二十七宿

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

二十七宿(にじゅうななしゅく)とは、星宿の分割法の一つである。江戸時代初期(1685年)に全廃された。の見かけの通り道である白道を、27のエリアに等分割したものである。名称ももちろんこの数字に由来している。

発祥を完全に異にする二十八宿と区別するため、単に古法という場合がある。

概要

インド占星術天文学でいうナクシャトラである。天体の位置を表すのに使われる。その流れをくむ宿曜道の基本要素となっている。

なお、中国で使われている二十八宿とは発祥が異なるが、大蔵経に含まれる摩登伽経において、下記の通り二十八宿と同じ漢字名が割り振られた。なお、二十八宿にあり二十七宿にはない宿は、牛宿である。

ちなみにこの27という数字は、月の天球に対する公転周期である27.32日に由来する。 一日の間に、月は一つのエリアを通過すると言うわけである。

歴史

古星法の元祖であるインドで、宿曜経智論などが二十七宿に属していた。

日本では平安時代頃より、日本の宣明暦)の暦注の一つであった。江戸幕府天文方渋川春海による貞享2年(1685年)の改暦によって、全廃された。

かわりに取り入れられたのが、中国を起源とする二十八宿である。改暦後の貞享暦は別名を大和暦ともいい、日本人(渋川)が独自で開発した暦法として知られるが、星宿に関しては反対に中国流を取り入れたのである。

明治改暦により、暦注そのものが廃止された。のちに暦の発行が民間に解禁されてからは、二十七宿・二十八宿どちらを使用しても咎められることがなくなっていた。

1941年高野山大学出版部が発行した森田龍遷著『密教占星法』によると、「二十七宿が正当でこちらを使用するべき」といろいろな文献を上げて解説されている。寺院仏閣が発売している多くの暦は、この著書に基づいて二十七宿で記載されていることが多い。

直日決定法

中国(日本)の旧暦太陽太陰暦)における月日がわかれば、自動的に二十七宿が決定される。

中国旧暦9月1日
中国旧暦10月1日
中国旧暦11月1日
中国旧暦12月1日
中国旧暦正月1日
中国旧暦2月1日
中国旧暦3月1日
中国旧暦4月1日
中国旧暦5月1日
中国旧暦6月1日
中国旧暦7月1日
中国旧暦8月1日

各月の朔日の宿は以上の通りであり、あとは日の分だけ進ませれば良い。
なお、同一の月の中では宿をひとつずつ進めていくが、(旧暦で)翌月に移行するときには上表に従うため、宿をジャンプしたり同じ宿が続いたりすることがある。以上の手法は、単に「古法」とも呼ばれることがある。
この二十七宿は歳時記や日常生活にも多く影響を及ぼしている。例えば年末の煤払いを12月13日に行うのは、上表の通り、旧暦12月13日の二十七宿が、よろずのことに吉とされる「鬼」であったからである。の「」の日の暦注下段には鬼宿日(きしゅくび)あるいはきしく日と特記される。鬼宿日は「七箇の善日」の一つである。

ちなみに、インドの暦では必ず以下の対応がある。

満月のとき、月が以下の宿にあると インド暦月日は
クリッティカー クリッティカー月15ティティ
ムリガシラー ムリガシラー月15ティティ
プシャー プシャー月15ティティ
マガー マガー月15ティティ
ウッタラ・パールグニー パールグナ月15ティティ
チトラー チャイトラ月15ティティ
ヴィシャーカー ヴィシャーカー月15ティティ
ジェーシュター ジェーシュター月15ティティ
シュラヴァナ シュラヴァナ月15ティティ
プールヴァ・バードラパダー バードラパダー月15ティティ
アシュヴィニー アシュヴィニー月15ティティ

上の二つの表は、中国旧暦15日が満月である限り(そうなる場合が多い)、全く同じことを言っている。
ティティの15日は必ず満月である。そして

氐日から14日後
心日から14日後
斗日から14日後
虚日から14日後
室日から14日後
奎日から14日後
胃日から14日後<
畢日から14日後
参日から14日後
鬼日から14日後
張日から14日後
角日から14日後<

という関係が必ず成立するからである。なお、チャイトラ月が中国暦の2月に当たる。
インド暦では、シャカ族の暦の伝統を受け継ぐ暦ではチャイトラ月が新年(1月)となるが、すべての地方の暦でそうなっているわけではない。

二十七宿は、インド占星術十二宮と密接な関係がある。ただし、西洋占星術十二宮とは直接の関係はない。だから、西洋占星術の星座をそのまま当てはめてはいけない。ソフトウェアStargazerの宿曜経の実位置モードは、この過ちを犯している。

