光年

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光年(こうねん、テンプレート:Lang-en-shortテンプレート:Lang-de-short、略 ly )は、主として天文学で用いられる距離長さ)の単位であり、正確に 9 460 730 472 580 800 m、約9.5兆キロメートルである。1981年まではSI併用単位であった。

概要

1光年は、が自由空間かつ重力場及び磁場の影響を受けない空間を1ユリウス年(365.25 = 31 557 600[1]の間に通過する長さである[2]真空中の光速度は正確に 299 792 458 m/s であるので、1光年は正確に 9 460 730 472 580 800 m である[3]。概数としては、約9.46テンプレート:Eメートル(約9.46ペタメートル)である。

光年の換算

  • 1 光年
  • = 9 460 730 472 580 800 m
  • = 9 460 730 472 580.800 km
  • = 約 63 241 au(天文単位
  • = 約 0.306 601 pc(パーセク

歴史的な値および不正確な値

距離の単位として、「光年」を初めて使用したのは、ドイツ人のテンプレート:仮リンクである。オットーは1851年の著作、Deutsches Museum: Zeitschrift für Literatur, Kunst u. Öffentliches ..., Volume 1[4]の中で、初めて「lichtjahre」を距離の単位として用いた。なお、フリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセルは1838年にはくちょう座61番星までの距離を、「光が1年間に通過する距離」の10.3倍(最新の観測では11.4光年)であることを見いだしたが、「光年」(ドイツ語ではlichtjahre)という単位を用いたわけではない。

国際天文学連合 (IAU) は1964年に定めた太陽年(ユリウス年とは異なる)と光速の実測値(定義値ではない)をテンプレート:仮リンク)体系に含めており、それを1968年から1983年まで使用していた[5]サイモン・ニューカムは、J1900.0の平均太陽年 31 556 925.9747 暦表秒と光速度 299 792.5 km/s から1光年を 9.460 530テンプレート:E m と計算した(光速度の有効数字7桁で丸めている)。この値がいくつかの最近の文献にも記載されているが[6][7][8]、おそらく1973年の有名な本[9]を参照したものと思われ、この文献は2000年まで改版されていなかった[10]

他の高精度の値は一貫したIAU体系のみからでは導出できない。9.460 536 207テンプレート:E m という不正確な値がいくつかの現代の文献に見られるが[11][12]、平均グレゴリオ年365.2425日(31 556 952秒)と光速度の定義 (299 792 458 m/s) を使って計算したものであろう。9.460 528 405テンプレート:E m という不正確な値もあるが[13][14]、これはJ1900.0の平均太陽年と光速度の定義を使って求めたものであろう。

現在では1光年の値は天文定数からは除外されている[15]

光年スケールの実際

仮に100億kmを1mmと換算した場合、直径が約60億kmある太陽系は約0.6mm(胡麻粒1個程の大きさ)に収まり、対する1光年(約1京m)の長さは約1mと表せてしまう程、広大な距離となる[16]

光年は、銀河恒星などの天体までの距離を表するのによく用いられる。キロメートル単位で表すと文字通り「天文学的数字」になるからである。

現在天文学では、恒星までの距離を示すときにはパーセクが用いられる。パーセクは、1天文単位動いたときの視差が1となる距離のことで、1パーセクは約3.26光年となる[2]。パーセクは観測データから簡単に求めることができ、相互参照できることからよく用いられている。しかし、科学者以外の一般大衆の間では、直感的に理解しやすい「光年」の方が広く使われている。

1光年は約63 241天文単位に等しい。光年で示されることの多い距離のものについては記事「1 E15 m」を参照のこと。

光年に関連して、が1日間・1時間・1分間・1秒間に進む距離として光日光時光分光秒という単位も定義できる。1光日は 25 902 068 371 200m、1光時は 1 079 252 848 800 m、1光分は 17 987 547 480 m、1光秒は 299 792 458 m となる。大まかな距離を表すのに1光年の12分の1の光月という単位も時折使われている[17][18]。ただし、光月は月の時間間隔を定めていないので厳密な定義が存在しない[注釈 1]

光年の扱いに注意すべきこと

光年は、かならず時間の経過を考慮する必要がある[注釈 2]ことには注意すべきである。例えば地球からの距離が1光年の星を見る場合、見ている光はその星から1年前に発せられたものであるため、1 年前に 1 光年の距離にあったその星をいま地球で見ていることになる。仮に、たった今その星が何らかの原因で消滅したとしても、地球からはその星の 1 年前の光しか見ることができないため、みかけ上は今後1年間は星がまだ存在しているように”見える”。

