包括的核実験禁止条約
包括的核実験禁止条約(ほうかつてきかくじっけんきんしじょうやく、Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty、略称:CTBT)は、宇宙空間、大気圏内、水中、地下を含むあらゆる空間での核兵器の核実験による爆発、その他の核爆発を禁止する条約である。
1996年9月、国連総会によって採択され、日本は1996年9月に署名、1997年7月に批准した。2012年2月現在で182カ国が署名、157カ国が批准しているが、発効要件国(核兵器保有国を含む44か国)の批准が完了していないため未発効である[1]。
概要
この条約では、あらゆる空間(宇宙空間、大気圏内、水中、地下)における核実験の実施、核爆発を禁止している。これは、部分的核実験禁止条約において禁止されていなかった地下核実験をも禁止対象とする。
採択までの経過
第二次世界大戦終結後、核兵器の保有、開発競争が繰り広げられ、様々な核実験が行われた。しかしながら、核兵器のリスク、残酷さが徐々に明らかになる一方、民衆の反核運動が盛んになり、1955年8月6日には初めての原水爆禁止世界大会が開催されるなど、大きな関心を呼んだ。その後、世界的に核実験反対への動きが見られ始めた。その後、1959年9月、核保有国が主体となってジュネーヴ軍縮会議の前身である、10か国軍縮委員会が設立された。
この軍縮委員会の成果として、1963年8月、アメリカ合衆国、イギリス、ソビエト連邦によって、部分的核実験禁止条約が署名されたが、地下核実験を容認するなど抜け道もあった。
1994年1月、ジュネーヴ軍縮会議は地下核実験の禁止を含む本条約の交渉に入った。交渉は長期にわたって続けられたが、インドなどの反対によって会議での採択には至らなかった。しかし、本条約に対する世界的な支持を背景として、オーストラリアが中心となり、この条約案を国連総会に提出し、1996年9月、圧倒的多数の支持によって採択された。
現状
この条約の発効には1996年6月時点で、ジュネーヴ軍縮会議の構成国であり、かつ国際原子力機関の『世界の動力用原子炉』および『世界の研究用原子炉』に掲載されている44か国すべての批准が必要であると第14条で規定しているが、アメリカ合衆国[2][3](外務省ホームページによると他にイスラエル、イラン、エジプト、中華人民共和国[4]の5か国)が署名のみで批准せず、朝鮮民主主義人民共和国、インド、パキスタンの3か国は署名すらしていない。以上8か国が未批准であるため、2014年現在、発効していない。
当条約によっては禁止されていない、爆発を伴わない臨界前核実験(未臨界核実験)は採択後もアメリカとロシアで繰り返し行われており、核実験そのものは停止されていない。既に技術の蓄積がある核保有国にとってのみ有利な条約との指摘がある。
採択以降、1998年5月、インド、パキスタンが核実験を実施、核保有を宣言した。さらに、朝鮮民主主義人民共和国、イスラエル、イラン、ミャンマーの核保有疑惑など、当条約自体の有名無実化が懸念されている。
脚注
関連項目
- 非核地帯
- 部分的核実験禁止条約(PTBT:Partial Test Ban Treaty)
- 核拡散防止条約
外部リンク
- 包括的核実験禁止条約(外務省)
- 加盟状況テンプレート:En icon - 国連条約局条約データベース
- 包括的核実験禁止条約(CTBT) (原子力百科事典 ATOMICA)
- ↑ 日本外務省ホームページ
- ↑ クリントン政権は1996年9月に署名済みだが、当時共和党が多数派だった上院が批准に反対した。その後ブッシュ政権も核爆発を伴わない「未臨界核爆発」を実施し、世界的な批判を受けた。オバマ大統領は上院に批准を勧めると表明している
- ↑ 2009年4月5日、チェコのプラハで核兵器に関する演説で、核兵器を使用した唯一の核保有国として、米国には行動すべき道義的責任があると述べ、核兵器のない世界に向けた具体的な措置として、ロシアとの戦略兵器削減条約(START2) の交渉、検証可能な核分裂物資生産禁止条約(カットオフ条約)の実現、CTBTの早期発効を目指すことを明らかにした。
- ↑ アメリカと同様、批准に前向きな姿勢を見せている。共同通信2009年9月24日