占い

二十七宿の直日の吉凶と、直日に生まれた人(その宿を本命宿とする人)の性格は以下の通り。

<tr><th>觜宿、鹿首宿
(バラニー)</td><td>舎屋の建造、部屋の内装の整え、結婚、星の災いを除く為の修法などに吉。</td><td>徳行高く慎み深い。薬に頼りがち。普段は無口で、軽はずみな行動はしない。人の為を思い法を重んじる。</td></tr> <tr><th>参宿、生眚宿
(クリティッカー)</td><td>財産を得る事、地面に穴を掘る事、乳製品を造る事や油を搾る事、酒の醸造等に吉。また、あらゆる剛猛の事に吉。</td><td>猛悪。怒りっぽく口が悪い。事を為すにあたっては、決心は固く怯む事が無い。</td></tr> <tr><th>井宿、増財宿
(ローヒニー)</td><td>慈善を行うと良い結果になる。また神を祀る事、結婚・結納に吉。
薬の服用に凶。</td><td>金銭の出入りが激しい。尊敬・称賛を受ける事を好み、立身出世欲が強い。病気がちだが子供には多く恵まれる。軽率で人情味に欠ける面もある。</td></tr> <tr><th>鬼宿、熾盛宿
(ムリガシラー)</td><td>あらゆる事に吉。特に名誉や長寿を求める事、官位を受ける事、宗教への入信や奥義を学ぶ事に吉。</td><td>最も恵まれた生まれ。見た目も端正で心にも邪な所が無い。妻妾に恵まれる。</td></tr> <tr><th>柳宿、不観宿
(アールドラー)</td><td>逆賊の征伐、敵城を攻めるなど、剛猛の事に吉。</td><td>外見は眠たげな顔つきだが、反面内心は強情で怒りっぽく、 人を欺く事がある。施しを好む反面、他人の物を奪う事もある。物事に熱中しやすい。</td></tr> <tr><th>星宿、土地宿
(プナルヴァス)</td><td>建物の修理、種蒔きに吉。ただし五穀の種蒔きには不向き。</td><td>奴僕や家畜、財産に恵まれる。知性的で評判が良いが、悪知恵も働く。神を祀る事を好む。</td></tr> <tr><th>張宿、前徳宿
(プシャー)</td><td>慶事に吉。結婚、住宅の修理、官職を受ける事、衣服を作る事、師僧から奥義を学ぶ事などに吉。</td><td>妻妾は多いが子供は少ない。言葉づかいが巧みで人の心を掴み、人に愛される。自分自身ではあまり財産を築けないが、(相続、暖簾分けなどで)財産を譲り受ける。智恵は回るがあまり実行には移さない。</td></tr> <tr><th>翼宿、北徳宿
(アシュレーシャー)</td><td>あらゆる事に吉。特に不動産・土木、農業などに関する事によい。</td><td>乗り物に乗る事や音楽を好む。言葉遣いは穏やか。</td></tr> <tr><th>軫宿、象宿
(マガー)</td><td>急速の事に吉。また、外国など遠方への旅、衣裳の修理、技芸を学ぶ事、結婚、田畑の開墾などに吉。</td><td>財産を築く。よく旅をし、乗り物に乗る事を好む。性格は嫉妬深い所がある。器用で物事を手際よくこなす。あまり病気はしない。</td></tr> <tr><th>角宿、彩画宿
(プールヴァ・パールグニー)</td><td>晴れがましい事全般に吉。豪華な衣裳を作る事など。また、行軍、観兵式、軍功のあった将兵に褒賞を与える事などに吉。</td><td>教典などをよく学ぶ。動物を多く飼う。手先が器用で人情に厚い。子供は男子三人に恵まれる。</td></tr> <tr><th>亢宿、善元宿
(プールヴァ・パールグニー)</td><td>象や馬など家畜の調教、結婚、交流、種蒔きなどに吉。</td><td>人に先んじ、言葉が巧み。資産を形成し家を繁栄させる。</td></tr> <tr><th>氐宿、善格宿
(ハスタ)</td><td>穀物や果樹の種蒔き、酒の醸造に吉。
建物の増改築、乗り物を動かす事に凶。</td><td>神仏を祀る事を好む。善良で王侯や君主の寵愛を受ける。財産に富む。知性的。</td></tr> <tr><th>房宿、悦可宿
(チトラー)</td><td>結婚などの慶事に吉。また宗教への入信や奥義を学ぶ事に吉。</td><td>威厳がある。子供や財産に多く恵まれ、家を栄えさせる。</td></tr> <tr><th>心宿、尊長宿
(スヴァーティ)</td><td>王侯が物事を行う事に吉。神仏に祈る事や官位を受ける事、象や馬などの家畜を調教したり乗ったりするのに吉。
散財や借金に凶。</td><td>運がよい。多くの人々に愛され、君主に厚遇される。悪を挫き善を奨める性格。</td></tr> <tr><th>尾宿、根元宿
