不可分債務
不可分債務(ふかぶんさいむ)とは、多数当事者間の債権債務関係の一つであり、数人の債務者が同一の不可分な給付を目的として負う債務である(民法430条)。「不可分」の判断基準は債務の性質又は当事者の意思表示の解釈による。不可分債務には不可分債権についての民法429条の規定、連帯債務についての民法434条から民法440条までの規定を除く規定が準用される(民法430条)。
- 民法の規定については、以下で条数のみ記載する。
不可分債務の対外的効力
不可分債務における債権者の各債務者に対する関係(対外的効力)については、連帯債務の規定の準用により、債権者は債務者の一人に対して、あるいは同時・順次に全債務者に対して、全部又は一部の弁済を請求することができる(430条・432条)。
不可分債務の対内的効力
不可分債務の一人の債務者と債権者との間に一定の事由が生じた場合の他債務者と債権者との関係(対内的効力)については、連帯債務ではなく不可分債権についての規定が準用されており(430条・429条)、債務者の一人が履行した場合(弁済の提供、供託、代物弁済、受領遅滞)以外は他の債務者に影響を与えない相対的効力(相対効)にとどまる。また、保証と異なり催告の抗弁権・検索の抗弁権がない。これらのことから、複数の債務者が同一の目的に向けられた債務を負担する類型(保証債務や連帯債務など)の中では、もっとも債権が強化されているとされる。
このように、不可分債務に絶対的効力を定めた規定の準用がないのは、それが念頭に置いている典型的な事例が金銭債務ではなく「共有物の引渡債務」等だからであるといえる。すなわち、複数の債務者が共有する物につき引渡債権を有する債権者は、その一部が混同し、あるいは債務者のうちの一人に対して債務免除をし、もしくは債務者のうちの一人につき消滅時効が成立したとしても、そのことによって共有物の一部について引渡債務が消滅する(=共有物のうち一部だけ引き渡さなくてもよくなる)というのは、債権者の合理的意思とはいえないし、現実的でもないからである。
不可分債務の内部関係
不可分債務の各債務者間の関係については、連帯債務の内部関係と同様の扱いを受ける(430条)。