山田花子 (漫画家)
テンプレート:Sidebar with collapsible lists 山田 花子(やまだ はなこ、1967年6月10日 - 1992年5月24日)は、日本の漫画家。本名、高市 由美(たかいち ゆみ)。妹の高市真紀は、元・青林堂『ガロ』、現・青林工藝舎『アックス』の編集者。なお、高市真紀も「丸山玉子」名義でイラストや漫画を描いている。
経歴
1967年6月、東京都世田谷区経堂にトロツキストの著述家高市俊皓の長女として生まれる。子供の頃から、動物と絵本作りが好きであった。3歳の時に南多摩郡多摩町(現・多摩市)へ転居。
1974年、市立竜ヶ峰小学校入学。小学生時代は、楳図かずお、小林よしのり、ジョージ秋山、日野日出志、水木しげるらの漫画に熱中。
1980年、市立和田中学校入学。中学2年生の時、いじめが原因で自殺未遂、人間不信になる。いじめは高校時代も続き、「山田花子」としての処女作『神の悪フザケ』のメイン・テーマとなった(もう一つの主要なテーマは、山田の恋愛経験から来る、「恋愛とは、強い者が弱い者を捕獲して、欲望の対象にするものである」である)。
1982年9月に15歳で雑誌『なかよし』のギャグ漫画大賞佳作に入選。翌年5月号からペンネーム裏町かもめ(後に山田ゆうこに改名)で『なかよしDX』にて連載を始める。この頃の漫画は、「いしいひさいち調」の漫画であった。その後、学校生活に馴染めず立川女子高等学校を1年で中退、アルバイトをしながら通信制の高校NHK学園へ編入学。
一方で、根本敬の漫画に傾倒。根本が主催していた「幻の名盤解放同盟」のイベントにもしばしば参加。また、自分で購入できない根本の作品が載っているエロ雑誌は、父親に依頼して購入してもらうほどのめりこんでいた。
また、高杉弾の影響で編集者も志し、大検を取得し、日本デザイン専門学校グラフィックデザイン科に入学する。 同時期に妹の真紀とバンド「グラジオラス」を結成し、ライブハウスに数回出演するなど音楽活動も行っていた。
1987年10月、山田花子のペンネームで『ヤングマガジン』のちばてつや賞佳作入賞(ちばてつやの妻が熱心に推挙したという)。
翌1988年1月号から『ヤングマガジン』で「神の悪フザケ」の連載を始める。
1989年8月、活躍の場をマイナーではあるが、憧れの雑誌であった『月刊漫画ガロ』に移し、連載を始める。またいくつかの雑誌で、漫画やイラストを発表する。
1992年3月4日、24歳の時、統合失調症のため桜ヶ丘記念病院に入院。同年5月23日退院。翌24日、団地の11階から飛び降り自殺。テンプレート:没年齢。
喫茶店でアルバイトをしていたが(その様子は著作内でも見ることが出来る)、注文を覚えられないなどの問題から解雇された。解雇された時には「何とかもう一度雇ってほしい」と懇願し、店を離れようとしなかった。解雇通告後、アルバイト先の最寄駅ホームに放心状態で佇んでいるところを警察に保護されたこともある。
生前はメモ魔であったと言われており、残した日記、メモの多くは死後刊行された「山田花子自殺直前日記」に掲載されており、彼女がどのような葛藤の末、飛び降り自殺をするに至ったかを知ることが出来る。
バラエティ番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』に「全く笑わない女性」として出演した事がある。
刊行本
- 『神の悪フザケ』講談社 1989年5月 ISBN 4061765566
- 『嘆きの天使』青林堂 1990年8月 ISBN 4792602009
- 『花咲ける孤独』青林堂 1993年1月 ISBN 4792602270
- 『神の悪フザケ』改訂版、青林堂 1995年11月 ISBN 4792602610
- 『自殺直前日記』太田出版¥800本、1996年6月 ISBN 4872332814
- 『魂のアソコ』青林堂 1996年7月(限定1000部、箱入り、CDと小冊子付き)
- 『からっぽの世界』青林工藝舎、1998年1月 ISBN 4883790010
- 『自殺直前日記 - 完全版』(『QJブックス』7)、太田出版、1998年10月 ISBN 4872334191
- 『嘆きの天使』青林工藝舎、1999年11月 ISBN 4883790452
- 『定本神の悪フザケ』青林工藝舎 2000年5月 ISBN 488379055X
- 『花咲ける孤独』改訂版、青林工藝舎、2000年9月 ISBN 4883790576
- 『魂のアソコ』改訂版、青林工藝舎、2009年7月 ISBN 4883792935
- 『自殺直前日記 改』鉄人社、2014年2月 ISBN 4904676998
作品の特色
『なかよし』時代の作品は、学校のなかの友達のいない子の人付き合いや、人と話したりする時の悩みや苦しみなどを描いた作品がほとんどで、1-4ページや8ページ位の短編である。「日記まんが」と自称したこれらの漫画群は、漫画家養成専門学校の講師から「ヤマもなければオチもない」と評価されていた。なお、この時代の作品は、かつて1996年に青林堂から限定販売された作品集『魂のアソコ』に収録されている。
『なかよし』時代は丸っこい古典的ギャグマンガ調の画風だが、「神の悪フザケ」などでは荒々しくギクシャクした線に変化しており、作品の内容もより深く人間の心の暗部を掘り返すような方向に進んだ。山田が敬意を抱いていたと言われる“特殊漫画家”の根本敬は「山田花子は実は絵が非常に上手く、どんな絵でも描ける」と評価している。しかし表面的な絵柄の猥雑さやストーリー展開の不条理さなどから、山田の作品の真価を理解できない者も多かったと見られ、漫画家として順風満帆の歩みだったとは言い難い部分もある。
参考図書
- 石川元『隠蔽された障害-マンガ家・山田花子と非言語性LD』、岩波書店、2001年9月、ISBN 4-00-022112-4
- 本書の出版に関しては、石川が「山田花子の評伝」を執筆したいと遺族に伝え、それに応じて遺族が資料を提供した。だが、石川が執筆したのは、「精神医学の研究書」であった。そのため、遺族との間に紛争が生じ、この本は絶版・廃棄処分となった[1]。
- 大泉実成『消えたマンガ家』、太田出版、1996年8月、 ISBN 4-87233-292-X
- 山田花子『からっぽの世界』、青林工藝舎、1998年1月、ISBN 4-88379-001-0
- 山田花子『自殺直前日記-完全版』(『QJブックス』7)、太田出版、1998年10月、ISBN 4-87233-419-1
- 山田花子『嘆きの天使』、青林工藝舎、1999年11月、ISBN 4-88379-045-2
- 山田花子『花咲ける孤独』改訂版、青林工藝舎、2000年9月、ISBN 4-88379-057-6
脚注
外部リンク
- ↑ 『隠蔽された障害』が絶版になった理由 伊藤剛のトカトントニズム