ディーヴォ
ディーヴォ (Devo) はアメリカ合衆国オハイオ州アクロンで1974年に結成されたロックバンド。
目次
概要
1972年、オハイオ州ケント州立大学美術学部の学生だったマーク・マザーズボウとジェラルド・V・キャセールが意気投合して前身となるグループを結成した。そのころふたりはグラフィック・アートの世界に幻滅し、音楽の世界に可能性を見いだそうとしていた。“The Beginning Was The End Knowledge Can Be Eaten”という人文・自然科学の本を読んで影響を受け、その「人間退化論」を音楽のバックボーンにしようと考えた。「Devo」というバンド名は「De-Evolution」の略で、「人間は進化した生き物ではなく、退化した生き物だ」という意味が込められている。
1970年代後半に登場したニュー・ウェイヴ・バンドのうちでも、非常に影響力の強かったバンドである。日本ではクラフトワークとともにテクノ・ポップの成立を語る上で欠かせないバンドであり、のちにはPOLYSICSのようにそっくりなバンドも生まれた。本国アメリカではニルヴァーナ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンといったバンドがカバーしている。
ファーストアルバム発表以降は商業的に苦戦し、『オー・ノー!イッツ・ディーヴォ』では名プロデューサー、ロイ・トーマス・ベイカーを起用、『シャウト』ではサンプリング・シンセを導入してサウンドを深化させたが、レコード会社を満足させるヒットは生めず、1980年代半ば以降は活動が縮小する。
初期
洗濯機などの機械が発するノイズを用いた、その極めて実験的かつ前衛的なスタイルで、ノイズ・ミュージックの先駆けとされているが、当初はキャンパス内で開いた発表会で、ビール瓶を投げつけられるほどの不評を買った。しかし、1975年の“The Truth About De-evolution”がアナーバー映画祭により、その評価は見直された。
1974年、音楽によるコミュニケーションをより効果的にするには既存のロックの形式を採り入れるしかないと考え、ジェリーとマークは各々の弟をボブ1号とボブ2号と名づけて加入させ、さらにドラマーのアランを加えて結成された。
初期の活動についてマークは、次のように語っている。
現在
1990年、8枚目のアルバムを発表したのち事実上活動を停止。しかしその後も散発的に活動は行われた。
2006年、Devoの曲を少年少女のメンバーに歌わせる'Devo 2.0'というグループをサポートし、アルバム"Dev2.0"をリリースした。
2007年、1990年以来となる新曲「Watch Us Work It」を発表。
2010年2月のバンクーバーオリンピックのステージから、テーマカラーを青とし、エナジードームも青くなった。6月15日(日本盤は6月23日)、20年ぶりのアルバム「サムシング・フォー・エヴリバディ」を発表。
マーク・マザーズボウは1980年代後半から映画やテレビドラマのサウンドトラックの作曲家として積極的に活動している。
影響を受けたアーティスト
- キャプテン・ビーフハート
- ロキシー・ミュージック(ブライアン・イーノが在籍した初期2枚のアルバム)
- デヴィッド・ボウイ(後にボウイの側から逆に請われ、共にツアーを周った。この縁で、当時プロデューサーだったブライアン・イーノがデビュー・アルバムも担当した)
- イギー・ポップ
- ピート・タウンゼント(ソロ・アルバム)
仲間とされるアーティスト
フォロワーとされる日本人アーティスト
※インタビューなどで当人達より確認出来たもののみ
変名バンドDOVE
1980年M-80 Festivalに“DOVE the band of love”(愛のバンド“ハト”)として登場。平和を希求する偽善者バンドとしてサンバイザーとカジュアルスーツに首から大きなハトのマークが入ったメダルを下げるといった胡散臭い出で立ちで、「忌まわしいDEVOソング」として“It Takes a Worried Man”“Praying Hands”“Shrivel Up”を演奏。またダブニー・コールマン監督の映画Pray TV (1980)にも登場。ここでは“Shrivel Up”を演奏している。
メンバー
現メンバー
- マーク・マザーズボウ Mark Mothersbaugh -ボーカル、ギター、シンセサイザー / DEVOの創立メンバーであり実質的なDEVOのリーダー。彼の苗字は日本では他にも「マザーズバー」「マザーズボー」と訳されることがある。
- ジェラルド・V・キャセール(通称、ジェリー) Gerald V Casale -ベース、ボーカル / 創立メンバーであり、DEVOの宣伝部長。DEVOのPVは彼が手がけている。
- ロバート・マザーズボウ(通称、ボブ1号) Robert Mothersbaugh(BOB1) -ギター、ボーカル / マークの弟。
- ロバート・キャセール(通称、ボブ2号) Robert Casale(BOB2) (1952年7月14日 - 2014年2月17日) -ギター、シンセサイザー / ジェリーの弟。2014年2月17日、心不全により死去。
- ジョシュ・フリーズ Josh Freese-ドラム 1995年加入
元メンバー
- アラン・マイヤース Alan Myers -ドラム 1985年脱退 / 元ジャズドラマー。2013年6月24日、胃癌のため死去。
- デビット・ケンドリック Devid Kendrick -ドラム 1986年加入 / 元スパークス 1990年に脱退しているが、一時的に加入したりするなど関係は継続している。
