東北大学金属材料研究所
テンプレート:Infobox 研究所 東北大学金属材料研究所(とうほくだいがくきんぞくざいりょうけんきゅうじょ、英称:Institute for Materials Research, Tohoku University。略称:金研、金属研、IMR)は、東北大学の附置研究所の1つで、全国共同利用研究所でもある。金属に限らず広範な物質・材料に関する研究を、基礎から応用まで幅広く手がけている。本部所在地は、宮城県仙台市青葉区片平2丁目1番1号(〒980-8577)。
概要
1914年(大正3年)の第一次世界大戦の勃発により、物資の輸入が途絶えた日本では、鉄鋼の自給に迫られた。この機に本多光太郎が鉄鋼の研究に乗り出し、東北帝国大学臨時理化学研究所第二部が設置された。設立に当たっては住友財閥から資金の提供を受け[1]、これが後に本多の発明した磁性鋼であるKS鋼、新KS鋼の名称の由来となった(住友家当主「住友吉左衛門」のイニシャル「K・S」から)。 臨時から常設の機関に移行するに当たって名称を「鉄鋼研究所」としたが、本多の発案により3年後には「金属材料研究所」と改称された。
当初の研究領域は鉄鋼に関するものであったが、後に金属全般から非金属まで含めた物質・材料科学全般に広がっている。1919年(大正8年)の金研発足時には3部門であった研究体制はその後順次拡充され、2007年(平成19年)現在では30研究部門、1客員研究部門、1プロジェクト、5附属研究施設を擁する組織となっている。 所属する研究者は大学院理学研究科・工学研究科の教育にも従事しており、その割合はおよそ半々である。このことは本研究所が材料科学の基礎から応用までをカバーし、基礎的な原理を知ることで応用に活用できるという「実学重視」の所風・学風を裏付けている。
世界最大の学術情報サービス会社の米・ISI社(現在のトムソン・ロイターのトムソン・サイエンティフィック)が2001年(平成13年)7月17日に発表した研究機関ランキングによると、材料科学分野における世界第1位は東北大学であった(過去10年間における論文引用件数を基準)。2006年(平成18年)4月の発表では、マックスプランク研究所に続いて東北大学は2位。これらの結果は、材料科学分野の研究者別で論文引用件数の世界第1位である元・金研所長の井上明久(第20代東北大学総長)を初めとした金研の寄与分が大きく、世界の最先端の研究所の1つとなっている。
なお、2001年(平成13年)4月1日からは教官に任期制が導入され、競争原理が促進された。
全国共同利用
1987年(昭和62年)、金研は、東北大学の附置研究所のまま全国共同利用研究所へと改組された。 東北大学の附置研究所の内、全国共同利用型附置研究所となっているのは、金研と東北大学電気通信研究所の2つ。「国立大学附置研究所・センター長会議」において、全国共同利用とされている大学附置研究所は、全国に40ほどある。
組織
- 研究部
- 材料物性研究部
- 研究部門[2]:金属物性論、結晶物理学、磁気物理学、量子表面界面科学、低温物理学、低温電子物性学、量子ビーム金属物理学
- 材料設計研究部
- 研究部門[3]:結晶欠陥物性学、金属組織制御学、計算材料学、材料照射工学、原子力材料物性学、原子力材料工学、電子材料物性学
- 物質創製研究部
- 研究部門[4]:ランダム構造物質学、生体材料学、錯体物性化学、非平衡物質工学、磁性材料学、結晶材料化学、水素機能材料工学、先端結晶工学研究部
- 材料プロセス・評価研究部
- 研究部門[5]:複合機能材料学、加工プロセス工学、アクチノイド物質科学、不定比化合物材料学、分析科学
- プロジェクト
- 特異構造金属・無機融合高機能材料開発共同研究プロジェクト
- 大阪大学接合科学研究所、東京工業大学応用セラミックス研究所、名古屋大学エコトピア科学研究所、早稲田大学ナノ理工研究機構、東京医科歯科大学生体材料工学研究所と共同研究を行う組織
- HPCI戦略プログラム計算材料科学研究拠点[6]
- 特異構造金属・無機融合高機能材料開発共同研究プロジェクト
- 材料物性研究部
- 附属研究施設・共同研究センター
- 量子エネルギー材料科学国際研究センター
- 日本原子力研究開発機構の持つ材料試験炉JMTRや高速実験炉常陽を利用するために大洗町の日本原子力開発機構大洗研究開発センター構内に設置されている。
- 新素材共同研究開発センター[7]
- 開発研究部
- ミクロ組織制御材料合成研究部、ナノ構造制御機能材料研究部、バルク結晶構造制御材料研究部、材料設計研究部
- 応用研究部
- 金属ガラス研究部、次世代素材研究部
- 産学共同研究部
- 研究ステーション
- 物質合成ステーション、性能評価ステーション、結晶作製ステーション
- 開発研究部
- 強磁場超伝導材料研究センター
- 関西センター
- 計算材料学センター[9]
- 国際共同研究センター(ICC-IMR)[10]
- 量子エネルギー材料科学国際研究センター
- 研究センター[11]
- 低炭素社会基盤材料融合研究センター
- 中性子物質材料研究センター
- 超低損失ナノ結晶軟磁性材料研究開発センター
- 研究支援組織
- 低温物質科学実験室
- 材料分析研究コア
- 情報企画室
- 広報班
