京都・ハーバード方式

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京都・ハーバード方式(きょうとハーバードほうしき、Harvard-Kyoto Convention, Harvard-Kyoto)とは、ASCII文字のみでデーヴァナーガリーを転写する方法の一つ。

概要

パソコンで直接デーヴァナーガリーを扱えなかった時代、パソコン通信などでサンスクリット文献などを記述する際に利用されていた。

一覧

転写方式にはいくつかのバリエーションがあるが、以下に表で一例を示す。一般的なダイアクリティカルマーク付きラテン文字による転写と比べると、

  • マクロン付き母音文字は、同じ母音文字を二つ重ねて表す。
  • 下に点のある文字は、原則として大文字で表す。
  • 例外として、京都・ハーバード方式での大文字の有声子音文字は、同じ調音部位の鼻音を表す。
  • śaはzaで表す。

のような対応がある。

母音
転写一般的な転写デーヴァナーガリーIPAおおよその発音
aa[ɐ]]]英語 sun の u に近い「ア」
aaā[ɑ]]ː]日本語「アー」に近い
ii[i]「イ」
iiī[iː]「イー」
uu[u]明瞭な「ウ」
uuū[uː]明瞭な「ウー」
R[ɹ̩]「リ」
RR[ɹ̩ː̩]「リー」
L[l̩]「リ」
LL[l̩ː]「リー」、実際には用いない
ee[eː]常に長母音「エー」
aiai[aːi]二重母音「アイ」
oo[oː]常に長母音の「オー」
auau[aːu]二重母音「アウ」
aMaṃअं[ⁿ]鼻母音「アン」[ã]
aHaḥअः[h]母音に後続する無声音の [h] で「ア


子音
転写一般的な転写デーヴァナーガリーIPAおおよその発音
kaka[k]「カ」
khakha[kʰ]帯気音の「カ」
gaga[g]「ガ」
ghagha[gʱ]帯気音の「ガ」
Gaṅa[ŋ]カ行とガ行に先行する「ン」
caca[c]「チャ」
chacha[cʰ]帯気音の「チャ」
jaja[ɟ]「ヂャ」、語頭の「ジャ」
jhajha[ɟʱ]帯気音の「ヂャ」
Jaña[ɲ]「ニャ」
Taṭa[ʈ]そり舌音の「タ」
Thaṭha[ʈʰ]そり舌音で帯気音の「タ」
Daḍa[ɖ]そり舌音の「ダ」
Dhaḍha[ɖʱ]そり舌音で帯気音の「ダ」
Naṇa[ɳ]そり舌音の「ナ」
tata[t̪]「タ」
thatha[t̪ʰ]帯気音の「タ」
dada[d̪]「ダ」
dhadha[d̪ʱ]帯気音の「ダ」
nana[n]「ナ」
papa[p]「パ」
phapha[pʰ]帯気音の「パ」
baba[b]「バ」
bhabha[bʱ]帯気音の「バ」
mama[m]「マ」
yaya[j]「ヤ」
rara[r]「ラ」、語中の「ラ」
lala[l]「ラ」、語頭や n に後続する「ラ」
vava[ʋ]「ワ」もしくは「ヴァ」
zaśa[ɕ]「シャ」
Saṣa[ʂ]そり舌音の「シャ」
sasa[s]「サ」
haha[ɦ]「ハ」

関連項目