LORAN
LORAN(ロラン、テンプレート:Lang-en-short[1])は地上系の電波航法システムの一つ[2]。船舶や航空機で利用されてきたが、より精度の高い衛星系の電波航法システムであるグローバル・ポジショニング・システム(GPS)が登場したことによって役割を終えつつある。
概説
ロランは双曲線航法を用いるシステムである[2]。幾何学上、2点からの距離の差が一定な点は双曲線を描く。ロランは電波の到達時間差を用いて2つの無線測位局との距離差を求めれば地図上で双曲線を描くことができ、その線上に自身がいることになるという原理を利用したものである。
ロランは、イギリスのGEE電波航法を発展させたものとして、アメリカ合衆国において開発された。第二次世界大戦中に開発されたものであり、アメリカ海軍やイギリス海軍のほか、マサチューセッツ工科大学も開発に加わっている[3]。1942年には、アメリカ軍は太平洋戦域にもロランの設置を開始している[4]。
ロランは用いる電波の周波数帯などによってロランA(1750 - 1950kHz)やロランC(100kHz)などに分類される[5]。
種類
ロランA
ロランAは主局及び従局からの1750 - 1950kHzの周波数帯のパルス波の到着時間差を利用するもの[5]。最高有効距離は日中で約700海里、夜間で約1400海里である[5]。日本では昭和30年代から運用を開始[6]。1997年(平成9年)に廃止された[6]。
ロランC
ロランCは主局及び従局(2局から4局)からの100kHzの周波数のパルス波の到着時間差及び位相差を利用するもの[5]。最高有効距離は約2300海里である[5]。ロランCの精度は30 - 300mほどである。
当初は米国が運用していた[6]。GPSの整備完了に伴って米国国外での運用廃止が伝えられたが、日本では多くの船舶が利用していたことから1991年(平成3年)から整備に着手して業務を引き継いだ[6]。1993年(平成5年)に千葉ロランセンターを設置[6]、1994年(平成6年)に硫黄島局に代わる主局として新島局を設置した[6]。
ロランCのシステムは世界の主要海運国の相互協力により運用がなされている。極東海域では日本、中華人民共和国、大韓民国、ロシアの四カ国間で「FERNS協定」を締結して運用されている。
しかし、ロランCもGPSの普及に伴い縮小傾向にある。アメリカ沿岸警備隊及びカナダ沿岸警備隊による、北アメリカ大陸での運用は2010年に廃止されている[7][8]。
日本の海上保安庁も次の局を廃止した。
これにより、日本国内で電波を発射しているのは、新島ロランC局および慶佐次ロランC局のみとなった。さらに新島ロランC局については、2012年(平成24年)6月19日20時16分から(海上安全情報では19時41分から[11])台風4号によるアンテナ障害[12]のために長期欠射中となっているが[13]、2014年(平成26年)2月1日午前9時をもって廃止予定となっている[14]。 また、慶佐次ロランC局についても、2015年(平成27年)2月1日午前9時をもって廃止予定となっている。これをもって、日本国内のロランC局はすべて廃止される事となる[15]。
eLORAN
GNSSシステムの脆弱性が露見したこと[16]や、それら自身の伝播と受信の限界によって、LORANのアプリケーションと開発への新たな関心が登場した[17]。Enhanced LORAN (「eLORAN」や「E-LORAN」としても知られている) は、精度と伝統的LORANの有用性を増加させる受信機の設計と送信特性の発達から成る。報告された± 8メーターほどの精度[18]で、そのシステムは非Enhanced GPSと拮抗的になる。eLORANはDGPS補正のような補助データを送信することができる追加パルスを含む。eLORAN受信機は現在、範囲にある全ての局からの信号を合体する "All in view" 受信を使っている。これは、単一のGRIからのそれら単一ではなく、40までの局から来る時間信号とその他のデータを合成している。LORANにおけるこれらの拡張は、GPSが利用可能でないか劣化した場所でのシナリオの代わりとして、これを十分にする[19]。
イギリスにおけるeLORANの実装
2007年5月31日、イギリスの運輸省 (DfT)は、テンプレート:仮リンク (GLA) を通して、イギリスと西ヨーロッパで、船員の安全を改善するために、最新式のeLORANサービスを提供する15年の契約を締結した。サービスの契約は二つの段階で実行されるだろう: 2007年から2010年を通してのeLORANサービスの提供に関する開発作業と欧州協定のためのさらなる重点、及び2010年から2022年を通してのeLORANサービスの完全運用。最初のeLORAN送信機はイギリスのカンブリア州のAnthorn radio stationに位置し、Babcock Group PLCの一部であるBabcock Commsによって運用される[20]。
eLORAN: イギリス政府は、GPS妨害の脅威への抵抗を支援するため、イギリスの南と東の沿岸に沿って建てる七つのディファレンシャルeLoran船位テクノロジに承認を行った。それらは2014年夏に、最初の運用能力に達するよう設定されている[21]。
脚注
関連項目
- 船舶向け
- 航空機向け
- 戦術航法装置(TACAN)
- 超短波全方向式無線標識(VOR)
- 距離測定装置(DME)
- 無指向性無線標識(NDB)
- 航空機着陸支援
- 衛星測位システム
外部リンク
テンプレート:Ship-stub- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 2.0 2.1 ロランCとは 海上保安庁交通部
- ↑ Inventing Accuracy: An Historical Sociology of Nuclear Missile Guidance, P143, Donald A. MacKenzie, MIT Press
- ↑ 『海軍作戦を影から支えたロランシステム』 帝国陸海軍補助艦艇―総力戦に必要とされた支援艦艇群の全貌〈歴史群像〉太平洋戦史シリーズ(37) 学習研究社 ISBN 9784056027808 P114
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 測位技術に関する技術変遷とニーズの変遷の相関(案)総合科学技術会議 宇宙開発利用専門調査会 測位分野検討会
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 平成10年版海上保安白書 海上保安庁
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web (for access click on "I have read..." and "Accept")
- ↑ 北西太平洋ロランCチェーンの縮小(南鳥島局の廃止)について 平成21年6月1日 海上保安庁
- ↑ 北西太平洋ロランCチェーンの縮小 (十勝太局の廃止)について 平成24年8月1日 海上保安庁
- ↑ 【海上安全情報】新島ロランC局欠射 平成24年06月19日 第三管区海上保安本部
- ↑ 台風4号による新島ロランC局空中線被害状況 平成24年8月31日 千葉ロランセンター
- ↑ 千葉ロランセンターのホームページ 平成25年11月7日閲覧
- ↑ 新島局の廃止について 平成25年8月1日 海上保安庁
- ↑ 慶佐次ロランC局の廃止について 平成26年8月1日 海上保安庁
- ↑ http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8533157.stm
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ http://www.aviationtoday.com/av/commercial/GPS-Backup-Is-eLoran-the-Answer_76148.html テンプレート:Date=April 2012
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ Nautilus International Newspaper August 2013