実装
テンプレート:出典の明記 実装(じっそう)とは、「ある構成要素を全体に対して取り付けること(組み立て)」、もしくは「ある機能を実現するための構成要素を具体化すること(実現する作業)」を指す。実際に何を行うかは分野によって異なるが、ある機能を実際に動作する状態に持っていくための最終段の作業である。
動詞的には、「~の機能を実装する」、「ハードウェア/ソフトウェアで実装する」という文で用いられる。名詞的に、「~の実装(implementation)」といった場合、ある機能を実現するモノやプログラム、もしくはある機能を実現するための手法や方式のことを指す。
通常、エレクトロニクスの分野では、電子部品をプリント基板の上に取り付ける(はんだ付けする)作業を実装(アセンブリ)と呼ぶことが多いが、本来の意味は電気的機能を果たすための形態的具現化(packaging)である。ソフトウェアの分野では、プログラムを作成する作業を実装(implement)と呼び、「ある関数を実装する/あるクラスを実装する」などという文で用いられる。実装という言葉は、機械構造分野で使用される機会は少ないが、構造設計と実装は、比較的近い概念を持つものである。
設計と実装
ある機能を実現するという開発過程において、「設計と実装」は対で語られることが多い。どちらも極めて高度な知的作業であるが、機能を実現するための方法や枠組みを決定する抽象的な作業を設計と呼び、その機能を実際に動作させるための具体化作業を実装と呼ぶ。
設計と実装を比べると、設計は機能を実現するための要素と構成について、理論的に矛盾なくあらわす作業であるのに対して、実装は現実の世界で実際に形作ることによって機能を実現することであるから、現実における様々な状況に影響を受ける。そのため、設計に比べて、物理的、コスト的、時間的な影響をより直接的に受ける。
モノを作り出す過程としては、設計は上流、実装は下流に位置する。しかし、現実には、この2つの過程は明確に分離できるわけではなく設計と実装は緊密な関連がある。例えば、モノを実際に作り出すためには、実装時のことも考慮しないと設計はできない(実装上の制約)。逆に、実際に実現する際になって、「実装上の都合」で設計が変更されることもある。
なお、比較的、単純な機能なモノやソフトウェアの場合には、実装と同時に設計を行うこともあるが、現在の大規模開発においては分業が進んでいる。製品開発のモデルの詳細は、ソフトウェア開発方法論のウォーターフォールモデル、コンカレントエンジニアリングなどを参照のこと。
上記、設計と実装という対の概念は、主にソフトウェアの分野で用いられる。ソフトウェア以外の分野では、「設計と製造」のように、実装ではなく製造が用いられることが多い。ソフトウェア以外の分野で、実装という言葉を用いるのは「ある特定の機能を実現する」ことに注目する場合である。
エレクトロニクス分野における実装
実装技術
エレクトロニクスの分野における実装技術は、電子部品をプリント基板にはんだ付けする技術という意味で用いられ、スルーホール実装やSMT(表面実装技術)のことを示す場合が多かった。現在では多様化する電子部品に対し、実装技術もウェハーの状態から最終製品になるまでの電子部品の組み立て技術、具現化全般を意味するようになってきている。実装技術は製品の重量、大きさ、性能、コストや信頼性に大きく影響する。実装技術はさらに高密度実装、高周波実装、高温・低温実装、鉛フリーはんだ、難燃性、長期信頼性、フレキシブル実装、プリンタブル実装など沢山の細かい分野に分かれ、多くの企業や大学が力を入れて研究開発を行っている。
- 高密度実装 集積度向上を目的とした実装技術。特に携帯機器の分野で重要。チップ部品、BGAなどによる小型化、多ピン化とそれにともなう接合技術からなる。はんだ付けによる接合は、小型部品がはんだの表面張力で浮いてしまう「マンハッタン現象」という不良や、隣接するピン同士がはんだでくっついてしまうはんだブリッジ(→ソルダーレジスト)という不良の対策が必須である。さらに小型の機器には超音波接合も多用される。近年は部品を積層して集積度を上げる三次元実装技術が注目されている。
- 高周波実装 情報処理の速度を上げるため、高い周波数の信号を精度良く配線に通すことを目的とした実装技術。特にCPUやメモリの分野で重要。信号の同着性確保、ノイズ対策、不要輻射軽減(→電磁波障害)、電源の品質向上が主な技術となる。
- 高温実装 高温に耐えるための実装技術。特に電力用半導体素子(パワーデバイス)の分野で重要。プラスチックやはんだの融点は300度以下のものが多く、これをいかに向上させるかがポイントとなる。また、基板の熱による反りを抑制する技術や大電流を扱うための配線技術や放熱技術も重要。
- 低温実装 こちらは低温に耐えるための実装ではなく、熱に弱い部品を低い温度で実装するための技術である。特にセンサやディスプレイ、有機半導体の分野で重要。低融点はんだや銀ペーストなどの低温接合材料や、異方性導電フィルム(ACF)などの局所加熱型のプロセスが主要技術。
- 難燃性 エレクトロニクス製品の出火事故を防ぐための技術。かつて紙フェノール基板が多く使われていたころは基板自体の難燃化が大きな課題だったが、近年は難燃材に含まれる環境負荷物質の削減に主眼が移ってきている。
- フレキシブル実装 機器に可撓性を持たせるための実装技術。特にICカードや携帯機器の分野で重要。フレキシブル配線板と、その配線板と部品とをつなぐ接合技術からなる。かつては曲がる配線板と曲がらない部品をどう繋ぐかが主な課題だったが、有機半導体の発達によって部品自体を曲げるという構造も可能になった。
- プリンタブル実装 製造にリソグラフィを用いず、印刷を用いる低コストな実装技術。太陽電池やディスプレイ、有機半導体分野で重要。印刷用の材料開発と印刷機の開発が主な課題。印刷用材料の一部は曲げに対して強い耐性があり、前述のフレキシブル実装とも深い関係がある。
月刊 実装技術
テンプレート:複数の問題 エレクトロニクス実装技術(えれくとろにくすじっそうぎじゅつ)とは、株式会社技術調査会[1]が発行する月刊誌である。 電子回路の設計・製造技術、材料、製造機器の最新情報、企業動向等を紹介している国内唯一の実装技術専門誌で毎月20日発行。創刊は1985年。発行部数は20,000部(2008年2月現在)。 一般書店では販売していない為、株式会社技術調査会に申し込んで購入する。月刊 実装技術
ソフトウェア分野における実装
ソフトウェア分野では、実装とは仕様やアルゴリズムを具体的なプログラミング言語のプログラムとして実現すること、つまり プログラミングである。
オープンなコンピュータ言語やファイルフォーマットなどでは1つの仕様に対して複数の実装が存在しうる。この実装を実装系や処理系とも呼ぶ。定義通り、それぞれの処理系は仕様を満たす動作をしなければならないが、仕様の不備、解釈の違い、バグ、独自の拡張などで挙動が異なる場合も多く、それらは方言として処理系の違いに表れる。そういった違いを除けば処理系は原則として「同じ」と考えられる動作を行い、差違は性能面にのみ現れる。