株主優待
株主優待(かぶぬしゆうたい)は、株式会社が一定数以上の自社の株式を権利確定日に保有していた株主に与える優待制度のこと。略して株優(かぶゆう)と呼ぶこともある。
実施に対する法的な義務は無く、諸外国ではほとんど行われておらず、基本的に日本独自のものであるがアメリカでも希にあり、スターバックスの物が知られる[1]。
海外投資家、海外への優待発送は行われていない。
特徴
所有株数に応じて、優待内容が変わることが多いものの、所有株数に完全比例はせず、概ね名義ごとに付与されるため、零細株主であるほど金銭に換算した利回りが高い。それゆえ個人投資家に人気があり、個人株主を増やしたい企業は積極的に実施している。
企業が個人株主を増やしたい動機には、株式持ち合い解消の受け皿・上場基準の達成・流動性の確保などがある。なお、日本の所得税法においては、給与所得者であって他の株主優待を含むそれら別の収入が20万円を超える場合、雑所得として確定申告が必要である。
信用取引(空買い)で買っていても優待は貰えない。現物株で保有する必要がある。
権利日の翌営業日にあたる権利落ち日には、株主としての権利や配当金額分の価値が実質的に目減りするので、株価が下落する傾向にある。
概要
上場企業の実施数は増加傾向で2012年9月末には1,060社になり、全上場企業のおよそ10社に3社の割合で過去最高となった。[2]会社四季報の巻末には、株主優待を含めた実質配当利回りランキングの表が掲載されている。
権利確定日は通常、決算期末か中間決算期末、あるいはその両方である。日本で一般的な3月決算の企業では、ちょうど中元・歳暮に近い時期に優待が贈られる。
家族名義で株式を購入し名義人数分だけ優待をもらったり、手に入れた優待券(運賃割引券、商品券など)をインターネットオークションや金券ショップで換金する者もいる。企業の想定以上に株主数が増えた結果、優待実施に係るコストが上昇し、優待内容を縮小あるいは廃止する企業が出てきている。また、株式を多く保有する外国人投資家から、株式保有量に比例した配分がなされない優待よりも配当を優先すべきという声が出て、廃止に踏み切った企業も存在する。
海外投資家や投資信託、ファンドは、優待で得た物(特に日本国内でしか使えない金券・割引券)を換金して、配当に比べるとわずかな金額だが利益を出資者に分配している。法人株主も大抵の場合は換金している(ワールドビジネスサテライトの特集より)。
また、無配になった場合でも株主優待は実施する企業も多いので、優待目的に購入する個人投資家も多い。その為、権利確定日、権利落ち日は売買数が増える傾向になる。
長期保有特典を実施し、安定株主を増やそうと実施する企業も近年増加傾向にある。
非公開会社が株主優待を行っている場合もある。スターフライヤーは上場する以前から株主優待割引券(普通運賃の約半額となる株主優待割引運賃を利用できる券が株主に進呈される)を配布していたケースなどが挙げられる。
問題点
- 会社法では株主優待を配当の一種と定める明文の規定がないため、会社法に定める現物配当規制や配当財源規制から潜脱するおそれがある。
- 例えば、配当財源がないのにもかかわらず、株主優待制度を用いて実質的に株主に対して配当(蛸配当)を実施することができる。
- 株主平等原則に反するおそれがある。
- 例えば、「1,000株以上保有する株主に一律に割引券1枚を交付する」と定めた場合、100万株保有する株主も1,000株保有する株主も同じ内容であり、1,000株未満保有する株主は割引券をもらえないため、株主平等原則に反することになる。
これらの問題点については、個人株主作りや自社製品・施設の宣伝等の経営政策上の合理的必要性があり、かつ、優待の程度が軽微であれば、配当規制や株主平等原則には反しないとの見方が多数であり、多くの企業で行われている株主優待制度は有効と解されている。
優待内容
株の保有数に応じて内容が変わることが多い。また、保有期間に応じて内容が変わることもある。
- 自社製品の詰め合わせ(主に食品や日用品の製造業など)。
- 自社のサービスや製品に使える商品券・割引券(クーポン)・無料券(タダ券と俗称される。鉄道会社や航空会社、小売業など主に一般消費者を顧客とする非製造業が多い)。
- 地方企業の場合はその土地の名産品
- 自社とは関係のない汎用的な金券・商品券(一般消費者が顧客対象ではない機械メーカー、素材メーカーなどの業種が多い)。
- 優待品に替えて、社会貢献事業への寄付が選べる会社もある。