IEEE 1394
IEEE 1394(アイトリプルイーいちさんきゅうよん)はAV機器やコンピュータを接続する高速シリアルバス規格である。アップルが開発し提唱したFireWire(ファイアワイアもしくはファイヤーワイヤー)規格を標準化したもの。 一時は、企業向けに普及しているSCSIの発展形(シリアル化・ホットスワップ化)として期待されたが、規格制定に手間取り、規格化された時にはSCSIはLVD化により性能を飛躍的に向上させており、代替となるには速度面で能力不足であった為、ビデオ・オーディオ分野やコンシューマでの普及が中心となった。同時に64台の機器を同一ネットワーク上に接続でき、初期は100Mbps、200Mbps、400Mbpsという通信速度で策定され、のちには3200Mbpsに拡張された。
目次
特徴
その性格上、様々なデータをやりとりできるため、FireWire、i.LINK(アイリンク)、DV端子などの複数の名称が使われるようになった。
FireWireは開発者のアップルが使用していた開発コードネームであったが、2002年5月29日に商標化した。これを、正式にIEEE 1394の統一ブランドとして採用することがIEEE 1394の推進団体である 1394 Trade Association から発表されている。
一方ソニーは、FireWireがIEEE 1394の統一ブランドとして採用される以前から、自社のデジタルビデオカメラ製品などに搭載したIEEE 1394端子をi.LINKと呼び、同社の商標としている。この呼称はDV端子と共に主に家電製品で使われる名称として一般にも普及した。
仕様
バス上にホスト機器を必要とせず、機器から機器へと接続するだけでデータ転送が可能になっている。そのため、IEEE 1394対応機器はポートを2つ備えている場合が多い。この2基のポートは、片方から送られてくるパケットはリピータとして必ず他方へそのまま再送信することが義務づけられていた。
例えば、パソコンで使用するのであればパソコンのポートからDVDドライブ、DVDのポートからHDDと、数珠繋ぎに接続出来る(デイジーチェーン)。また、リピータハブを用いてツリー状にネットワークを組むことも可能である。ツリーとデイジーチェーンを混在させることもできるが、ネットワークがループバックを形成してしまうことの無いように注意が必要である。また、ケーブルの長さは4.5メートルまでで、機器の接続は63台までという規格になっている。
IEEE 1394では様々なデータをやり取りするため、IEEE 1394が規定するプロトコル上にスタックするプロトコルが用意されている。その中でもSBP2 (Serial Bus Protocol-2) はSCSI-3コマンドをやり取りするためのプロトコルでSCSIで接続できるデバイス(ATAPI、イメージスキャナなど)を扱うことができるようになる。
機器への電源供給(バスパワー)に対応した6ピンコネクタと非対応の4ピンコネクタが存在し、i.LINK、DV端子としては主に4ピンが用いられる。IEEE 1394-1995、IEEE 1394a-2000 など、いくつかのバージョンが存在するが、いずれもほぼ同等の機能をもつ。6ピンコネクタは、8Vから最高33V/1.5Aの強力な電源供給機能を持つが、これらの供給能力はバス上に存在する全ての接続機器の能力に左右される。
接続方法
- デイジーチェーン
- 機器がリピータとなり、パソコンのポートをホストに機器から機器へと直接接続する方式。最大接続台数17(パソコン含む)、機器間のケーブル長4.5mまで、総延長72mまで接続可能
- スター
- パソコンのポート1つに対し1台の機器を接続する方式。機器間のケーブル長4.5mまで
- ツリー
- リピータハブを用いて枝分かれさせながら接続する方式。途中にデイジーチェーンやスター接続も可能。最大接続台数63(パソコン含む)、機器間のケーブル長4.5mまで、ひとつの枝に対し最大17台(パソコン含む)、総延長72mまで接続可能
拡張規格
- IEEE 1394a-2000
- いくつかの点を改良し、あらためて規格として策定したもの。IEEE 1394-1995とほぼ同じ。後述のIEEE 1394bと区別するためFireWire 400とも呼ばれる。
- 工業用途で用いられる場合、単に.a(ドットエー)と呼ばれることもある。
- IEEE 1394b-2002
- FireWire 800とも呼ばれ、現在のところ800Mbpsまでに対応した規格。IEEE 1394aとは上位互換性を持つが、端子の形状がIEEE 1394aの6ピンに対して9ピンとなっており、変換ケーブルが必要となる。
