全懌

全 懌（ぜん えき、生没年不詳）は、中国三国時代の武将。呉に仕えた。全琮の子。全緒・全寄の弟。全呉の兄。従兄に全端。甥に全禕（全輝）・全儀・全静。

全琮の死後、その爵位を継ぎ、兵士を預かった。

257年5月、魏において諸葛誕が反乱を起こすと、孫亮を擁し孫綝はそれを支援するため援軍として、文欽・唐咨・全端ら歩兵と騎兵3万の軍を先行して派遣させた。文欽らは、魏の王基の敷いていた包囲網が完成する前にこれを破って、寿春城に入城した（「諸葛誕伝」・「孫亮伝」・「孫綝伝」）。この軍には全懌ら全一族のほとんどが参加し、全禕・全儀（全緒の子）だけが建業に残っていた（「全琮伝」・「鍾会伝」）。

6月、寿春城には司馬昭の派遣した追討軍が各地から到着し、二重三重に包囲された。頼みであった後続の朱異軍は破られてしまい、9月には孫綝は朱異を斬り撤退してしまった（「諸葛誕伝」・「孫亮伝」・「孫綝伝」）。こうして全懌らは諸葛誕と共に城中に孤立する事になった。

同年11月、全禕・全儀が一族内争いの末に魏に亡命にする事件が勃発した（「孫亮伝」・「鍾会伝」）。魏の鍾会は、彼らを利用して城内の全懌らを降伏させようと、「呉国内では全懌ら援軍の諸将一族を処刑しようとしている」という内容の手紙を書かせて、全懌らの所まで届けさせた。このため全懌らは恐れ慄いたという。

12月、全懌は全端・全静と共に数千人を引き連れて魏に降伏した（「諸葛誕伝」・「孫亮伝」）。全懌は平東将軍・臨湘侯に封じられ、共に降伏した一族も郡太守に任じられたり、列侯に封じられたりした（「全琮伝」）。

小説『三国志演義』では、全端の弟に変えられている。