月面基地
月面基地(げつめんきち、moon base、またはlunar base)は、月(地球の衛星)の表面に建設される、人間の居住空間を伴ってある程度恒久的な基地のこと。各国の計画やSFを含むフィクション作品に出現する。アポロ計画が成し遂げた月面着陸時から、にわかに現実味を帯びてきたが、その後の宇宙開発計画の縮小・凍結により実現は遠くなった。しかし2000年代に入り再び、世界各国で建設に向けた動きが活発化している。
各国の月面基地計画
各国の宇宙機関・企業により、次のような月面基地の構想・計画が進められている。
アメリカ
アメリカ航空宇宙局 (NASA) は2006年12月、月面基地の建設構想を発表した[1]。この発表に寄れば、2020年までに建設を開始し、2024年頃には長期滞在を可能とするとしている。また、各国の宇宙機関や民間企業にも参加を呼びかけており、ISS同様の国際基地となる見込みであった。建設地としては、月の南極に存在するシャクルトンクレーター付近が最有力地として挙げられていた。前段階として2009年、新型ロケットや月面着陸船を開発するコンステレーション計画を本格的にスタートさせたが、2010年にバラク・オバマ大統領により計画が中止されたため月面基地構想は白紙化された。
ロシア
ロシア連邦宇宙局は2007年8月、2025年までの有人月面着陸と、2028年~2032年の月面基地建設を柱とした、長期計画を発表した[2]。長期計画では、2015年までに新型の宇宙船を開発するともしている。
日本
日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) も2006年7月31日の月周回衛星(SELENE)シンポジウムにて、2020年前後の有人月面着陸と、2030年前後の月面基地建設構想を明らかにしている。この月面基地は定員が2,3人で、居住棟、発電・蓄電システム、研究施設などから構成されるとしている。[3]
その他の国々
中国国家航天局やインド宇宙研究機関なども有人月着陸、月面基地を構想し、調査計画を進めている。
月面基地の構造
月面基地の形状・材質については様々なアイデアが考えられている。以下に、代表的な月面基地の構造を記述する。(月の植民#構造物の項目も参照)
- 円筒型モジュール構造
- 宇宙ステーションのモジュールのような、円筒形のモジュールをつなぎ合わせる構造。使用済みのロケットを再利用することも考えられている。
- インフレータブル構造
- 空気圧で膨らませるドーム状の構造。地球からの運搬コストを削減でき、また容易に大空間を確保することができる。
- コンクリート構造
- 月の土から作成したコンクリートによる構造。コンクリートに必要な材料のうち、水以外は容易に月で入手できるため、同様に運搬コストを削減することができる。
その他、月の地下に存在すると予想される溶岩洞を利用すること等も考えられている。
月面基地建設の有効性
現在、有人宇宙飛行で月に到達するには莫大な費用がかかり、それに対する成果も少ないとして、月探査や惑星探査の場合は無人探査機を用いることが主流となっているが、やはり有人探査の方が成果は高いと考えられている。
月面基地は有人探査を阻む、費用対効果(費用に見合う成果が出せない)問題を解決する為に作られる。月面に有人の基地があれば、月に関する詳細なデータを収集することが出来、さらに他の惑星への有人探査の基地となるため、各国において現在計画されている。
さらに、月面基地が完成し本格的な稼働を始めれば、月への人類の移住が始まり、それに伴う新たな資源採掘が進めば人類のエネルギー問題にも明るい兆しが見える可能性もある。また、月の重力は地球の約6分の1であるため、宇宙ステーションなどの無重量状態とはまた違った実験が出来る可能性がある。
脚注
- ↑ 「NASA構想、2024年に「月面基地」 世界が注目」、産経新聞、2006年12月6日。
- ↑ 「露が月面基地計画、2028年から建設…火星有人飛行も」、読売新聞、2007年9月1日。
- ↑ 「JAXAの有人月探査構想、「2020年に月面着陸、2030年に月面基地建設」」、スラッシュドット(毎日新聞)、2006年8月1日。
関連項目
参考文献
- ISBN 4-7853-8754-8