足場
足場(あしば)は、そこにいるための足を置ける場所のこと。特に、仮りの意味で使うことが多い。たとえば工事に置いて、本来の目的である建造物を作るための作業を行うのに用いるのための簡単な建築物がこれである。比喩的に、本格的な働きを始めるための足がかりになる場を造るのを足場固めといったりする。生物学の分野でも用いる例がある。
工事現場の足場
現在では、足場といえば工事現場などで作業する際に造る仮設の作業床や通路を指す場合が多い。
足場には、枠組足場、単管足場、ブラケット一側足場、くさび緊結式足場、張出し足場、吊り足場、吊り棚足場、丸太足場などがある。足場の組立方として、本足場、一側足場、二側足場、棚足場などがある。建設業の死亡災害の約4割を占める墜落・転落事故を防止する目的で手すり先行工法を厚生労働省が推奨している。
足場の組立は、鳶職の主要な作業内容のひとつ。吊り足場、張出し足場または高さ5m以上の足場の組立解体作業には、技能講習を終了した、足場の組立等作業主任者を選任しなければならない。
建設業における死亡労働災害の原因の一位は転落であるが、この転落は足場からのものが多いことが特徴[1]。
単管足場
- 直径48.6mmの単管と呼ばれる鉄パイプを組み合わせて建てる足場のこと。パイプ同士はクランプ(金具)をかみ合わせ、ボルトを締めて接合する。小規模な工事、作業現場や狭いビル間での足場に用いられることが多い。
- 中国や東南アジア諸国などの建設現場では、かなりの高層建築物でも竹と石油系の結束バンドなどによる単管足場が組まれることが多い。これは風土的な多湿により鉄材のサビが敬遠されるという面もあるが、やはり竹の経費が標準的な6メートルのもので10ドル程度であるのに対し、同じ長さの単管が80ドルであるという金銭的問題がある。費用対効果でいうと軽量で折れにくく使いやすい竹材が使われるが、先進国化していくほど安全面への配慮から、鉄材へシフトしていく傾向がみられる。
丸太足場
- 杉、ヒノキ等の細い間伐材を鉄線(ナマシ番線等)で締め上げて固定する昔ながらの足場の仮設方法のこと。安全性の観点から金属製の足場に取って代わられつつあるが、必要材料が少なくて済むため住宅、低層ビル等の塗装、解体工事にはいまだ使われ続けている。
手すり先行工法
- 転落事故が、足場の床板の組立・解体時に多く生じることに着目したもの。足場の床板の取り付ける前に、一段の上の手すり部分を取り付けて行うこととし、足場の床を取り外す際には、床板を取り外してから手すりを外す作業方法を採るもの。手すりの組立方により、「手すり先送り方式」「手すり据置方式」「手すり先行専用足場方式」の三種類の仮設方法が存在する。国土交通省と農林水産省が2004年度から全ての直轄工事で標準採用とした。
生物学の分野で
生態学で生物が生息する場のことを指す言葉として足場を使う場合がある。必ずしも決まった用語ではない。
生物の生活する面
ほとんどの生物は、他物の面に依存して生活している。
固着性の生物であれば、このことは自明である。たとえば陸上植物は地表に根を下ろし、そこから茎を伸ばして葉を広げる。サンゴやフジツボも岩などの表面に張り付いて生活する。菌類も、基質上に菌糸を伸ばして生活している。その面は、ある生物が占有すれば他の生物には利用不可能になる。したがって、その環境にどのような構造の足場があるかは、生物の多様性に大きな影響を与える。
空中にある電線にクモが網を張るのはよく見かけることであるが、このことはその空間がクモを養い得ることを示している。しかし、電線がなければそのクモはそのような広い空間は利用できなかったはずであり、電線という足場の出現がその空間でのクモの生存を可能にしたと見てよい。類似の例として、ジョロウグモのような大型の網を張るクモの網の枠糸などを足場に小型のクモが網を張る例もある。
このように、多くの生物は他物の表面に依存して生活し、このような足場の存在はその周囲の生物の多様性に大きく影響する。また、それは互いに取り合いになる場合もあり、足場は有限な資源と見なすことができる。
その他
クモが網(円網)を張る際に、粘性のある横糸を張る前に、粘性のない糸で荒い螺旋に糸を張る。これを足場糸といい、蜘蛛はこれを張ったあと、今度はこれに触れながらより目の細かい横糸を張っていく。これが邪魔になって横糸が張れないときには切り捨てる。ジョロウグモでは網の完成後にも足場糸が見られる。
出典
- ↑ 建設労働災害の実情-墜落・転落災害の現状全国仮設安全事業協同組合ホームページ
関連項目
外部リンク
- 日綜産業株式会社 手すり先行工法