有限要素法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:出典の明記 有限要素法(ゆうげんようそほう、テンプレート:Lang-enFEM)は数値解析手法の一つ。解析的に解くことが難しい微分方程式の近似解を数値的に得る方法の一つである。方程式が定義された領域を小領域(要素)に分割し、各小領域における方程式を比較的単純で共通な補間関数で近似する。構造力学分野で発達し、他の分野でも広く使われている手法。その背景となる理論は、関数解析と結びついて、数学的に整然としている[1]

特徴

  • 各小領域内を一次関数で補間(近似空間が元の解空間の部分空間になる場合はある種の射影を求めることになる)した場合、全領域では適切なノルムに対して最良近似であることが示される[2]
  • 線形問題・非線形問題・動的解析など、さまざまな問題に対応できる。これは、近似方程式の作り方や領域形状について、自由度が高いことに起因する。

アルゴリズム

  • 解析対象領域内で成り立つ方程式(ポアソン方程式など)に対してある重み関数の積を施し、それを領域内で積分した弱形式を形成する。
  • 解析領域内部を小さな有限範囲の要素に分割する。一般的に、要素はその境界に節点が配置され、要素内部の物理量は各節点に対応する形状関数と節点の値の積の和として表現される[3]
    有限要素法では非常に多くの要素が定式されており、問題に応じて使い分けられるようになっている。要素数の違いは、近似に用いる多項式の次数や、要素と要素の境界での近似解の連続性による。
  • 解析領域全体の弱形式は積分で表されるので、それぞれの要素内の積分の総和としても表すことができる。つまり、各要素の節点における未知数に対してこの積分を適用することによって、各要素の係数行列(連立一次方程式の左辺行列)を作成する(未知数は変位、速度、圧力など。右辺ベクトルも同時に形成される)。
    実際の問題では要素領域内の積分を解析的に求めるのは難しいので、領域の補間関数の次数に応じてガウス・ルジャンドル法などの数値積分を用いることが多い。
  • 各要素における係数行列の総和を取って領域全体の係数行列を作成し、解を求めることができる。

多くの有限要素法では、陰解法の場合、一次方程式を解くことに帰着される。得られる全体の係数行列は一般に疎行列となる。使用記憶領域の削減と計算速度向上のため、行列のデータ構造には様々な形式が用いられ、その格納形式に対応して効率よく解くソルバーが存在する。たとえば、直接法で解く場合のスカイライン法などが知られている。

形状関数

形状関数とは、節点における物理量(変位など)から要素内の物理量を内挿するために用いられる関数である。たとえば四面体一次要素の場合、4つの頂点に節点i = 1, ... , 4 がとられ、節点i に対する形状関数Ni とそれぞれの点における物理量ui を用いて、要素内の任意の点 p における物理量up

<math>u_p=\sum_{i=1}^{4}N_i u_i=\begin{pmatrix}N_1&N_2&N_3&N_4\end{pmatrix}\begin{pmatrix}u_1\\u_2\\u_3\\u_4\end{pmatrix}</math>

と表される。

形状関数Ni には、

  • 節点i の位置においてNi = 1
  • それ以外の節点位置においてNi = 0

という性質がある。

構造解析分野への応用

複雑な構造物を小さな要素の集合体として、(静的解析の場合)一次方程式に各節点の変位量の境界条件(ディリクレ境界条件ノイマン境界条件等)を代入して解く。

対象の構造に外力が加わって変形する場合などを解析する際に、構造解析には大きく分けて、変位を未知数にとる変位法と応力を未知数にとる応力法があり、有限要素構造解析では変位法が主流である。その理由は、応力法に比べてアルゴリズムが機械的に実行でき、プログラミングに適しているからである。機械設計分野ではCADモデルを用いた解析が浸透している。

その他の分野への応用

構造解析では使用している式に意味づけをしているが、その他の分野では手法として使用することが多い。電子状態計算(→実空間法)・電磁場解析流体解析など、微分方程式で記述されるあらゆる場の問題に適用可能であって、近年ではそれらの連成解析(流体構造連成、電磁場構造解析など)も盛んに研究されている。 また、従来は取扱いが難しかったクラックや大変形問題に対して、格子を用いないメッシュフリー法の研究も行われている。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

  • たとえば、有限要素法によって構成される近似解が属する集合は、元の偏微分方程式の解が属する関数空間の有限次元部分空間となるように構成されることが多い。
  • 補間方法の理論的背景として、ガラーキン法(重みつき残差法の一種)やレイリー・リッツ法(最小ポテンシャル原理)を適用して解を求めるが、両方式は最終的に同じ弱形式に帰着される。
  • したがって、使用する形状関数には一定の制限がある。