タカナ

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タカナ高菜、学名:Brassica juncea var. integrifolia)とはアブラナ科越年草で、カラシナの変種。20~60cmほどの丈に成長する。近縁の野菜としてコマツナカツオナなどが知られる。

原産地は中央アジアで、シルクロードを通じて中国から日本に入ってきたといわれている。平安時代の『和名抄』に「タカナ」の記述が見られるため、この頃には既に日本に伝来していたと考えられている。西日本一帯で広く栽培される。江戸菜(えどな)との異称もある。

品種や栽培方法によって変化するが、葉や茎は柔らかく辛味がある。辛みの成分はマスタードなどと同じイソチオシアン酸アリル。主に漬け物として食用される。野沢菜広島菜と共に日本三大漬け菜に数えられる[1]

特に、熊本県阿蘇地方(阿蘇高菜)や福岡県筑後地方(三池高菜)での栽培が盛んで、この地域の高菜漬名物となっている。

食べ方

伝統的に高菜漬として塩漬けにし乳酸発酵させて食べる。のちに発酵させず調味液で浅漬けにしたものも生まれ、後者は「新高菜漬」とも呼ばれる。主にどちらも細かく刻んだのち、好みにより醤油をたらして食べる。細かく刻んだ状態で売られていることも多い。高菜漬を油で炒めた「高菜炒め」も美味だが、乳酸発酵させたものを炒めた場合には独特の臭気があり、この匂いを嫌う人も多い。

その他、高菜漬を具材として炒めた高菜チャーハンや、阿蘇名物の高菜めし、その他近畿地方では、刻まずに葉を広げておにぎりを包んだめはりずしも知られる。めはりずしは新宮駅の名物駅弁として知られる。コンビニでも高菜漬のおにぎりが売られており、酢飯の入った物が売っている場合もある。

高菜漬を鶏の水炊きに刻み入れ、煮込んだ鍋もある。高菜漬の酸味が強く出るため、ポン酢などにつけなくとも美味しく食べられる。唐辛子を加えて同様に漬け込んだ辛子高菜福岡県熊本県の名産品として人気がある。また明太子を加えて漬け込んだ明太高菜は、博多福岡市)の名産品として知られる。

福岡県熊本県豚骨ラーメンを提供する店は、お好みでラーメンにトッピングできる唐辛子を利かせた油いための高菜漬を用意している店も多い。唐辛子と油と高菜の味が薬味になる。

品種

阿蘇高菜

熊本県の阿蘇地方で栽培されている高菜である。平地の高菜に比べると小さめで、しんなりしにくいため漬物作りに向いているという[2]。収穫期は3月中旬から下旬の間で、機械を使わずに一本づつ手で収穫する。その際に茎を手折って収穫する事から、阿蘇では収穫作業を「高菜折り」と呼ぶ[3]

阿蘇の高菜漬けには弱めの塩分で数日間漬けた「新漬け」と強めの塩分で1年ほどつけた「古漬け」があり[3]、新漬けは香りを生かしてご飯のお供などに、古漬けはご飯のお供のほか、油炒めや高菜めしなどの料理に利用される[4]

減反政策の影響で余った農地で高菜を作り、高菜漬けを積極的に売り込んだことがきっかけで近年では「阿蘇の味」として定着し、現在では高菜漬けは海外にも出荷されている[4]

三池高菜

主に福岡県の筑後地方南部で栽培されている品種。同県大牟田市の三池山で栽培されていたことからこの名がある[1]。紫色の入った大きな葉と厚い葉脈が特徴で、その高さは1メートルにも達することがある。種は秋まきで、春に収穫する[1]

柳川藩主であった立花氏明治時代になって柳川市三橋町に創設した「旧立花家農事試験場」で改良された品種で、中国の四川青菜と在来種の紫高菜を掛け合わせたものである[1]

大牟田市が発祥といわれる高菜の油炒め三池炭鉱の労働者たちに愛され、現在でも地元で愛されている[1]

雲仙こぶ高菜

長崎県雲仙市吾妻町で栽培されている品種[5]。茎に小さな突起があるのが特徴で[5]、苦みが少ないことからサラダなどにして生食する事も可能である[6]

中国から引き揚げてきた同市出身のMが種を持ち帰り栽培を始めたのが始まりで、いったんは雲仙から全国に広まったものの、三池高菜におされた事や、元々収穫量が少ないために次第に作られなくなっていった[5]。しかし、地元の野菜を復活させようと2002年に地元の生産者や行政などで作る「雲仙こぶ高菜再生プロジェクトチーム」が結成され、現在は10件ほどの農家が栽培している[5]

また、雲仙こぶ高菜はイタリアの「スローフード協会国際本部」が最も希少価値が高い食材に贈っている「プレシディオ」(食の砦)の認定を日本の食材では初めて受けている[6]

脚注

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参考文献

  • 豊田謙二監修 『九州宝御膳物語 おいしい郷土料理大事典』、西日本新聞社、2006年
  • 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 豊田(2006):96ページ
  • 豊田(2006):135ページ
  • 3.0 3.1 テンプレート:Cite web
  • 4.0 4.1 豊田(2006):54ページ
  • 5.0 5.1 5.2 5.3 豊田(2006):123ページ
  • 6.0 6.1 テンプレート:Cite web