アーケードカード
アーケードカード (Arcade Card) とは日本電気ホームエレクトロニクス(NECホームエレクトロニクス)が1994年3月12日に発売したPCエンジンの周辺機器である。
概要
CD-ROM2は、CD-ROMから必要なデータをバッファRAMと呼ばれるメインメモリに転送して使用する仕組みになっており、最初のCD-ROM2システムではバッファRAMが512Kbit、SUPER CD-ROM2システムでは2Mbitだった。それを18Mbitに増強するために用意されたのがアーケードカードである。CD-ROM2システムを接続してあるPCエンジンのHuCARDスロットに挿入して使用する。
システム構成は、従来のSUPER CD-ROM2システムの2MbitのSRAMに16MbitのDRAMを追加することで、計18MbitのバッファRAMに増強したものである。CPUやチップ、音源の追加と言ったハード自体の機能追加は一切行われていない。
扱えるデータの量は格段に増えたが、CD-ROMドライブは等速のままだったため、比例して1回のロード時間が長くなるケースが多く、ソフト側はこれまで以上にロード時間短縮のための技術的努力が必要であった。
バリエーション
導入するシステム本体にSUPER CD-ROM2用の2Mbit SRAMが内蔵されているかどうかの差異に対応するため、2種類のアーケードカードが発売された[1]。両者に機能的な差異はない。
- アーケードカードPRO (PCE-AC2) 17,800円
- CD-ROM2システム用のカードで、SUPER CD-ROM2用の2Mbit SRAMと16Mbit DRAMの両方を搭載。
- 初代CD-ROM2システムは、HuCARDスロットにバッファRAM用SRAMを搭載した「システムカード」か「スーパーシステムカード」を挿入して使用しており、アーケードカードと併用が出来ないため、スーパーシステムカードを内蔵することで両方を1枚に集約している。
- CD-ROM2システム用と謳っているが、SUPER CD-ROM2システムでも使用することはできる(その場合はアーケードカードPRO側のSRAMのみが機能し、本体側のSRAMは使用されない)。ただしメーカーは推奨していない。
- HuCARDの上面半分にプラスチックカバーをかぶせた形状になっている[2]。
- アーケードカードDUO (PCE-AC1) 12,800円
- SUPER CD-ROM2システム用のカードで、16MbitのDRAMのみを搭載。
- 「PCエンジンDuo」「同Duo-R」「同Duo-RX」「SUPER CD-ROM2」「レーザーアクティブPCエンジン用パック」は本体内に2MbitのSRAMが内蔵されていてHuCARDスロットが空いているので、そこに16MbitのDRAMを挿入するだけで済むため、SRAMを搭載しない分、PROよりも価格を低く設定している。
- 形状は通常のHuCARDと似ているが、上面全体がプリント基板となっており、下面全体に薄いステンレス板を補強して強度を確保している。この方式のHuCARDは本製品のみである。
ちなみに、どちらのカードを挿入しても、電源投入時の起動画面は「SUPER CD-ROM2システム」のものと同一である。
発売延期
当初は1993年12月の発売が予定されていたが、アーケードカードに利用する4Mbit DRAM(本製品は4Mbit DRAM×4で16Mbitとなる構成)の世界的な品薄のため供給に必要な数が確保できないとの理由により、一度発売が延期されている。
これにより同時発売予定であった専用ソフト第一弾の『餓狼伝説2』も本製品に合わせて発売が延期されている。
市場の反応
商品名からも分かるように、本製品の登場の背景には当時ブームとなっていたアーケードの対戦型格闘ゲーム人気が大きく影響している(格闘ゲームでは、1つのステージで大量のキャラクターパターンを用意する必要があり、従来のバッファRAM容量では忠実に移植するのが困難だった)。そのため発表された専用ソフトにはネオジオで人気を博していた格闘ゲームが名を連ねたが[3]、バッファRAM増強による効果は他にも期待できるため、格闘ゲーム以外のタイトルも発表された。またアーケードカード専用ソフトのほかにも、アーケードカードを使用すると従来のSUPER CD-ROM2よりも快適にプレイできたり、映像や音声が強化されるといったアーケードカード「対応」ソフトもいくつか発売された。
しかし、発売当時は同年に発売されることとなる次世代機(3DO、セガサターン、PlayStationなど)の情報が既に出だしており、高額な価格設定とも相まって、かつてのCD-ROM2からSUPER CD-ROM2へのような普及には至らず、発売予定であった『天外魔境III』もNEC-HEの次世代機であったPC-FX用ソフトへと移行するなど[4]、最終的に発売された専用ソフトはわずかな本数となった。
ソフト一覧
アーケードカード専用
- 餓狼伝説2(ハドソン 1994年3月12日発売)
