非ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫(ひホジキンリンパしゅ、テンプレート:Lang-en-short、NHL)は、ホジキンリンパ腫(ホジキン病)以外の全ての多様な悪性リンパ腫を含む一群である。
和訳はやや無理やりで、医療現場では通常英語名を使用する。日本では、びまん性大細胞型 (diffuse large cell type) が圧倒的に多い。日本ではホジキン病は少ないため、悪性リンパ腫の多くがこのびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 diffuse large B cell lymphoma である。
分類
非ホジキンリンパ腫は、現在もっとも広く用いられている分類であるREAL/WHO分類によると以下のような疾患を含む(2004年6月現在: 今後新しい分類が提案される可能性は大いにある)。
- B細胞リンパ腫
- 前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫/白血病 Precursor B-lymphoblastic leukemia/lymphoma(B-LBL)
- 慢性Bリンパ球性白血病Chronic lymphocytic leukemia(B-CLL)/小リンパ球性リンパ腫Small lymphocytic lymphoma(B-SLL)/前駆細胞性白血病Prolymphocytic leukemia (B-PLL)
- Lymphoplasmacytoid lymphoma
- 辺縁帯B細胞性リンパ腫 Marginal zone B cell lymphoma
- リンパ節性 nodal
- 節外性MALT(粘膜関連リンパ組織)型 extranodal MALT type|MALTリンパ腫
- 脾原発 Splenic
- ヘアリーセル白血病 Hairly cell leukemia
- 濾胞性リンパ腫 Follicular center lymphoma
- マントル細胞リンパ腫 Mantle cell lymphoma
- 形質細胞腫/形質細胞性骨髄腫 Plasmacytoma/ Plasma Cell myeloma
- びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 Diffuse large B cell lymphoma
- 原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫 Primary mediastinal large B cell lymphoma
- バーキットリンパ腫 Burkitt's lymphoma ... t(8;14)転座、c-myc/IGH遺伝子の変化がみられることがある。進行が速いが抗がん剤感受性も高いため早期発見が重要である。
- T細胞リンパ腫
- 前駆T細胞リンパ芽球性リンパ腫/白血病 Precursor T cell lymphoblastic lymphoma/leukemia (T-LBL)
- 慢性Tリンパ球性白血病/前駆リンパ球性白血病 T cell chronic lymphocytic leukemia/ T-Prolymphocytic lymphoma (T-PLL)
- 大顆粒T細胞性白血病 T-Cell Large Granular Lymphocyte Leukemia (T-LGL)
- 大顆粒NK細胞性白血病 NK-Cell Large Granular Lymphocyte Leukemia (NK-LGL)
- 分類不能末梢性T細胞リンパ腫 Unspecified periferal T-Cell lymphoma
- 血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫 Angioimmunoblastic T-Cell Lymphoma
- 血管中心性リンパ腫 Angiocentric Lymphoma
- 腸管T細胞性リンパ腫 Intestinal T-Cell Lymphoma
- 成人T細胞性リンパ腫/白血病 Adult T-Cell Lymphoma/Leukemia (ATL/L)
- 未分化大細胞(CD30陽性)リンパ腫 Anaplastic large Cell (CD30+) Lymphoma
- ホジキン様/ホジキン関連未分化大細胞リンパ腫 ALCL Hodgkin's-Like /Hodgkin's-related
- 菌状息肉症 Mycosis fungoides
症状
頸部や鼠径部、脇の下、鼻腔や顎部口腔などのリンパ節が腫大し、腫瘤の特徴は堅く無痛性である(風邪などの急性リンパ節炎の場合は柔らかく有痛性のことが多い)。ただし、1cm程度の肥大であればリンパ腫でなくとも体調などによりしばしば発生するものであり、炎症が軽度な場合や慢性的なリンパ節炎の場合など痛みが軽度かほとんどないことも珍しくないため、かかりつけ医の初期診断はリンパ節炎となることがある。症例によっては腫瘍が出る頃には病期が進行してしまっている場合もある。
詳細は悪性リンパ腫#症状も参照。
検査所見
末梢血は正常または白血化している。
診断
診断は、患部リンパ節を一部摘出する組織生検の判定検査結果により行われる。最初に穿刺細胞診(針で少量だけ採取)を行うこともあるが充分なサンプルを採れず診断に至れないケースも多く、あくまで予備的である。
病期
診断が確定すると、レントゲン撮影、コンピュータ断層撮影 (CT)、PET、骨シンチ、患部および骨髄、髄液などの生検により病期判定および病態の詳細把握を行う。病期分類として国際的統一基準はまだないが、日本ではアメリカで開発されたAnn Arbor分類を用いることが多いと思われる。ホジキン病ほど病期(ステージ)が治療レジメンに影響しない症例もあるが、バーキットリンパ腫(かつては白血病に分類されていた)など進行の速い全身転移性の症例では、レジメン策定から寛解率、寛解後生存率に至るまでひろく影響し、高ステージ判定での予後は不良となりやすい。
治療
- リンパ腫細胞の由来・Stage分類に応じて多剤併用化学療法による治療が行われる。成人と小児では予後も大きく異なり、治療法が異なる。予後が悪いと予測されるものに関しては移植が行われることもある。放射線療法が併用されることもある。
- 成人のdiffuse large B cell lymphomaに対しては、シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンを組み合わせるCHOP療法が行われる。新しい薬であるリツキシマブ(抗CD20マウス=ヒト・キメラ・モノクローナル抗体)を併用することもあるが、テンプレート:要出典。一方イブリツモマブ チウキセタン(イブリツモマブ-イットリウム90)をCHOP療法6クール後に追加すると、奏効率100%, 完全寛解が95%であることが、第II相臨床試験で明らかになった[1]テンプレート:要出典。症例によりテンプレート:要出典。
- 胃のMALTリンパ腫にはヘリコバクター・ピロリ除菌療法が奏効するものもあるという報告がある。
- テンプレート:要出典。
予後
IPI(International Prognostic Index: 国際予後因子)は予後予測因子として有用である。