ハナノキ
ハナノキ(花の木、学名 Acer pycnanthum)はカエデ科カエデ属の落葉高木。カエデの仲間である。ハナカエデとも言う。カエデ科は、新しいAPG植物分類体系ではムクロジ科に含められている。
特徴
樹高は30mに達する。雌雄異株。冬芽は5-7対の鱗片が瓦重ね状に並び、濃紅色になる。花期は4月で、葉が展開する前に赤い花を咲かせる。これが名前の由来となっている。花序は前年枝の葉腋に4-10個束状につく。雄花の花柄は長さ5-6mmになり上向き、花弁は0-5個、萼片は5個、雄蕊は5-6本あり、葯は黒紫色になる。雌花の花柄は長さ1-1.5cmになり垂れ下がり、花弁は4-5個、花柱の長さ4-4.5mm、退化雄蕊が5-6本ある。果期は6月。果柄は6-7cmに伸び、果実は翼果で、分果の長さは2.5cmになり、翼果は直角から鋭角に開く[1][2]。
葉は対生する。葉身は長さ2.5-8cm、幅2-10cmの広卵形で、掌状の3脈があり、ふつう先が浅く3裂するが、ときに無裂のものもある。縁は重鋸歯になり、葉先は鋭くとがり、基部は浅心形から広いくさび形、裏面はふつう粉白色になる。葉柄は葉身の0.5-1.3倍ほどになり、長さ1.5-8cmになる[1][2]。秋には鮮やかに葉が紅葉または黄葉する。
分布と生育環境
日本の固有種で、長野県南部・岐阜県南部・愛知県北東部の3県県境のおもに木曽川流域の山間湿地に自生し、長野県大町市の居谷里湿原に隔離分布する[1][3]。自生地は山間の川岸や湿原などの湿地[2]。滋賀県の国の天然記念物に指定されているものは、自生地から移植されたものと考えられている[3]。最近では街路樹や公園などに植栽されていることも多い。
自生地などが国の天然記念物に指定されている他、愛知県の県木ともなっている。環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類に選定されている。
近江国、美濃国、尾張国などではこれを栽培するものもあったが、自生種は飯沼慾斎「草木図説」、伊藤圭介「日本産物志」に、美濃、信濃国の山中にあることが記されているだけであった。久しく知られることなく、明治末年、岐阜県恵那郡坂本村(現・中津川市)に自生していることが発見され、その後県内で自生しているのを発見された。岐阜県中津川市坂下(椛の湖の北岸の湿地帯)や滋賀県愛知郡湖東町(現・東近江市)南花沢のものが有名である。
地方公共団体の木に指定している自治体
国の天然記念物
- 新野のハナノキ自生地(長野県下伊那郡阿南町) -1922年(大正11年)10月12日指定
- 越原ハナノキ自生地(岐阜県加茂郡東白川村) -1922年(大正11年)10月12日指定
- 釜戸ハナノキ自生地(岐阜県瑞浪市) -1922年(大正11年)10月12日指定
- 坂本のハナノキ自生地(岐阜県中津川市) -1920年(大正9年)7月17日指定
- 白山神社のハナノキおよびヒトツバタゴ(岐阜県土岐市) -1943年(昭和18年)2月19日指定
- 富田ハナノキ自生地(岐阜県恵那市) -1922年(大正11年)10月12日指定
- 川宇連ハナノキ自生地(愛知県北設楽郡豊根村) -1922年(大正11年)10月12日指定
- 南花沢のハナノキ(滋賀県東近江市) -1921年(大正10年)3月3日指定
- 北花沢のハナノキ(滋賀県東近江市) -1921年(大正10年)3月3日指定
保全状況評価
絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)2012年8月レッドリスト
脚注
参考文献
- 佐竹義輔他編『日本の野生植物 木本Ⅱ』、1989年、平凡社
- 加藤陸奥雄他監修『日本の天然記念物』、1995年、講談社
- 茂木透、石井英美他『樹に咲く花(離弁花2) 山溪ハンディ図鑑4』、2000年、山と溪谷社
- 猪狩貴史著『カエデ識別ハンドブック』、2010年、文一総合出版
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)