- 工業用途で用いられる場合、単に.b(ドットビー)と呼ばれることもある。
- なお、IEEE 1394の普及促進団体1394 Trade Associationは、2008年2月に3200Mbpsまでの転送速度に対応する拡張仕様 "FireWire S3200" を策定。従来のFireWire800で使用されているケーブルやコネクタがそのまま使用できる。
- IEEE 1394c-2006
- FireWire S800Tとも呼ばれ、物理層としてカテゴリー5に対応したツイストペアケーブルを使用する規格。FireWire 800と同等の機能をもち、転送速度は最大で800Mbps。
特許問題
IEEE 1394は複数の企業にまたがる複数の特許技術が採用されており、当初、その利用には個別にライセンスを受ける必要があった。一方で類似規格であるUSBでは、デバイスの製造には製造者の申請こそ必要なものの、特許使用料自体は無料であった。この事により多くの中小企業が参入の難しいIEEE 1394ではなくUSBを選んだと言われており、USBを用いた玩具など幅広い製品が発売された。
このIEEE 1394に関する複雑な特許問題は、早くから特許を保有する企業群の間でも問題視されており、1999年5月には共同ライセンスプログラムを発表し、1デバイスあたり1ライセンスで25セントの特許料支払いで解決できるようになった。 ただ、1デバイス1ライセンスであるため、1企業1ライセンスと単純なUSBほどの広がりは見せていない。
利用例
コンピュータ周辺機器
- ストレージ
- ハードディスクドライブ
- CD-Rドライブ、DVDドライブ、Blu-ray Discドライブ
- MOドライブ
- メモリーカードリーダー
- IEEE1394フラッシュメモリ
- デジタルオーディオプレーヤー
- オーディオインターフェース
- コンピュータへ音声を取り込み、あるいは出力する際に使用する機器。特に高機能な製品において、多チャンネルのオーディオ信号を低レイテンシで入出力するというシビアな要求から、USBに集約される傾向にある他のPC周辺機器と比較すると大きなニーズを持っている(mLANも参照)。当機器の登場当初は秀でたDTMソフトウェアがほとんどMacintosh用(すなわちFireWire用)であった歴史経緯も、ニーズ残存に無縁ではない。
家庭電化製品
- テレビ受像機
- セットトップボックス
- プレイステーション2 - テレビゲーム機。ただし、SCPH-50000以降の型番では削除されている。
- デジタルビデオカメラ
- BDレコーダー - セットトップボックスと接続することでケーブルテレビのBS・CSのハイビジョン放送の録画が可能になる。
- IEEE 1394ベースの接続規格
- DV端子 - 主にビデオカメラのデジタルビデオ映像
- D-VHS、デジタルチューナー - MPEG-2 TSを伝送
- IP over IEEE 1394 - OSが対応していればLANと同じように使うことができ、さらに端末相互をデイジーチェーンで接続することで、ハブがなくてもネットワークを組むことが可能。
- SBP2 - SCSI ストレージ機器接続
- mLAN - MIDI、オーディオ
- HAVi - 家庭用AV機器の相互接続規格
機器制御・業務用途
- IDB-1394 - 高速車載LAN規格。
- 工業用CCDカメラ - 工業用の場合、通常のIEEE 1394コネクタと異なり、抜け防止のネジ止め機構が付いている。
- スペースシャトル[1]
- F-22 Raptor - 米国空軍の最新鋭戦闘機
- F-35 Lightning II - 最新鋭の統合打撃戦闘機でIEEE 1394b採用[1]
脚注
関連項目
- USB - 競合規格
- Thunderbolt - アップルとインテルが共同開発した事実上の後継規格。アップルはThunderboltからFireWireに変換できるアダプタを発売している。
外部リンク
- 1394 Trade Association(英語)
- アップル FireWire(英語)
- ソニー i.LINK プロダクトインフォメーション
- ヤマハ mLAN mLANcentral(英語)
- FireWire (IEEE-1394) pinout(英語)
- Microsoft サポートオンライン - IEEE 1394 関連の一般的なトラブルシューティング
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