光過敏性発作

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光過敏性発作(ひかりかびんせいほっさ、テンプレート:Lang-en-short)は、視覚に飛び込んだ刺激に対する異常反応の症状をいう。

歴史

この問題が顕在化したのは、映像技術や映像コンテンツの普及と発達によって、人の視覚が人工的な強い光刺激に晒されるようになってからである。特に20世紀の中頃以降、映画テレビアニメテレビゲームなどの光刺激が、多くの症例を引き起こしている。

これらの症状は一時期「光過敏性癲癇」と呼ばれたものの、光過敏性発作を誘引する原因には光刺激性癲癇(てんかん発作の一種)だけでなくそれ以外の、あるいは複数の要素が関わっている可能性が指摘されている。そのため、てんかんの一種とのみ言い切ることについては疑問が持たれており、今後の研究が待たれる。

発生例

古くは、光刺激性癲癇を採り上げた1946年のW.Grey Walter氏の報告(『ネイチャー』誌に発表)などがある。

その後も、視界の大部分を画面が覆ってしまう映画館での視聴、刺激的な映像が流れやすいテレビCFの視聴、などでのケースが指摘されている。テレビにおける症例は1952年のアメリカでの事例以降、日本を含め多く報告されている[1]。また、テレビゲームによる症例も多数報告されている。

日本国外での例としては1993年イギリスにおいて、カップラーメンのテレビコマーシャルを見た3名が、この種の痙攣発作を起こして病院へ運ばれている。これを受けて、イギリスでは独立テレビジョン委員会およびBBCで防止のためのガイドラインを策定している。

今日において光過敏性発作について代表的な例を挙げるとすれば、テレビアニメ『ポケットモンスター』の放送において1997年12月16日に起こったポケモンショックが有名である。また、この9か月前にNHKで放送された『YAT安心!宇宙旅行』を視聴した児童数名が病院に運ばれた例があり、「この時点で原因が判明しきちんと報道されていればこのような大規模な事態(ポケモンショック)は防げた」と言われている。

それらのアニメやゲームでは、特に幼年層を中心として映像への意識や注意の没入度が非常に高く、画面からほとんど目をそらすこともなく視聴しているため、発作を起こす可能性のある視聴者が光刺激の発生に対し、光過敏性発作を回避することが難しいと見られている。そのため、十分に離れて明るい場所で視聴するよう視聴者に促すことが、多くの国の該当業界におけるガイドラインで定められている。日本国内ではアニメの放送時にテロップなどを表示しているが、NHKと、CBCなど一部を除くTBS系列[2]では行われていない。参考→わかさ生活

日本でも、ゲームメーカー各社では日本国外での光過敏性発作症例を元に1990年代前半より注意が払われていた。テレビ業界の中では、ポケモンショック以降、NHKなどの主導によって放送各局間で前記のようなガイドラインが持たれたが、その対応度合いについては局ごとに若干異なるようではある。特に、テレビ東京では、アニメの製作基準がかなり厳しくなった(参考リンク)。

現在では殆ど見られなくなったが、アーケードのTVゲーム機で映像を表示する方式に「ベクタースキャン」というタイプがあり、眼への負担が大きく、ゲームをプレイして気分を悪くする子供が居た。しかし当時は光過敏性発作などは知られておらず、現在においても廃れてしまったと言える映像表示方式の為、データーは無い。しかし、テレビ記者会見中継などで過剰なフラッシュ撮影による点滅が起こりうる場合もある。

2007年では、映画『バベル』で菊地凛子がクラブで踊る場面で、クラブの照明が1分程度早い点滅を繰り返すシーンがあり、愛知県三重県などの映画館で同映画を見た観客計15人が吐き気などの体調不良を訴えていたことが明らかとなった。このため、同映画を上映している映画館や配給会社では注意を促す文書を配布することとなった。

脚注

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  1. 現代用語の基礎知識1966年版「テレビてんかん」の項
  2. まれに深夜帯でテロップが流れることもあり、その代わり、一部のアニメ番組で「ネット上における不正利用」に関する警告テロップが入る。

関連項目