(ヴィシャーカー)</td><td>沐浴や呪術、住宅の修理、薬の調合、入信儀式などに吉。</td><td>食べ物や財産に恵まれる。性格は頑固、闘争を好む所がある。他の人から財産を得る。</td></tr> <tr><th>箕宿、前魚宿
(アヌラーダー)</td><td>池や溝を掘るなど水に関する事に吉。また花や薬草の種蒔き、田畑の修理、酒の醸造に吉。</td><td>商才があり金儲けが得意。利他の精神が有り、他人の為に苦労を厭わない。酒飲みで女好き。やや病気がち。</td></tr> <tr><th>斗宿、北魚宿
(ジェーシュター)</td><td>衣服の新調、木の手入れ、乗り物や武器を造る事、倉庫を建てるなど不動産に関する事に吉。</td><td>乗馬や野山を行く事を好む。また、神仏を祀ったり願い事をするのを好む。善き友に恵まれる。器用で才能があり金持ち。</td></tr> <tr><th>女宿、沙栴宿、耳聡宿
(ムーラ)</td><td>公共事業など公の事に吉。また、技芸を学ぶ事、髪を整える事、按摩などに吉。
衣服の新調に大凶、死に至る場合もあるとされる。また、争いごとに凶。</td><td>病気になりにくく健康に恵まれる。施しを好み、法と秩序を重んじ勤勉。祖先を敬う。</td></tr> <tr><th>虚宿、貪財宿
(プールヴァ・シェーダー)</td><td>あらゆる急速の事に吉。また学問を修め、沐浴をし、子授けの祈祷を受けるのに吉。また僧や神官への布施、城を築く事、兵士を配する事、衣服を新調し着飾る事などに吉。</td><td>食べ物や財産に困らない。王侯君主の寵愛を受け、また神を祀るのを好む。一生幸せに過ごせる。</td></tr> <tr><th>危宿、百毒宿
(ウッタラ・シェーダー)</td><td>薬の服用や調合など、病気への対処に大吉。池を造る事や麻の種蒔き、行商に出る事、造船や酒の醸造などに吉。</td><td>酒色に耽る事がある。物怖じしない性格で打たれ強く、怒りっぽい所もある。人づきあいはあまり長続きしない。また、医学や薬学に適性あり。</td></tr> <tr><th>室宿、前賢迹宿
(シュラヴァナ)</td><td>剛猛の事に吉、罪人の取り調べや逃亡者を捕らえる事などに吉。
それ以外の事には凶。</td><td>猛々しく怒りっぽい性格。略奪を好む。無慈悲。</td></tr> <tr><th>壁宿、北賢迹宿
(ダニシュター)</td><td>都市を築く事、結婚、長寿や福徳繁栄を祈って修法を行うのに吉。
南の方角に行く事は凶。</td><td>王侯君主の寵愛を受ける。子供に多く恵まれる。慎み深い性格で、布施を好み神々や先祖を敬う。学問をよく修める。</td></tr> <tr><th>奎宿、流潅宿
(シャタビシャー)</td><td>倉庫や畜舎を建てる事、家畜を数える事、酒や乳製品を作る事、着飾る事、遠方に出かける事に吉。</td><td>家業を受け継いで成功し、財を成す。金の出入りが激しく遊び好きだが、最終的にはさらに財を得る。布施を好む。子孫や 家畜などの財産に恵まれ、教典にも精通している。</td></tr> <tr><th>婁宿、馬師宿
(プールヴァ・バードラパダー)</td><td>あらゆる急速の事に吉。また薬の服用や馬などの家畜の調教などに吉。</td><td>多芸多才。病気になりにくく、また医術の才有り。土地や使用人を多く持つ。君主に真面目に仕える。施しを好み、人づきあいはそう悪くないが、親密になる事はない。</td></tr> <tr><th>胃宿、長息宿
(ウッタラ・バードラパダー)</td><td>あらゆる剛猛の事に吉、逆賊の征伐や悪巧みを暴く事など。また王侯が善行を行うのに吉。</td><td>頑固者で短気、性悪。酒や肉を好む。嘘つきで、他人の物を奪い乱暴者で敵が多い反面、子孫や使用人、部下に多く恵まれる。</td></tr> <tr><th>昴宿、名称宿
(レヴァティー)</td><td>調理等で火を使う事、家畜を数える事、薬の調合、畜舎を建てる事、悪人や逆賊を征伐する事、頭髪を剃る事などに吉。
旅行などには凶。</td><td>善行を心がけている。学問に励み、身なりもきちんとしている。強情な所があり、弁舌に巧み。多くの子供に恵まれる。</td></tr> </table>

漢訳名
(梵名)
直日の吉凶直日に生まれた人の性格
畢宿、長育宿
(アシュヴィニー)</td><td>農作業、田畑や住宅の修理や橋や道の修理、用水路を造る事など土木工事関連に吉。
借金や出費、(穀物などでの)納税に凶。</td><td>財産や子供に恵まれる。聡明で施しを好む。性格は頑固な所があり口数は少ない。ゆったりとした動作。礼儀にかなった身のこなしをしている。</td>