Apacheソフトウェア財団
テンプレート:基礎情報 非営利団体 Apacheソフトウェア財団(アパッチ ソフトウェアざいだん、英:Apache Software Foundation;以下ASF)は、オープンソースのソフトウェアプロジェクトを支援する団体であり、アメリカ合衆国で登録された非営利団体である。当初はWebサーバソフトウェアであるApache HTTP Server (Apache httpd) の開発のために発足したが、現在は多くのプロジェクトを抱え、ソフトウェアブランドとしてのApacheを保持している。名実ともに世界で成功しているオープンソースソフトウェア・コミュニティの一つである。
目的
定款では次のように規定されている。
- オープンでコラボレイティブなソフトウェア開発プロジェクトのためにハードウェア、コミュニケーション、およびビジネスインフラストラクチャを提供する。
- 会社や個人が寄贈した設備や資金が個人ではなく、公益に使用されることを保証する。
- ASFやそのプロジェクト及びソフトウェア製品に向けられた法的訴訟から個人を保護する。
- Apacheブランドとそのソフトウェア製品の法的権利を保護する。
歴史
1995年当時WebサーバソフトウェアはCERN(ヨーロッパ素粒子物理学研究所)が開発したものとNCSA(アメリカ合衆国国立スーパーコンピュータ応用研究所)が開発したものの二種類があったが、NCSAのものは初めて Common Gateway Interface (CGI、動的なウェブページを実現する機構) を採用するなど、非常に普及していた。にもかかわらず、その後ほとんどメンテナンスが行われなくなり、放置されていた。そこで、何人かの有志が改良とサポートを行うためのグループを作り、自分たちをApache Groupと名付けた。しかし、彼等もその後プロジェクトに興味を失ってしまい、再度放置されかけた。そのため、1999年にユーザの一人だった Brian Behlendorf が自分のサーバを使ってユーザのためのメーリングリストを立ち上げた。これが現在のASFの母体である。
なお、Apacheの名前はネイティブアメリカンのアパッチ族への尊敬の念に由来している。パッチだらけのサーバ「A Patchy Server」が訛ったものだという説は良くできた洒落ではあるが事実ではない[1]。
2008年、マイクロソフトから資金提供を受けることとなり、オープンソース関係者を驚かせた[2]。
設備
ASFは仮想的な組織であり、物理的なオフィスを持たない。ただし、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリア地域の4箇所のコロケーション設備に合計16台のサーバを設置している。
組織
ASFの組織はユーザ、コミッタ、オフィサ、メンバ、及び理事会からなる。
- ユーザ
- メーリングリストの参加者であり、世界中の誰もがなることができる。ASFのプロジェクトで開発されるソフトウェアのソースコードへアクセスできるが書き込み権限はない。
- コミッタ(1127人)
- 特に活発なユーザの中から選ばれる。ソースコードへの書き込み権限があり、apache.orgのメールアドレスを持つ。ASFの意思決定のための選挙権があり、プロジェクトマネージャになることもできる。
- オフィサ(37人)
- コミッタの中からオフィサが選ばれる。トップレベルプロジェクトのような大きなプロジェクトのマネージャは、一人または数人のオフィサが担当する。
- メンバ(47人)
- 活動的なコミッタまたはオフィサから選ばれる。選挙権とともに被選挙権もある。ASFの法律上の正式な一員でもある。
- 理事会
- さらに、メンバのなかから選挙により9人のディレクタと1人のプレジデントが選出され、理事会が構成される。選挙は毎年実施される。
(人数はいずれも2005年10月現在)
なお、ASFの参加者は完全なボランティアであり、ASFからいかなる報酬も受け取っていない。
運営
ASFの運営は理事会によって行われるが、全体の管理監督、マネジメントや知的財産の保護に限られ、技術的な決定や指示をすることはない。技術的な決定は各プロジェクト毎に設置され、一人以上のオフィサが主宰するPMC (Project Management Committee) が行う。また、ASFのコミュニケーションは原則として全てメーリングリストにより行われ、内容は公開され、アーカイブされる。
Apacheライセンス
テンプレート:Main ASFのプロジェクトは、Apacheライセンス (Apache License) の下で行われる。 このライセンスは、BSDライセンスに下記の条項が追加されたものとなっている。
Apache License 2.0では、大幅に変更され、GNU General Public License第3版と互換性を有するようになった。
