微分積分学の基本定理
微分積分学の基本定理(びぶんせきぶんがくのきほんていり、fundamental theorem of calculus)とは、「微分と積分が互いに逆の操作・演算である」 ということを主張する解析学の定理である。微分積分法の基本定理ともいう。ここで「積分」は、リーマン積分のことを指す。
この事実こそ、発見者のニュートンやライプニッツらを微分積分学の創始者たらしめている重要な定理である。
この定理は主に一変数の連続関数など素性の良い関数に対するものである。これを多変数(高次元)の場合に拡張する方法は一つではないが、ベクトル解析におけるストークスの定理はその一例として挙げられるだろう。また、どの程度病的な関数について定理が成り立つのかというのも意味のある疑問であるといえる。
現在では微分積分学の初期に学ぶ基本的な定理であるが、この定理が実際に発見されたのは比較的最近である。この定理が発見されるまでは、微分法と積分法はなんの関連性も無い全く別の計算だと考えられていた。
概要
定理はいくつかの表現のバリエーションがあるが、大体にして以下のように述べられる:
1. f が区間 I 上連続ならば、任意の定数 a ∈ I および I 内を動く変数 x に対して、f の不定積分 テンプレート:Indent は x に関して I 上微分可能で、 テンプレート:Indent が成り立つ。すなわち、G は f の原始関数である。
2. f が区間 I 上微分可能で、導関数 f' = df / dx が可積分であるとき、任意の a, b ∈ I に対して テンプレート:Indent が成り立つ。
3. f が区間 I 上連続ならば、F を f のある原始関数とするとき、 テンプレート:Indent が成り立つ。
1 は積分してから微分するとまったく元に戻ることを、2 は微分して積分すると、高々定数の差を除いてもとの関数が現われることをそれぞれ主張するものである。1 を「第一微分積分学の基本定理」、2 を「第二微分積分学の基本定理」と呼ぶことがある。1 の証明は元の関数が面積の関数の導関数の定義そのものであることを利用し、2 の証明においては平均値の定理(またはロルの定理)を用いる方法が一般に知られている。また、3 の式を特に微分積分学の基本公式といい、これを用いて多くの定積分が計算できる。ただし、2 においては導関数が連続でなくとも成立するので、3 よりも汎用性が高い。なお、リーマン積分以外の積分については(たとえばルベーグ積分など)、別に基本定理が存在する。