- ジム・マザーズボウ(通称、ジャングルジム) Jim Mothersbaugh-パーカッション 1976年脱退 / マークとボブ1号の弟で自作パーカッションで参加。「SECRET AGANT MEN」のPVでパーカッションを叩いているのが彼である。脱退後はツアーのエンジニア兼マネージャーを行った後にローランド社に入社しMidi規格の確立に尽力している。
キャラクター
DEVOにはライブやミュージックビデオ等には退化理論をレクチャーするいくつかのキャラクターが存在する。
- ブージー・ボーイ Booji Boy/DEVOのマスコットキャラクターであり、DEVOの自主レーベル名でもある。日本テレビの24時間テレビ 『愛は地球を救う4』 に出演したことがある。正体は謎とされているが、彼が出ているときはマークが場にいない。
- ジェネラル・ボーイ General Boy/ブージー・ボーイの父で、退化理論をレクチャーするスポークスマン的存在。演じるのはマザーズバー兄弟の実の父親ロバート・マザーズバー・シニア (Robert L Mothersbaugh Sr.)。
- ビューティフル・ミュータント Beautiful Mutant/「Freedom of Choice」 のヴィデオクリップに登場するキャラクター。1963年に米ABCで製作・放映されたSFテレビドラマの名作 『アウター・リミッツ』( "Outer Limits" /日本では翌64年に 『ウルトラ・ゾーン』 なる邦題でOA)に登場した 「100万年後の未来人」 がそのモチーフとなっている(エピソード・タイトルは 「狂った進化」 )。チョコドーナツが大好き。
アイテム
DEVOには彼らの退化理論を表す幾つかのアイテムが存在する。彼らの公式サイトでも購入が可能なものもある。
- エナジー・ドーム Energy Dome/メンバーが被っている赤い段々帽の名称でDEVOアイテムの代表格。これを被る事によって世界中のエネルギーを集める事が出来るがメンバー以外には効果がない。ライヴでは客席に投げられることが多い。白や黒、ゴールド、青とバリエーションがある。
- ニュー・トラディショナリスト・ポンプ New Traditionalist Pomp/アルバム 「New Traditionalists」 のジャケットでメンバーが被っているヘッドギアの名称。ジョン・F・ケネディの髪形を模して作られている。マークもジェリーも数ある退化アイテムの中でこれが一番のお気に入りと口を揃える。スタンダードの黒ポンプのほか赤ポンプ、青ポンプといったバリエーションが存在している。
エピソード
マザーズボウは日本の怪獣映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』を十数回も観たというほどの大ファンで、キップ・ハミルトンが歌う劇中歌「The Words Get Stuck in My Throat」(伊福部昭作曲)を耳で覚えてしまい、カバーまでしている。
アルバム
スタジオアルバム
- 頽廃的美学論 - Q:Are We Not Men? A:We Are DEVO! (1978)
- 生存学未来編 - Duty Now for the Future (1979)
- 欲望心理学 - Freedom of Choice (1980)
- ニュー・トラディショナリスツ - New Traditionalists (1981)
- オー・ノー!イッツ・ディーヴォ - Oh, No! It's Devo (1982)
- シャウト - Shout (1984)
- 以上6作品と「ディーヴォ・ライヴ~退化合唱團巡業記+16」は、2008年に菊池功によるリマスタリングで、紙ジャケット化され再発された。また、7作品をまとめたボックスセットが「ディーヴォ・ボックス」として日本限定発売。
- トータル・ディーヴォ - Total Devo (1988)
- ディーヴォのくいしん坊・万歳 - Smooth Noodle Maps (1990)
- サムシング・フォー・エヴリバディ - Something For Everybody (2010)
ミニアルバム
- Be Stiff-Stiff Records(1976)
- ブライアン・イーノプロデュース以前のTake集
ライブアルバム
- 退化の巡業 - DEV-O Live (1981)
- 退化の改新 - Now It Can Be Told: DEVO at the Palace (1989)
- ディーヴォ・ライヴ~退化合唱團巡業記+16 (2008) - 「退化の巡業」に、ワーナー・ブラザーズ・ミュージック・ショーのプロモーション音源を追加したもの。
ベストアルバム
- EZリスニング・ディスク - E-Z Listening Disc (1987、当初はファンクラブ限定販売のインストゥルメンタル・アルバム)
- ディーヴォ・グレイテスト・ヒッツ - Devo's Greatest Hits (1991)
その他
- Watch Us Work It (2007) - 1990年以来17年越しの新曲。デジタル配信及びEPで発表。
出典
- ミュージックライフ1979年『電子騒音楽隊DEVOは未来音楽のパイオニアだ』
- ミュージックライフ1979年来日直前インタビューinニューヨーク/聞き手、林洋子
- 音楽専科1978年『DEVOは退化する!?』
外部リンク
- Club DEVO - 公式ウェブサイト
- ワーナーミュージック・ジャパン - ディーヴォ