プロジェクト
ASFではApache HTTP Serverだけでなく様々なソフトウェアが開発されており、トップレベルのプロジェクトだけで54(2007年9月30日現在)に及び、Apacheブランドを構成している。その成果は全てソースコードと共に公開され誰もが無償で利用できる。
- Apache HTTP Server - トップシェアを誇るWebサーバ。
- Apache Ant - ビルドツール
- Apache Beehive - サービス指向アーキテクチャ (SOA)
- Apache Cayenne - オブジェクトリレーショナルマッピングフレームワーク
- Apache Cocoon - XML文書とXSLTスタイルシートをウェブアプリケーションサーバで処理するコンテンツ管理システムの、Javaのフレームワーク
- Apache Commons - Javaのライブラリを集めた集合体。
- Apache DB
- Apache Derby - 100%Pure Javaリレーショナルデータベース管理システム (RDBMS) 。Java SE 6に同梱された。
- Apache Hadoop - 大規模データの分散処理を支えるJavaソフトウェアフレームワーク。
- Apache Jakarta Project - Java向けのライブラリ、アプリケーションフレームワーク等を開発しているプロジェクト。
- Jakarta Cactus - Java ServletアプリケーションをテストするJUnitを拡張したテストツール。
- Jakarta JMeter - 負荷テストツール
- Jakarta ORO - Perl互換正規表現ライブラリ
- Jakarta Torque
- Apache James - 全てJavaで実装されたメールサーバ (メール転送エージェント)
- Apache Pivot - Javaベースのリッチインターネットアプリケーション(RIA)プラットフォーム。
- Apache POI - Microsoft Office 文書ファイルを読み書きするライブラリ。
- Apache Struts - MVCアーキテクチャに基づくウェブアプリケーションのフレームワーク
- Apache Tapestry
- Apache Tomcat - Java Servlet コンテナのリファレンス実装
- Apache Turbine
- Apache Velocity - Java製テンプレートエンジン
- Apache XML - XMLに関連したソフトウェアを開発することなどを目的とするプロジェクト
- Apache Xerces - XMLプロセサ (XMLパーサ)
- Apache Xalan - XSLTスタイルシートおよびXPathの処理系
- Apache XML Graphics - XSL-FOやSVGなどのXML仕様に準拠したデータを視覚的な出力形式に変換するソフトウェアを開発することなどを目的とするプロジェクト
- Apache FOP - XSL-FOの処理系であり、組版を行う
- Apache Batik - SVGで記述されたベクトル画像を、描画、生成、編集するために使うことができる、Javaのライブラリ
- Apache Web Services
- Apache Portable Runtime
- Apache Portals
- Jetspeed - ポータルサイトを構築するJava Servlet
- Apache Excalibur
- Apache Geronimo - Java EEアプリケーションサーバ
- Apache Forrest
- Apache Gump
- Apache Incubator
- Apache Lenya
- Apache Logging
- Apache Maven - プロジェクト管理ツール
- Apache XMLBeans
- Apache Lucene - 検索エンジン
- Apache Roller - ブログソフトウェア
- Apache Wave - コミュニケーションツール
- Apache OpenOffice - オフィススイート(オラクルからソースコードを寄贈され、2012年5月8日のリリースからApache OpenOfficeとなった)[3]
- Apache Flex - リッチインターネットアプリケーションの統合開発環境とクロスプラットフォームでの開発が可能なSDK
脚注
- ↑ Apache Server Frequently Asked Questions No3
- ↑ オープンソースのApacheに資金提供 - ZDNet Japan 2008年7月28日
- ↑ Apache OpenOffice