半導体メモリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

半導体メモリ(はんどうたいメモリ)とは、半導体素子によって構成されたメモリであり、コンピュータに代表されるデジタル情報機器に使用される基本的な記憶素子である。

概要

デジタル情報を扱う各種の電子装置に使用されるメモリー類を大別すると、ハードディスクドライブ (HDD) やDVD/CDのような物理動作を必要とする記憶装置の一群と、物理動作を必要としない半導体メモリを使用した記憶装置に分類できる。今日では回転運動のような物理動作を必要としないメモリは、ほぼすべてが半導体メモリである[1]

半導体メモリは、物理動作を必要とするHDD/BD/DVD/CDのような記憶装置に比べて、高速・高密度・低消費電力・低故障で耐振動性に優れるという特徴がある。微小なサイズではCPU内にある記憶素子はすべて半導体メモリであり、コンピュータの主記憶部分には半導体メモリが使用される。また装置と呼ばれるサイズにおいては、物理動作式の記憶装置が安価に大記憶容量が得られたり記憶媒体が交換可能であったりするために、半導体メモリは極端な大容量化は不得手であるため一部のメモリディスクを除いては、両者はコンピュータ内で住み分けを果たしてきた。21世紀以降は安価になったフラッシュメモリの広がりによって、携帯情報機器等での機構部品を必要とする記憶装置の使用領域まで代替し始めている。

分類

記憶保持方法による分類

揮発性メモリ

電源を切ると記憶情報が失われるものは揮発性メモリ (Volatile Memory) と呼ばれる。通常はRAM(Random Access Memory、ラム)もこの分類に含まれる。

  • SRAM (Static Random Access Memory) : フリップフロップ回路を使ったスタティック型であり、ダイナミック型のようなリフレッシュ動作が不要である。一般的には半導体メモリ中でも読み書き動作が最も高速な種類である。
  • DRAM (Dynamic Random Access Memory) : 微小なコンデンサに情報を電荷の形で蓄え、一定時間ごとにリフレッシュ動作と呼ばれるすべてのコンデンサ内の電荷の再蓄積を行う必要があるため、ダイナミック型と呼ばれる。
    • FPM DRAM (First Page Mode DRAM)
    • EDO DRAM (Extended Data Out DRAM)
    • SDRAM (Synchronous DRAM) / DDR SDRAM (Double Data Rate SDRAM)
    • RDRAM (Rambus DRAM)

DRAMの特殊例として擬似SRAM (Pseudo SRAM, PSRAM) がある[2]

不揮発性メモリ

電源を切っても記憶情報が保持されるものは不揮発性メモリ (Non-Volatile Memory) という。ROM(Read Only Memory、ロム)もこの中に分類される。書き換え可能な不揮発性メモリの多くが、記憶保持動作に伴って記憶素子の劣化を誘発してしまうため、それらは書き換え可能回数に上限が存在する。不揮発といってもそれぞれの原理の違いによって、半永久的に記憶情報が保持できるものと、年単位では記憶情報が失われるものが存在する。

  • マスクROM
  • PROM (Programmable ROM)
  • 強誘電体メモリ (Ferroelectric RAM, FeRAM, FRAM[3])
  • 磁気抵抗メモリ (Magnetoresistive Random Access Memory, MRAM) : MTJ(Magnetic Tunnel Junction、磁気トンネル接合)効果を用いている
  • PRAM (Phase change RAM) : 相変化記録技術を用い、書き込みは素子の熱変化により行う
  • ReRAM (Resistive RAM, RRAM[4]) : 電圧印加によって電気抵抗が大きな変化する。しかしその原理は CMR (Colossal Magneto-Resistance) と呼ばれる効果を用いたもの、酸素イオンの移動による伝導パスの形成、金属のマイグレーション、偏向によるバンドギャップの変化など多岐にわたる。材料ごとに原理が異なるためReRAMとして総括されている。

記憶の書き換え方法による分類

  • ビットやバイト、ワード単位で書き換えが可能なもの = RWM: Read Write Memory
    • DRAM
    • SRAM
    • FeRAM / MRAM / PRAM / ReRAM
  • ブロック単位で消去や書き込みを行なうもの
    • フラッシュメモリ
  • (一般に)消去や書き込みに比較的高い電圧を必要とするもの = PROM (Programmable ROM)
    • OTP PROM (One Time Programable ROM) : 1回限りの書込みが行なえ、書き込み後は消去や書き換えが不能なもの。フューズROMともほぼ同義[5]
    • EPROM : 数百から数千回程度の消去と再書込みが可能なもの
      • UV-EPROM : 中央に空いた窓からチップに紫外線を照射することで消去する。消去後は再書き込み可能。専用の紫外線での消去装置や書き込み装置を必要とする
      • EEPROM : 紫外線を用いずに電気的に消去と書き込みが可能なもの。過去の製品では、消去・書き込みに高い電圧を別途供給する必要があったが、現在ではチップ内部で生成するものがほとんどである。E2PROMとも表記される
  • 書き換え不能なもの
    • マスクROM : 情報内容がフォトマスクと呼ばれる回路パターンにより製造時から固定されていて、後からは変更できないもの。

OTP PROM / UV-EPROMは比較的古い技術になっており、少数の特殊な用途を除けば21世紀現在では使用されることはほとんどない。FeRAM / MRAM / PRAM / ReRAMは比較的新しい技術であり、DRAMやSRAM、フラッシュメモリを代替すべく発展途上である。

記憶のアクセス方法による分類

その他の分類

脚注

テンプレート:Reflist

テンプレート:半導体メモリ

テンプレート:半導体
  1. 古くは磁気コアメモリや真空管式記憶回路のように、物理動作を必要としない半導体以外のメモリ装置も存在していたが、これらは既に実用的ではなくなっている。
  2. 「擬似SRAM」はDRAM回路にリフレッシュ回路などを加えることでSRAMとピン配列や信号を擬似的に互換としたもの。
  3. "FRAM" は米国ラムトロン社の商標である。
  4. "RRAM" はシャープの商標である。
  5. 一度"1"を書き込んだbitは"0"に戻す事は出来ないが、その逆は可能なので追記書き込みアルゴリズムを使う事でメモリを何度か追記する事は可能である。ただし専用の外付け書き込み回路が必要であり、素子自身で追記する事は出来ない。