神経症
神経症(しんけいしょう)とは、精神医学用語で、主に統合失調症や躁うつ病などよりも軽症であり、病因が器質的なものによらない精神疾患のことをさす。軽度のパニック障害や強迫性障害などがこれにあたる。これらはかつて、不安神経症、強迫神経症と呼ばれていたため、総称して神経症と呼ばれていた。現在では精神医学概念としては放棄されている。
概要
19世紀以前において、脳や体に何も異常がないのに精神(神経)が病に冒されたようになる病気をそう呼んでいた。当時はアカデミックの精神医学にしろ町の開業医にしろ、体に異常がないのに体や意識がおかしくなる精神疾患は原因不明と考えられており、このような精神疾患に神経症という名前が当てはめられた。神経症はフロイトが精神分析という方法で神経症の患者を研究していたことが有名である。
しかし最近はDSM-IV-TRやICD10などの記述的な診断基準(病気の原因によってではなく症状によって診断するもの)が主流となっているため、臨床的診断として神経症が使用されることは少なくなった。特に精神医学界では表立って使われてはいない。
神経症の病名が使用されることが少なくなった理由として、記述的な診断基準の台頭に加えて、薬物療法の進歩もあげられる。例えば、かつて強迫神経症と言われていたものは超自我や肛門期固着などで解釈され、心理療法が治療の主体であったが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの薬物が有効である可能性があり、強迫性障害と名を変えた。
また神経症という名称は器質性ではない軽い精神疾患全般に使われる言葉であったため、その拡大された使用法や曖昧な意味が問題となり、DSM-Ⅳ-TRから徐々に使用されなくなったと言われている。
福祉制度
障害年金
原則として障害年金の認定の対象とならないが、臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または躁うつ病に準じて取り扱うことになっている[1]。
注記
なお神経症にあたるドイツ語はノイローゼ(Neurose)であり、日本でも神経症の意味で使うこともあるが、一般の人が「ノイローゼ」と言う場合はもっと広い意味に使われる傾向が強いので注意が必要である。例えば「気分が落ち込んだ」とか「あることに悩んでばかりいる」状態をこの言葉で表現する。