- 点検評価情報DB担当
- 情報班ネットワーク担当
- 安全衛生管理室
- 図書室
- 学生支援室
- テクニカルセンター
- 企画調整室、マテリアル開発技術室、特殊環境技術室、基盤技術室がある。スタッフは、量子エネルギー材料科学国際研究センター、新素材共同研究開発センター、強磁場超伝導材料研究センター、計算材料学センター、材料分析研究コア、中性子物質材料研究センター東海分室、アルファ放射体実験室、情報企画室などの所内組織、また一部は極低温科学センター、先端電子顕微鏡センター等の所外組織にも出向し、研究を支援している。
- 事務部
海外拠点
金研が中心となって設置された東北大学の海外拠点は、International Frontier Center for Advanced Materials (IFCAM) との名称が付いている。
- IFCAM Stockholm Office - スウェーデン王立工科大学(材料科学科)内
- IFCAM Cambridge Office - ケンブリッジ大学(金属冶金学科)内
- IFCAM Harvard Office - ハーバード大学(理工学部)内
- IFCAM Stanford Office - スタンフォード大学(ジボール先端材料科学研究所)内
- IFCAM Beijing Office - 中国科学院物理学研究所(表面物理国家重点実験室)内
流体科学研究所が中心となって設置された東北大学の海外拠点である「東北大学リエゾンオフィス」の内、以下のものに金研の海外拠点も入っている。
- 東北大学リエゾンオフィス
- モスクワ国立大学(物理学部)内
沿革
論文検索などの便宜のため、日本語と英語の正式名称を記載する。英称については、「東北帝国大学」「東北大学」の部分を省略して記載。
- 1916年(大正5年)4月1日 「東北帝国大学理科大学臨時理化学研究所第2部」として発足(研究主任:本多光太郎)。英称:the 2nd Division of the Provisional Institute of Physical and Chemical Research
- 1919年(大正8年)5月21日 「東北帝国大学附属鉄鋼研究所」として設置(東北帝国大学官制改正により制度化)。英称:the Iron and Steel Research Institute (ISRI)。
- 1922年(大正11年)8月8日 「東北帝国大学金属材料研究所」として設置(金属材料研究所官制制定により、東北帝国大学に附置)。英称:the Research Institute for Iron, Steel and Other Metals (RIISOM)。
- 1947年(昭和22年) 「東北大学金属材料研究所」と改称。
- 1987年(昭和62年)5月21日 全国共同利用研究所に改組。日本語の正式名称は変更なし。英語の正式名称のみ変更。英称:lnstitute for Materials Research (lMR)。
脚注
関連項目
外部リンク
- 東北大学金属材料研究所
- 国立大学附置研究所・センター長会議(全国共同利用研究所の一覧)
- 仙台NEW 第9号の記事
- ↑ テンプレート:PDFlink(日本政策投資銀行・スタンフォード大学共同調査)P.19
- ↑ [1] 研究所ホームページの組織一覧には記載がないが、「東北大学金属材料研究所規程」によると、客員研究部門として「材質制御学」がある。
- ↑ [2] 研究所ホームページの組織一覧には記載がないが、「東北大学金属材料研究所規程」によると、客員研究部門として「材料設計学」がある。
- ↑ [3] 「東北大学金属材料研究所規程」には、「先端結晶工学研究部」の記載はない。
- ↑ [4] 研究所ホームページの組織一覧には記載がないが、「東北大学金属材料研究所規程」によると、客員研究部門として「材料プロセス評価学」がある。
- ↑ 「東北大学金属材料研究所規程」には、HPCI戦略プログラム計算材料科学研究拠点に関する項目はない。
- ↑ 組織構成は、新素材共同研究開発センターのホームページにある「組織図」による。なお、2013年4日施行の「東北大学金属材料研究所附属新素材共同研究開発センター内規」では、研究部として、ミクロ組織制御材料合成研究部、ナノ構造制御機能材料研究部、バルク結晶構造制御材料研究部、材料設計研究部の4つが記載されているのみである。「組織図」によると、これら4研究部には新素材共同研究開発センター専任の教員がいる。
- ↑ [5] なお、2011年4月1日施行の「東北大学金属材料研究所附属研究施設関西センター組織運営内規」によると、研究分野は、環境・エネルギー材料分野、次世代機能材料分野、低炭素社会基盤構造材料分野、ナノ組織制御材料創成分野、応用生体材料分野、革新的グリーン材料設計分野、先端分析技術応用分野となっている。
- ↑ 「東北大学金属材料研究所規程」には、計算材料学センターに関する項目はない。
- ↑ 「東北大学金属材料研究所規程」には、国際共同研究センターに関する項目はない。
- ↑ 「東北大学金属材料研究所規程」には、低炭素社会基盤材料融合研究センター、中性子物質材料研究センター、超低損失ナノ結晶軟磁性材料研究開発センターに関する項目はない。