを助けたりする。
- フランク・プリンストン
- 声 - 小島敏彦
- 馬車にはねられ、記憶を失ったルーシーを助けたお金持ち。
- シルビア・プリンストン
- 声 - 坪井章子
- フランクの妻。ルーシーを死んだ娘と重ね、エミリーと名づけて可愛がる。
スタッフ
- 製作 - 本橋浩一
- 製作管理 - 高桑充
- 企画 - 佐藤昭司
- 脚本 - 宮崎晃
- キャラクターデザイン - 関修一
- 作画協力 - OH!プロダクション
- 美術(監督) - 阿部泰三郎
- 背景 - スタジオアクア・スタジオSF 他
- 彩色 - スタジオロビン
- 撮影監督 - 黒木敬七
- 撮影 - トランスアーツ
- 編集 - 瀬山武司
- 現像 - 東洋現像所(現・IMAGICA)
- 音楽 - 坂田晃一
- 録音監督 - 斯波重治
- 録音制作 - 映像音響システム(現・サンオンキョー)
- 録音スタジオ - 太平スタジオ
- 効果 - フィズサウンド 依田安文
- 整音 - 桑原邦男
- タイトル - 道川昭
- 制作デスク - 関口修一、増子相二郎
- 制作進行 - 小竿俊一、余語昭夫、笠原義宏 他
- 演出補 - 楠葉宏三、鈴木孝義、腰繁男
- 演出助手 - 杉村博美、斉藤次郎
- プロデューサー - 松土隆二
- 監督・演出 - 斎藤博
- 企画・製作 - 日本アニメーション株式会社
- 制作 - 日本アニメーション・フジテレビ
主題歌
オープニングテーマ
- 「虹になりたい」
- 作詞 - 深沢一夫 / 作曲・編曲 - 坂田晃一 / 歌 - やまがたすみこ
エンディングテーマ
- 「森へおいで」
- 作詞 - 深沢一夫 / 作曲・編曲 - 坂田晃一 / 歌 - やまがたすみこ
各話リスト
話数 | 放送日 | サブタイトル | 絵コンテ | 作画監督 |
---|---|---|---|---|
第1話 | 1982年 1月10日 |
新しい土地へ | 清瀬二郎 | 森友典子 |
第2話 | 1月17日 | 可愛いヤツ | 楠葉宏三 | |
第3話 | 1月24日 | かわり者 | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第4話 | 1月30日 | はじめての探検 | 楠葉宏三 | 森友典子 |
第5話 | 2月7日 | 雨のち晴 | 清瀬二郎 | 村田耕一 |
第6話 | 2月14日 | アデレードという町 | 前田英美 | |
第7話 | 2月21日 | ベンの災難 | 楠葉宏三 | 森友典子 |
第8話 | 2月28日 | 出発の前夜 | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第9話 | 3月7日 | アデレードへの道 | 楠葉宏三 | 森友典子 |
第10話 | 3月14日 | 緑の町 | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第11話 | 3月21日 | 小さなわが家 | 鈴木孝義 | 森友典子 |
第12話 | 3月28日 | アデレードの夜 | 清瀬二郎 | 村田耕一 |
第13話 | 4月4日 | ベンがやって来た! | 楠葉宏三 | 前田英美 |
第14話 | 4月11日 | たくましい男 | 鈴木孝義 | 森友典子 |
第15話 | 4月18日 | 二つの家 | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第16話 | 4月25日 | ずぶぬれのお医者さん | 楠葉宏三 | 村田耕一 |
第17話 | 5月2日 | 不幸な出来事 | 鈴木孝義 | 森友典子 |
第18話 | 5月9日 | 木登り | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第19話 | 5月16日 | 今日は買い物 | 楠葉宏三 | 森友典子 |
第20話 | 5月30日 | 井戸の水 | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第21話 | 6月6日 | アデレードの設計者 | 鈴木孝義 | 森友典子 |
第22話 | 6月13日 | レンガとディンゴの子 | 楠葉宏三 | 前田英美 |
第23話 | 6月20日 | お前の名前はリトル | 清瀬二郎 | 森友典子 |
第24話 | 6月27日 | 夏の終わりの日 | 鈴木孝義 | 前田英美 |
第25話 | 7月4日 | ついてない時は… | 清瀬二郎 | 村田耕一 高野登 |
第26話 | 7月11日 | 病気になった! | 楠葉宏三 | 森友典子 |
第27話 | 7月18日 | 凧に乗って | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第28話 | 7月25日 | 川の向こう岸 | 腰繁男 | 森友典子 |
第29話 | 8月1日 | リトルの訓練 | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第30話 | 8月8日 | 誕生日のおくりもの | 楠葉宏三 | 村田耕一 高野登 |
第31話 | 8月15日 | リトルと黒い犬 | 清瀬二郎 | 森友典子 |
第32話 | 8月22日 | 虹の橋のたもと | 前田英美 | |
第33話 | 8月29日 | 失われた夢 | 楠葉宏三 | 森友典子 |
第34話 | 9月5日 | リトルと学校 | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第35話 | 9月12日 | 対決 | 楠葉宏三 | 村田耕一 |
第36話 | 9月19日 | 巣の中の5シリング | 清瀬二郎 | 森友典子 |
第37話 | 9月26日 | 草原の強盗団 | 楠葉宏三 | 前田英美 |
第38話 | 10月3日 | ルーシーは名探偵 | 清瀬二郎 | 森友典子 |
第39話 | 10月10日 | 二つの別れ | 楠葉宏三 | 村田耕一 |
第40話 | 10月17日 | わたしは誰? | 清瀬二郎 | 前田英美 |
第41話 | 10月24日 | 見知らぬ町 見知らぬ人 | 森友典子 | |
第42話 | 10月31日 | エミリーと呼ばれる子 | 前田英美 | |
第43話 | 11月7日 | すれ違い | 村田耕一 | |
第44話 | 11月14日 | リトル! リトル! | 前田英美 | |
第45話 | 11月21日 | トブが消えた | 森友典子 | |
第46話 | 11月28日 | 穴の中のウォンバット | 前田英美 | |
第47話 | 12月5日 | とうさんの決意 | 村田耕一 | |
第48話 | 12月12日 | 大金持ちの子に… | 森友典子 | |
第49話 | 12月19日 | クララの結婚 | 前田英美 | |
第50話 | 12月26日 | 虹に向かって | 森友典子 |
メディア展開
映像ソフト
- 本編のDVDは2000年8月25日~同年11月25日発売。全12巻。3巻ずつ同時発売。
その他
- 本作は世界名作劇場シリーズで、オリジナル作品である『七つの海のティコ』を除き、唯一「放送前に原作が終了していなかった」作品であり、放送開始の時点においてもストーリーは完結していなかった。当初、製作サイドでは、オーストラリアへ移住した一家の、希望に満ちた開拓話になると思っていた所(『大草原の小さな家』のような話を期待していて、初期のサントラも、それに合わせた曲が収録されている)、原作が徐々に製作サイドの思惑とは違う方向に話が進んだ為、スタッフはかなり戸惑いながら製作したそうである。
- 未完結の原作を採用した理由は「原作の枯渇」である。原作者やその遺族からアニメ化の許可が下りなかったり、名作劇場の成功によりアニメ業界では「名作アニメは儲かる」と判断され、主だった児童文学の原作を押さえられてしまったからである。
関連項目
外部リンク
- 南の虹のルーシー(日本アニメーション公式ホームページ)