九七式印字機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
九七式印字機(きゅうななしきいんじき)は、機械式暗号の一種であり、日本陸軍の電動機械式暗号機、機密兵器通信機材九七式印字機のことである。九二式印字機の後継機種として高等司令部間の通信に用いた。
海軍の九七式印字機、および外務省の“九七式欧文印字機”については、次の各項目を参照のこと。
これらおよびその他の日本の暗号機全体については、日本の機械式暗号を参照のこと。
概要
日本陸軍の九七式印字機について、概要を示す。
- 九七式印字機は本体と整流器(交流100V - 直流24V)、蓄電池および他の付属品から構成される。
- 本体は打鍵盤、作動機、印字機、筐体、台板から構成され、自重は約42kg。
- 鍵文字を4つの鍵輪に設定し、平文を打鍵すると暗号文が印字される。
- 入出力文字は打鍵部の外観から判断して仮名文字である。
- 外務省や海軍の九七式と異なり、プラグボードが存在しない。
- 換字機構はエニグマ暗号機と同様の鼓胴式である。
- 九二式と同様に、陸軍は九七式に全幅の信頼は置いてなかった。
歴史
- 1932年(昭和7年)
- 1935年(昭和10年)
- 5月、九七式の試製に着手。
- 12月、試製が完了する。
- 1936年(昭和11年)
- 1月、九七式を陸軍技術本部内にて機能試験を開始。
- 5月、特別陣地攻防演習にて電信第一連隊が実用試験を行う。
- 10月、参謀本部にて実用試験を開始。
- 1937年(昭和12年)
- 4月、九七式を設計改良を開始。
- 9月、改修が完了。
- 1940年(昭和15年)
- 4月、陸軍技術本部所有の九二式印字機を九七式に改造もしくは破棄した。
- 1945年(昭和20年)
- 8月、九七式を改良した一式一号印字機を使用開始。
仮名及び数字を二数字に暗号化。乱数作成用として全軍に配布した。
- 8月、九七式を改良した一式一号印字機を使用開始。
暗号機開発に係わった民間人
昭和20年当時、第五陸軍技術研究所では「暗号機及暗号解読機ノ研究」として民間研究者を研究嘱託とした(括弧内は嘱託任命年)
- 東京工大: 渡辺孫一郎(昭和18年)
- 東北帝大: 泉信一(昭和18年)、岡田幸雄(昭和18年)
- 名古屋帝大: 黒田成勝(昭和18年)、中山正(昭和19年)、伊藤清(昭和19年)
- 東京芝浦電気株式会社通信機製造課: 小宮勇蔵(昭和18年)
- 三菱重工株式会社: 木暮清雄(昭和13年)
- 日本タイプライター株式会社: 針生清武(昭和15年)
参考文献
- 「通信戦の回顧と通信戦施策に関する一考察」、仲野好雄、昭和30年
- 日本無線史第9巻、「陸軍無線史」、電波監理委員会、1951年
- 昭和14年 陸機密大日記 第2冊: 軍事機密受第四四〇号 陸軍省兵器局機械課 九七式印字機取扱法配賦ノ件(陸軍省と朝鮮、台湾、満州国および中国遠征軍の司令部に配布)
- 昭和15年 陸機密大日記 第3冊: 軍事機密受第五一七号 陸軍技術本部 通信器材九七式印字機假制式制定ノ件(印字機の外観写真あり)
- 昭和15年 密大日記 第15冊: 軍事機密受第八一六号 機械課 九二式印字機処理ニ関スル件
関連項目
外部リンク
- 国立公文書館 アジア歴史資料データベース、防衛庁防衛研究所の文献がオンライン閲覧可能。