謝肉祭 (シューマン)
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テンプレート:Portal クラシック音楽 『謝肉祭』(しゃにくさい、Carnaval )作品9は、ドイツの作曲家ロベルト・シューマンが1834年から1835年に作曲したピアノ曲集。『子供の情景』作品15や『クライスレリアーナ』作品16と並ぶ、シューマンの代表的なピアノ曲で、初期の傑作として知られる。全部で20曲からなる。
概要
「4つの音符による面白い情景」(Scéne Mignonnes sur Quatre Notes )の副題がある。実らなかった恋の相手エルネスティーネ・フォン・フリッケンの出身地アッシュ(Aš)のドイツ語表記「ASCH」を音名で表記した、《 As - C - H 》、《 A - Es - C - H 》(「ラ♭ - ド - シ」 、「ラ - ミ♭ - ド - シ」)の音列に基づいており、「前口上」、「ショパン」を除く全ての曲に、これらの音列のいずれかが使用されている。なお、偶然であるが、シューマンの名前にも"ASCH"の文字が含まれている(SCHumAnn)。これらの音名による「暗号」の謎解きは、演奏されない「スフィンクス」で示される。
各々の曲のタイトルはフランス語に拠っており、シューマンの評論に出てくる架空の団体「ダヴィッド同盟」の構成員(フロレスタンとオイゼビウス)や、実在の音楽家(ショパン、パガニーニ)、後に妻となるクララなどが登場する。
献呈
ポーランドのヴァイオリニスト、カルル・リピンスキー(Charles Lipinski、1790年 - 1861年)に献呈された。
演奏時間
- 約24分
曲の構成
- 1.Préambule. 前口上
- 変イ長調 Quasi maestoso. - Piu mosso. - Presto. 3/4
- 非常に堂々としたEs-F音の主題と不安をあおる中間部からなる。
- 2.Pierrot. ピエロ
- 変ホ長調 Moderato. 2/4
- 3.Arlequin. 道化役者(アルルカン)
- 変ロ長調 Vivo. 3/4
- 4.Valse noble. 高貴なワルツ
- 変ロ長調 Un poco maestoso. 3/4
- 5.Eusebius. オイゼビウス
- 変ホ長調 Adagio. - Piu lento. 2/4
- 七連符が特徴的。
- 7.Coquette. コケット
- 変ロ長調 Vivo. 3/4拍子
- 8.Réplique. 返事(応答)
- ト短調 L'istesso tempo. 3/4
- (Sphinxes. スフィンクス)
- 《 Es - C - H - A 》 《 As - C - H 》 《 A - Es - C - H 》の音を順番に長く伸ばす。
- 「演奏するには当たらない」と書かれているが、実際に演奏されることも多い。その際にピアニストによって音符の追加が行われることがある(ラフマニノフなど)。
- 9.Papillons. 蝶々
- 変ロ長調 Prestissimo. 2/4
- 10.A.S.C.H. - S.C.H.A. (Lettres dansantes) 躍る文字
- 変ホ長調 Presto. 3/4
- 13.Estrella. エストレラ
- ヘ短調 Con affetto. - Piu presto. - Tempo I. 3/4
- 「エストレラ」とはエルネスティーネのことである。
- 14.Reconnaissance. 回り逢い(再会)
- 変イ長調 Animato. 2/4
- 15.Pantalon et colombine. パンタロンとコロンビーヌ
- ヘ短調 Presto. - Meno Presto. - Tempo I. 2/4
- INTERMEZZO. (Paganini.) 間奏曲(パガニーニ)
- ヘ短調 Presto. - Tempo I., ma piu vivo. 2/4
- 「ワルツ・アルマンド」の中間部である。跳躍が多く、演奏困難な曲。
- 17.Aveu. 告白
- ヘ短調 Prestissimo. 2/4
- 18.Promenade. プロムナード
- 変ニ長調 Comodo. 3/4
- 19.Pause. 休憩(休息)
- 変イ長調 Vivo. 3/4
- 「前口上」の再現が行われ、アタッカで次の曲に入る。
- 20.Marche des "Davidsbündler" contre les Philistin. フィリシテ人と闘う「ダヴィッド同盟」の行進
- 変イ長調 Non Allegro. 3/4 - 変ホ長調 Molto piu vivo. - Animato. - Vivo. - 変イ長調 - Animato molto. - Vivo. - Piu stretto.
- 「行進」というタイトルにも関わらず3/4拍子である。「フィリシテ人」とは『旧約聖書』に登場するペリシテ人のことであり、シューマンは音楽上の「俗物」「守旧派」の意味で用いている。これに対し、「ダヴィッド」同盟は、ペリシテ人の巨人ゴリアテを倒した「ダヴィデ王」に因んでいる。フィリシテ人のテーマは「17世紀の旋律」と題され、低音部に現れる。これは『パピヨン』作品2にも登場するテーマである。