総トリハロメタン
テンプレート:出典の明記 総トリハロメタン (Trihalomethane、THM) は、メタンを構成する4つの水素原子のうち3つがハロゲンに置換した化合物の総称であり、溶媒や溶剤として利用されている。代表的なものにクロロホルム (CHCl3) がある。
代表的な総トリハロメタン
組成式 | IUPAC名 | CAS登録番号 | 慣用名 | 別名 | 分子 |
---|---|---|---|---|---|
CHF3 | トリフルオロメタン | 75-46-7 | フルオロホルム | フロン23、R-23、HFC-23 | Fluoroform |
CHClF2 | クロロジフルオロメタン | 75-45-6 | クロロジフルオロメタン | R-22、HCFC-22 | Chlorodifluoromethane |
CHCl3 | トリクロロメタン | 67-66-3 | クロロホルム | Chloroform | |
CHBrCl2 | ブロモジクロロメタン | 75-27-4 | ブロモジクロロメタン | BDCM | Bromodichloromethane |
CHBr2Cl | ジブロモクロロメタン | 124-48-1 | ジブロモクロロメタン | CDBM | Dibromochloromethane |
CHBr3 | トリブロモメタン | 75-25-2 | ブロモホルム | Bromoform | |
CHI3 | トリヨードメタン | 75-47-8 | ヨードホルム | Iodoform |
健康への影響
総トリハロメタンは発癌性や催奇形性が疑われており、特に水道水中の総トリハロメタンが環境汚染物質として取り上げられることが多い。クロロホルムに関しては肝障害や腎障害を引き起こすことが知られている。
発癌性
総トリハロメタンのうちクロロホルムおよびブロモジクロロメタンについてはIARC(国際がん研究機関)においてGroup 2B(発癌性があるかもしれない物質)として勧告されているが、同じGroup 2Bにはコーヒーや漬物も分類されている。またクロロジフルオロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルムについてはGroup 3(発癌性を分類できない物質)に分類されている。(IARC発がん性リスク一覧参照)
水質基準
水道水中の総トリハロメタンは、浄水場での塩素消毒の際に、水中の有機物の溶存有機物と反応して生成される。オゾンを用いる消毒法ではトリハロメタンの生成量が塩素処理に比べて著しく抑制される。ただし、臭化物イオン存在下では微量のブロモホルムが生成することが知られている。
WHOのガイドライン値
- クロロホルム - 0.2 mg/L
日本
日本の基準は、WHOのガイドラインよりも厳しいものとなっている。
厚生労働省が省令で定めた浄水における水質基準のうち、トリハロメタンに関する項目を以下に掲載する。[1]
- クロロホルム - 0.06 mg/L
- ジブロモクロロメタン - 0.1 mg/L
- ブロモジクロロメタン - 0.03 mg/L
- ブロモホルム - 0.09 mg/L
- 総トリハロメタン - 0.1 mg/L
総トリハロメタンと浄水器
トリハロメタンは、短時間の煮沸でも除去できず、逆に短時間の煮沸はトリハロメタンを増加させるというデータをあげて危険性を煽り、数十万円の浄水器等を売り込む商法が見受けられる。このような浄水器の購入を検討する場合には、次のようなことをよく勘案する必要がある。
- 沸騰直後にはトリハロメタン濃度が一時的に増加するが、3分以上の沸騰により濃度は半減、10分の沸騰でほとんど消滅する。[2]
- 業者が使う検査キットは、厚生労働省の基準をはるかに下回っても危険であるように思わせる可能性が高いこと。
- 上水道水中のトリハロメタンの数値は、既に厚生労働省基準の数分の1以下もしくは測定レベル以下となっているケースが多く、煮沸で数倍に増えたところで人体に大きな影響が出るとは考えにくいこと。
- 人間が日常的に摂取、被曝している物質の中にも発癌性が確認または疑われるものが多数あり、仮にトリハロメタンによるリスクを除去したとしても、それは全体的な健康リスクの一部であること。
- 浄水器カートリッジの供給が途絶え、浄水器の価値が著しく低下する可能性があること。
脚注
- ↑ 日本国 厚生労働省健康局水道課 水道法関連法規等 (2006年7月時点)
- ↑ [1] 水道水やプール水に含まれる トリハロメタンについて 蓬莱茂希 p.14