天かす
天かす(てんかす、天カス、天滓とも書く)とは、天ぷらを揚げる時に生じる揚げかす(天ぷらのカス)のことである。食品廃材として廃棄される一方、揚げ物と同様の風味、油のコク、食感があるため、他の料理の添え物や材料として利用されることもある。
揚げ玉(あげだま)とも呼ばれるが、天かすと揚げ玉では細かな違いがある(違いに関しては後述を参照)。
解説
天ぷらを作る際には、天ぷら種につけた薄力粉と溶き卵と水からなる液状の衣のうち、油に入れる際に種から離れた残り物が「天かす」である。繰り返し天ぷらを揚げる際、天かすを油に残したままだと焦げることから、金網等を使ってすくい取る。天ぷら屋ではこの揚げカスが大量に生じ、またこの天かすは油の酸化がすすみやすく保存に向いていない事から、食品廃材として廃棄することが多い。
他方、料理で料理の一具材として使用するために揚げ玉を作る事は手間がかかる。そうしたことから一定の需要があり、天麩羅屋やそば屋やなどの飲食店、スーパーマーケットや総菜店で揚げ玉が商品として製造販売されることがある。味を良くするために、小エビなど細かい具材を使用して作る商品もある。これらの具専用に作られた揚げ玉をかけそば・かけうどんに載せることで、たぬきそば・たぬきうどんとなる。
そば屋・うどん屋では、タネ物として天ぷらを揚げた際に発生した天かすを利用することはないが、近畿地方、香川県(讃岐地方)を中心に一部のうどん店においては、天ぷらの揚げカスを無料で提供することもあり、これは天ぷら種を載せるより安価である。
「天かす」と「揚げ玉」
2003年度にNHK放送文化研究所が行った調査では、天かすと呼ぶ人が68%、揚げ玉が29%、揚げかすが16%という分布だった。東海地方を含む西日本では「天かす」と呼ぶ人が全国平均より多く、関東・甲信越・北海道では「揚げ玉」と呼ぶ人が全国平均より多いという結果が出ている[1]。東京で揚げ玉という呼称を用いるのは、「天かす」に含まれる「かす」という言葉は「屑」と同義語で「愚劣」を意味する下品な言葉であることを理由とする[2]。
江戸の蕎麦屋にて無料で提供したことは人気となって日本中に広がった。その後の江戸では、これを有料化することになり、そのために小エビや割いたイカを入れて作ることも行われ、名称も「揚げ玉」とされた。そのことから、関東の多くでは「揚げ玉」と呼ばれる。全国的には「揚げ玉」も「天かす」も同じ物品をさすが、食材として用いるため意図的に作ったものを「揚げ玉」とし、副産物として偶発的に作られたものを「天かす」と区別する場合・説も存在する。また製法上の違いから、天ぷらの副産物として生じる天かすが不定形であることが多いのに対し、工場で製造販売される商品は均一な円形のものが一般的となっている。
関東の蕎麦屋では、揚げ玉を「たぬき」として売っているところがある[3] 。
天かす火災
余熱を持った大量の天かすを一ヶ所に固めてゴミ箱などに放置した場合、自然発火してしまう場合がある。周囲が無人の場合火災に直結し、これは天かす火災として知られる。天かすは空気(酸素)に触れる表面積が大きく油の酸化反応が早く進み、また反応熱は固まりの内部からは逃げにくいため、こもった熱によりさらに反応が加速され、温度が油の発火点を超えると発火する。また、大量の熱い天かすは平たい容器などに広げ、水をかけるなどして充分に冷却させてから処分する場合もある[4]。
揚げ玉を食材として用いる料理
- たぬきうどん・たぬきそば
- たぬき丼(揚げ玉を卵とじにする店もある)[5]
- 冷やしたぬきうどん、ぶっかけたぬきそば
- たこ焼き