リモネン
リモネン(limonene)は、柑橘類の皮に含まれる代表的な単環式モノテルペンである。化学式がC10H16で表され、分子量は136.23 g/molである。無色透明の液体。キラル化合物であり、いずれのエナンチオマーも生合成されるが、強いレモン臭がするのはD-リモネン((+)-リモネン)の方である。なお、ラセミ体はジペンテンとも呼ばれる[1]。
性質
最も重要なエナンチオマーはD(+)体で、柑橘類の果皮に多く含まれ、その香りを構成する物質の一つである。二重結合を二つ有し、酸化されやすい。L体はハッカ油に含まれ、ラセミ体はテレビン油等に含まれる。いずれも香料としての用途があり、合成も行われている。スチレンモノマー(単量体)と構造が似ているためスチロール樹脂(ポリスチレン)を溶解する性質があり、特に柑橘類から採取されるd体は発泡スチロールの安全な溶剤として注目されている。また、洗剤やプラモデル用接着剤にもこれを使ったものが登場している。
なお、D体は雄ラットに対する発癌性が報告されているが[2]、これはα2μ-グロブリンを生成する雄ラットのみに特異的に起こるもので、ヒトなど他の種では起こらないと考えられている[3]。 また、空気酸化を受けたD体には感作性も報告されているが、リモネンは感作性と刺激性を除けば毒性の低い物質であると評価されている[3]。
D体
融点 -74.35℃、沸点 175.5-176℃。系統名は(R)-1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセン。CAS登録番号は[5989-27-5]。
L体
融点 -74.35℃、沸点 175.5-176℃。系統名は(S)-1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセン。CAS登録番号は[5989-54-8]。
ラセミ体
別名としてジペンテンとも呼ばれる。融点-95.9℃、沸点175.5-176℃。系統名は1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセン。CAS登録番号は[138-86-3]。