気団
気団(きだん)とは、停滞性の高気圧により、気温や湿度などの性質が水平方向に広い範囲にわたってほぼ一定になり、一つの塊と見なせるようになった状態をいう。1930年にスウェーデンの気象学者であるトール・ベルシェロンが定義し、分類を行った[1]。
概要
多くの気団は、季節の変化に伴って勢力と勢力圏を変える。気団の勢力変化や拡縮によって、それぞれの地域に特有の気候や気象現象が生み出される。広い海洋に発達する気団(など、1年中勢力を維持する気団もあるが、ごく一部に限られる。
気団の多くは高気圧であるが、熱帯収束帯(赤道低圧帯)にできる赤道気団は気圧の低い気団である。
停滞性高気圧は、主に赤道付近の低緯度と両極を取り巻く高緯度の地域で発生する。これらの地域は、水平方向の擾乱が少ないために均質な大気がまとまって存在しやすいため、気団を形成しやすい。
中緯度地域では、ジェット気流の流路付近を中心として大気擾乱が発生し、これが温帯低気圧を発生させて南北の大気を攪拌してしまう。さらに高気圧はジェット気流によって移動性となるため、大規模な気団は存在しない(地域的には、気団とみなせる高気圧圏が季節的に発生する)。
複数の気団が接触すると、前線が生成され、低気圧が発達することがある。
分類
発生場所と、温度、湿度により以下のように分類される。略号はアルファベット2文字で表される。小文字のcは大陸性、小文字のmは海洋性、大文字のAは北極または南極、大文字のPは寒帯、大文字のTは熱帯、大文字のEは赤道を示す。それぞれ、英語での頭文字(大陸=continent、海洋=marinetine、北極=Arctic、寒帯=Polar、熱帯=Tropical、赤道=Equator)が使われている。
大陸性気団は乾燥、海洋性気団は湿潤である。また、北極や南極の気団は非常に低温で、寒帯、熱帯、赤道の順に暖かくなってくる。南極にはcAしか存在せず、そのまわりをmPが取り囲んでいる。(北極には大陸性気団と海洋性気団が存在するが、南極には海洋性気団がない)また、北極海洋性気団も冬季には、海が凍結するために湿度が低くなり、北極大陸性気団とあまり変わらなくなる。しかし、近年では9月を中心に海氷面積が激減しており、北極気団はより湿度が高い気団に変化しているのではないかという指摘もある。
発生場所 | 大陸 (c-) | 海洋 (m-) |
---|---|---|
北極 (-A) | 北極大陸性気団 (cA) | 北極海洋性気団 (mA) |
南極 (-A) | 南極大陸性気団 (cA) | - |
寒帯 (-P) | 寒帯大陸性気団 (cP) | 寒帯海洋性気団 (mP) |
熱帯 (-T) | 熱帯大陸性気団 (cT) | 熱帯海洋性気団 (mT) |
赤道 (-E) | 赤道大陸性気団 (cE) | 赤道海洋性気団 (mE) |
- これに加えて、移流性気団については地表よりも冷たい場合k、暖かい場合wを付けることがある(例:cPk)。
- 古典的なべルシェロンの分類(Bergeron classification)では、赤道を表すEがなく、cTk, cTw, mTk, mTw, cPk, cPw, mPk, mPw, cAk, mAk, mAwの11種類を用いた。
- また、乾燥した上空の気団をS、湿潤なモンスーン性の気団をMとすることがある(H. C. Willett の分類法)。
世界の気団
日本周辺の気団
日本周辺の気団は、1935年に荒川秀俊がベルシェロンの定義・分類法を導入したことにより、分類がなされた[1]。
- オホーツク海気団 - 梅雨前線や秋雨前線の発生の一因となる気団。(寒帯海洋性気団)、mPk。
- 揚子江気団 - 春と秋に、この気団の勢力が日本列島に及ぶと、さわやかな晴天になる。温暖乾燥(熱帯大陸性気団)、cT。
- 小笠原気団 - 蒸し暑い夏の主要因である気団。温暖湿潤(熱帯海洋性気団)、mTw。
- 赤道気団 - 熱帯低気圧(台風)を発生させる気団。高温多湿(赤道海洋性気団)、mE
- シベリア気団 - 日本海側に大雪を降らせる原因の気団(寒帯大陸性気団)、cPk。
脚注
参考文献
- 高橋浩一郎・内田英治・新田尚(1987)『気象学百年史―気象学の近代史を探究する―』第II期 気象学のプロムナード5、東京堂出版、230pp. ISBN 4-490-20115-X
- airmass classification AMS glossary