- 龍虎の拳(ハドソン 1994年3月26日)
- ワールドヒーローズ2(ハドソン 1994年6月4日)
- マッドストーカー(日本電気ホームエレクトロニクス 1994年9月15日)
- ストライダー飛竜(NECアベニュー 1994年9月22日)
- 新日本プロレスリング '94バトルフィールドイン闘強導夢(フジコム 1994年11月25日)
- 餓狼伝説スペシャル(ハドソン 1994年12月2日)
- ファイプロ女子憧夢超女大戦 全女vsJWP(ヒューマン 1995年2月3日)
- カブキ一刀涼談(ハドソン 1995年2月24日)
- 雀神伝説(日本電気ホームエレクトロニクス 1995年2月24日)
- 銀河婦警伝説サファイア(ハドソン 1995年11月24日)
- 魔導物語I(NECアベニュー 1996年12月13日)
アーケードカード対応
SUPER CD-ROM2ソフトのうち、アーケードカードで起動すると動作に変化があるもの(一部、変化の概要も記載)。
- 戦闘開始前のロード時間短縮。戦闘勝利後の勝利ポーズ時の読み込みによる一時停止等がなくなる。
- プレイ中に一度読み込んだデータをキャッシュとして蓄積して、一度通過した街の再訪などでロード時間がなくなる。
- ゲーム開始時に大量のデータを読み込んでゲーム中のロード回数が大幅に軽減し、メインBGMが内蔵音源からCD-DAに変わる。
- ゲーム起動時に大量のデータを読み込むことで、オープニングデモ中のロードがなくなり、アニメーションが追加、音もCD-DAになる。
- ゲーム開始時に大量のデータを読み込み、ゲーム中のロード回数を大幅に軽減する。
- 聖戦士伝承・雀卓の騎士(日本物産 1994年8月1日)
- スーパーリアル麻雀PII・III カスタム(ナグザット 1994年8月5日)
- ぽっぷるメイル(日本電気ホームエレクトロニクス 1994年8月12日)
- まーじゃんファッション物語(日本物産 1994年9月16日)
- 誕生 Debut(NECアベニュー 1994年9月22日)
- Xak III(日本電気ホームエレクトロニクス 1994年9月30日)
- 卒業II ~Neo Generation~(リバーヒルソフト 1994年12月23日)
- ゲーム起動時に大量のデータを読み込み、ゲーム中のロード回数を大幅に軽減する。
- スーパーリアル麻雀PVカスタム(ナグザット 1995年3月3日)
- フォーメーションサッカー95 della セリエA(ヒューマン 1995年4月7日)
- レッスルエンジェルス・ダブルインパクト 団体経営編&新人デビュー編(日本電気ホームエレクトロニクス 1995年5月19日)
- 空想科学世界ガリバーボーイ(ハドソン 1995年5月26日)
- プレイ中に一度読み込んだデータをキャッシュとして蓄積して、一度通過した街の再訪などでロード時間がなくなる。
- プリンセスメーカー(日本電気ホームエレクトロニクス マイクロキャビン 1995年1月3日)
- プリンセスメーカー2(日本電気ホームエレクトロニクス マイクロキャビン 1995年6月16日)
- あすか120% マキシマ(NECアベニュー 1995年7月28日)
- 起動時に左+IIボタン同時押しによる隠し対応。起動時に大量のデータを読み込み、ゲーム中のロード時間を大幅に軽減する。
- プライベート・アイ・ドル(日本電気ホームエレクトロニクス 1995年8月11日)
- 主に各章のはじめに大量のデータを読み込み、ビジュアルシーン中などのロード回数が大幅に軽減する。
- プレイ中に一度読み込んだデータをキャッシュとして蓄積して、一度通過した街の再訪などでロード時間がなくなる。
脚注
- ↑ 当初はアーケードカードDUOに相当するものだけをアーケードカードとして発売し、CD-ROM2システムユーザーにはスーパーシステムカードとアーケードカードの2枚を同時に挿入する拡張ユニットが用意される予定であった。しかし、発売前にコスト面などから製品構成の見直しが行われ、2種類のバリエーションでの発売となる。
- ↑ この形状のものは他に『ポピュラス』、『ストリートファイターIIダッシュ』、スーパーシステムカード、天の声バンクがある。通常のHuCARDよりも容量等が大きいものはプリント基板の面積が広いため、カードの強度を補強するために採用している(ただし「天の声バンク」のみ、ボタン電池を収納するスペースとして使用)。レーザーアクティブはHuCARDスロットの形状の関係で厚みのあるこのタイプのHuCARDは抜けなくなる可能性があるので注意が必要である。
- ↑ これらのゲームのオリジナル製作元であるSNKは、移植許諾だけでなく各タイトルの内部データも提供している。これは当時、SNKがネオジオCDによるCD-ROM供給を計画しており、ハドソンの持つCD-ROM製作のノウハウと交換する形で両社が技術提携したからである。
- ↑ 同作は結局PC-FXでも発売されず、長い沈黙ののち、2005年にPlayStation 2用ソフトとしてようやく発売された。