RSS
テンプレート:Infobox file format RSSは、ニュースやブログなど各種のウェブサイトの更新情報を簡単にまとめ、配信するための幾つかの文書フォーマットの総称である。
目次
概要
- RDF site summary(RSS 0.9、RSS 1.0)
- rich Site summary(RSS 0.91)
- really simple syndication(RSS 2.0)
上記の様に「RSS」という語には、名称の異なる複数の規格が存在しており、それぞれ記述方法や用途が異なるために、多少の混乱が見られる。
ブログでの更新情報の配信として用いられている場合が大半を占めているが、ニュース配信サイトでは最新ニュースを、放送局では番組情報を、その他各種企業においてプレスリリースや新製品情報、サポート情報を、RSSを使ったヘッドライン情報として配信する事例も増えている。また、音声データファイルを公開するための方法であるポッドキャスティングにも使われている。
また、RSSに対応しているウェブサイトではRSSに対応していることを明確にするために下記のような表示が使われていることが多い。
RSSフォーマットの歴史と変遷
RSSはRDFの採用をめぐって現在分裂状態にあり、1.0と2.0の2つの系列に分かれている。当初、0.9はRDFをベースにしたデータ形式を利用していたが、0.91ではシンプル化するためにRDFを利用しなくなった。その後、1.0では0.9の系列を引継ぎ、複雑なRDFを採用することで応用性の高いデータを利用できるようにした。これに対して、2.0は0.91を引継ぎ、コンテンツ配信に特化することで複雑なRDFを排除している。
RSS 0.9
最初のRSSであるRSS 0.9は、RDF site summary[1][2]として、1999年3月に米国ネットスケープコミュニケーションズが自社のポータルサイト「My Netscape」において、「チャンネル」の詳細を記すために策定したものである。RDF構文を用いたことから、RDF site summaryと呼ばれる。
その後ネットスケープコミュニケーションズはRDF構文の利用を止め、独自のXMLフォーマットを用いて要素を拡張し、よりリッチな情報を提供できるようにしたRSS 0.91を開発した。
RSS 0.91
rich site summaryと改名されたRSS 0.91は、RSS 0.9に要素を拡張する目的で作られ、1999年7月にこのバージョンがリリースされた。RDFを用いず、独自のXMLで記述される。
ユーザーランド・ソフトウェア社(UserLand Software)の「スクリプティングニュース」(ScriptingNews)から著作権、日付情報などいくつかの要素を取り入れ拡張された。それまでのRSS 0.9より多くの情報を配信できるようになったため、rich site summary[3]と呼ばれ、その後派生したRSS 0.92、RSS 2.0のベースとなっている。
RSS 0.91の登場以降、RSSが持つ「コンテンツ配信」機能に対しての需要がさらに高まった。そのためよりリッチなコンテンツ配信を目指そうとする制作者が、独自の要素をRSSに追加してしまうなど、フォーマットの拡張における混乱がおこることとなった。
RSS 1.0
こうした混乱のなかで、RSSでよく使われる語彙や使われる要素群を「コア」として定義し、それ以外は拡張する側が独自の語彙を「モジュール」として定義することで、中核語彙と拡張性を保証させようとする提案が RSS-DEV ワーキンググループ内で起こり、その成果として2000年12月にRSS 1.0がリリースされた。
RSS 1.0は0.9時代につかわれていたRDFを再び採用し、RSSが持つ「メタデータ記述」としての側面を主眼に置いたフォーマットとなっている。
また、RSSコアモジュールの他に公式なモジュールとして、Dublin Core
モジュール、Syndication
モジュール及び Content
モジュールが定められた。これにより RSS 0.9の不満であった語彙の乏しさを解消させ、またコンテンツ配信手段としてRSS 1.0を採用する道を残すものとなった。
RSS 1.0 の登場は、(メタデータ記述技術としての)RSSの中核語彙及び拡張性を保証するものとなった。しかしRDFを再び採用したこと、モジュールによるXML名前空間の複雑化はすべてのRSS配信者を満足させず、RSS 0.91 系のフォーマットを拡張する動きが再びみられることとなった。
RSS 0.92 / RSS 2.0