大きな赤方偏移が観測されるような非常に遠方の天体の場合、例えば2014年現在最も遠い天体であるMACS0647-JDは赤方偏移 z = 10.7 の値を持ち、距離は 133 億 9200 万光年、ハッブルの法則により地球からは光速の 98.5% にあたる 295,444 km/s で後退しているように”見える”と計算される[注釈 3]。しかし、これはこの天体から133 億 9200 万年前に発せられた光を元に計算されたみかけ上の値(このような距離をテンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-short という)であり、実際はいま時点では 319 億 3900 万光年の距離(このような距離をテンプレート:仮リンクテンプレート:Lang-en-short という)[注釈 4]にあり、後退速度は実光速の2倍以上にもなる 695,115 km/s である。このようなスケールでの後退速度は実際は計量自体の拡大速度であり、天体自体はこの計量上を光速度以下で運動していて光速不変の原理とは矛盾しない。

「光年」を使った距離の表現事例

1光年以下の単位(光月など)は、星系内の天体に関してよく使われる。光年は比較的近い恒星間の距離、同じ渦巻銀河内や球状星団内の恒星間の距離を表すのに使われる。

キロ光年は "kly" と略記され、1000光年すなわち約306.6パーセクを表す。キロ光年単位の距離としては銀河の構造の寸法などがある。

メガ光年は "Mly" と略記され、100万光年すなわち約30万6600パーセクを表す。メガ光年単位の距離としては銀河と銀河の距離や銀河団の距離などがある。

ギガ光年は "Gly" と略記され、10億光年を表し、通常使われる最も大きな距離の単位の一つである。1ギガ光年は約3億660万パーセクになる。ギガ光年単位の距離としてはクエーサーグレートウォールなどがある。

距離の一覧
尺度 (ly) 具体例
10-9 40.4テンプレート:E ly 太陽光がの表面で反射して地球の地表に届くまでに1.2秒から1.3秒かかる。月表面と地球表面の距離は平均すると約376 300 kmである。376 300 km ÷ 299 792 458 km/s(光速) ≈ 1.255 光秒となる。
10-6 15.8テンプレート:E ly 1天文単位太陽地球の距離)。太陽から地球まで進むには、8.3分かかる。つまり、太陽から地球までの距離(1天文単位)は8.3光分である[19]
10-3 3.2テンプレート:E ly 地球から最も遠くにある宇宙探査機であるボイジャー1号は、2009年7月12日現在、地球から15.22光時の距離にあり[20]、次に遠いパイオニア10号は13.79光時の距離にある[21]。ボイジャー1号が現在の速度を維持するなら、1光年の距離まで行くには18 000年かかる計算になる。
100 1.6テンプレート:E ly オールトの雲の直径は約2光年である。内側の境界は 50 000 AU、外側の境界は 100 000 AU と推定されている。
2.0テンプレート:E ly 太陽が重力的に支配している領域(ヒル球)の最外縁までの距離。125 000 AU。これより先が真の恒星間空間である。
4.22テンプレート:E ly 太陽系から最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリは、太陽から4.22光年の距離にある[22][23]
20テンプレート:E ly 海や平均気温など、生命が存在しうる環境がある可能性を持つグリーゼ581cは、地球から20光年の距離にある。
103 26テンプレート:E ly 銀河系銀河核までの距離は約26キロ光年(26,000光年)である[24]
100テンプレート:E ly 銀河系の直径は約10万光年である。
106 2.5テンプレート:E ly アンドロメダ銀河までの距離は約2.5メガ光年(250万光年)である。
3.14テンプレート:E ly さんかく座銀河 (M33) までの距離は約3.14メガ光年(314万光年)で、裸眼で確認できる最も遠い天体である。
59テンプレート:E ly 最も近い大銀河団であるおとめ座銀河団までの距離は約59メガ光年(5900万光年)である。
150テンプレート:E – 250テンプレート:E ly グレートウォールは150メガ光年(1億5千万光年)から250メガ光年(2億5千万光年)の距離にある(遠い方が最近の推定値)。
109 1.2テンプレート:E ly スローン・グレートウォールグレートウォールとは別物)は約1ギガ光年(10億光年)の距離にあると推定されている。
45.7テンプレート:E ly 地球から観測可能な宇宙の果てまでの共動距離は約45.7ギガ光年(457億光年)である。詳細は下記、および観測可能な宇宙を参照。