RSS 1.0の取る道は必ずしも誰もが好むものではなかった、とはいえRSS 0.91以降に起きていたフォーマット拡張の混乱は避ける必要があった。そのため拡張をオプションとして提供し、かつRSS 0.91への互換性を持たせる方法が提案され、それを受けて2000年12月にユーザーランド・ソフトウェア社からRSS 0.92が発表された。
ユーザーランド・ソフトウェア社はその後も互換性を維持したままRSS 0.93、RSS 0.94という拡張を続けたが、2002年8月にRSS 0.91 からRSS 0.94までのすべてのフォーマットに対する互換性を保証したRSS 2.0を策定し、これをreally simple syndication[4]と名付けた。
RSS 2.0はあくまで0.9x系の流れを汲む規格であって、RSS 1.0の後継ではない。それぞれの目指す方向性は同じではないため、場面に応じて使い分けられている。
2003年7月に、RSS 2.0制定の中心人物、デイヴ・ウィナー(Dave Winer)の移籍と併せ、仕様もハーヴァード大学ロースクールのバークマンセンターに移管された。
今後の展望
RSS 1.0 と RSS 2.0 の関係について、バージョンを表す数値の大小関係から、前者が旧規格で後者が後継規格であるという誤解が見受けられるが、これは事実ではない。RSS 2.0 はシンプルさの代償として RSS 1.0 の備える(RDFによる)強力な表現力を放棄したため、RSS 1.0 を置き換えるものではない。従って RSS 1.0 は場面に応じて今後も継続利用されていくと目される。テンプレート:要出典
一方、RSS 2.0 に代わるコンテンツ配信技術として、IBMのサム・ルビー(Sam Ruby)などが中心となり、Atom と呼ばれる新しい規格が策定された。Atom にはウェブログ・ツール「ムーバブル・タイプ」(Movable Type)の開発元のシックス・アパート社(Six Apart)やスタンフォード大学法学部のローレンス・レッシグ教授、XML開発者のティム・ブレイ(Tim Bray)などが支持を表明し、またグーグル社も自社のサービス テンプレート:ルビ にて、メールの内容を Atom フィードで提供するサービスを行っている。
今日において、RSS 1.0、RSS 2.0 そして Atom は、いずれにも集約されることなく各々が広く普及している。RSSリーダーの多くはそれら全てに対応しており、一方のウェブサイト側も、フィード配信のためにそれらのうち複数を利用することも珍しくない。
RSSの利用
RSSの取得・購読にはRSSリーダー(フィードリーダーとも)と呼ばれるソフトウェアを使う。また、RSSを作成・追加するためのソフトウェアもあるが、比較的シンプルなXML形式なので手作業でも可能である。
図書館におけるRSS
情報を扱う専門機関としての図書館においてもRSSの活用サービス例は増えている。お知らせの配信などはもっとも活用されている例である。京都大学図書館機構などでは、学生や研究者向けにRSSについての概要や活用方法などをまとめている。また、農林水産研究情報センターでは、新着雑誌、新着図書情報などもRSSによって配信している。
参考文献
- 水野貴明『詳解RSS~RSSを利用したサービスの理論と実践』、ディー・アート、2005年 ISBN 4-88648-746-7
注釈
- ↑ 「RDFによるウェブサイト要約」を意味する。
- ↑ RDFについてはResource Description Frameworkを参照のこと。
- ↑ 「内容の豊かなウェブサイト要約」を意味する。
- ↑ 「本当に簡素な配信」を意味する。
関連項目
外部リンク
- RSS -- サイト情報の要約と公開(The Web KANZAKIによるRSS 1.0の解説)
- RSS 0.9 Document Type Definition(Netscape CommunicationsによるRSS 0.9のDTD)
- RSS 0.91仕様(英語)
- RSS 1.0仕様(英語) / [1](和訳)
- RSS 0.92仕様(英語)
- RSS 2.0仕様(英語)
- RSS 2.0とAtom 1.0の比較
- ウィキペディア日本語版の「最近更新されたページ」のRSS
- Feed Icons(標準フィードアイコン)
- RSS 目次(英語)
- 京都大学図書館機構「メール・アラート、RSSリーダー」
- MAFFIN News Feeds Center「よくある質問と回答」(農林水産研究情報センター)
- RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開(情報管理Vol.49(2006), No.1 p.11-23)