宇宙の大きさと光年の理解との関係

観測可能な宇宙”の大きさは、この共動距離の理解からおよそ 457 億光年(14 ギガパーセク)[25]とされているが、これは 宇宙マイクロ波背景放射テンプレート:Lang-en-short、CMB )の赤方偏移の観測値 z = 1090 から計算される共動距離の値で、誕生してからおよそ 38 万年後[26]の宇宙が膨張により移動して現在「在る」場所から、それを観測している現在の我々までの距離をいう(つまり、457 億年前の光をいま観察しているのでもないし、457 億光年離れた距離を計測できているわけでもない。観測できる宇宙の過去は宇宙が誕生した138億年前が限界である。{138 億年 - 38 万年}前の光を発した空間が「現在」は 457 億光年先にまで進んでいるという説明にすぎず、「457億年前」から「現在」までに「457億光年先のその空間」で何が起きたかを我々は知る術もない)。宇宙はもっと先にまで広がっているかもしれないが[注釈 5]、「(理論の検証のための)観測ができない以上は考えても意味が無い(=理論が証明できない)」とするのが現在の宇宙論の立場である。”観測可能な宇宙”は宇宙論の立場では我々を中心に置いたこの半径 457 億光年の球体内となり、この球面が宇宙論の立場での「宇宙の果て」「宇宙の大きさ」ということになる。CMB の観察結果よりも過去の宇宙の情報を知る手段で観測できるのであれば、”観測可能な宇宙”はさらに大きくなる[注釈 6]

逆説的だが、我々が現在観測している CMB の光は、赤方偏移から逆算すると共動距離で 3600 万光年しか進んでいないことになる(これも、3600 万年前の黒体放射を観測しているのではないし、3600 万光年の距離を実測できているわけでもない)。過去のそれより小さい距離(共動距離)で起きた事象を我々は観測できていない[注釈 7]

このように矛盾に思えるような光年スケールでの解釈は、宇宙の計量が拡大しているという事実と、有限である光速を使った光年を距離の単位に使うという事実の両方からくる非日常さゆえに理解が難しいとされることがある[注釈 8][注釈 9]

時間の単位であるとの誤解

」とついているが時間の間隔や日付や時刻の単位ではなく、距離の単位である。

日本の漫画やゲーム作品では、時間の単位と勘違いした誤用を用いたネタがみられる[注釈 10]

脚注

注釈

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出典

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関連項目

テンプレート:Sister

[編集]

天文学の長さの単位
メートル
SI単位)
天文単位 光年 パーセク
1 m = 1 ≈ 6.68459×10-12 ≈ 1.05700×10-16 ≈ 3.24078×10-17
1 AU ≈ 1.49598×1011 = 1 ≈ 1.58125×10-5 ≈ 4.84814×10-6
1 ly ≈ 9.46073×1015 ≈ 6.32411×104 = 1 ≈ 3.06601×10-1
1 pc ≈ 3.08568×1016 ≈ 2.06265×105 ≈ 3.26156 = 1
  1. IAU Recommendations concerning Units
  2. 2.0 2.1 テンプレート:Citation
  3. [http://www.iau.org/public/themes/measuring/ Measuring the Universe The IAU and astronomical units  International Astronomical Union] 本文の第3段落
  4. [1] p.728 p.734
  5. P. Kenneth Seidelmann, ed., Explanatory Supplement to the Astronomical Almanac (Mill Valey, California: University Science Books, 1992) 656. ISBN 0-935702-68-7
  6. Sierra College, Basic Constants
  7. Marc Sauvage, Table of astronomical constants
  8. Robert A. Braeunig, Basic Constants
  9. C. W. Allen, Astrophysical Quantities (third edition, London: Athlone, 1973) 16. ISBN 0-485-11150-0
  10. Arthur N. Cox, ed., Allen's Astrophysical Quantities (fourth edition, New York: Springer-Valeg, 2000) 12. ISBN 0-387-98746-0
  11. Nick Strobel, Astronomical Constants
  12. KEKB Astronomical Constants
  13. Thomas Szirtes, Applied dimensional analysis and modeling (New York: McGraw-Hill, 1997) 60.
  14. Sun, Moon, and Earth: Light-year
  15. K6 ASTRONOMICAL CONSTANTS 2014 この表に光年(light-year)は含まれていない。
  16. インターネット版【なるほどの森】Vol.26「宇宙のスケールを知る 第2回」
  17. テンプレート:Citation
  18. テンプレート:Citation
  19. IERS Conventions (2003), Chapter 1, Table 1-1.
  20. NASA pressrelease (05-131) 24 May 2005: Voyager Mission Operations Status Report Week Ending March 9, 2007
  21. Spacecraft escaping the Solar System
  22. NASA: Cosmic Distance Scales - The Nearest Star
  23. Proxima Centauri (Gliese 551), Encyclopedia of Astrobiology, Astronomy, and Spaceflight
  24. F. Eisenhauer, et al., "A Geometric Determination of the Distance to the Galactic Center", Astrophysical Journal 597 (2003) L121-L124
  25. テンプレート:Cite journal
  26. テンプレート:Cite arXiv


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