マリンバ
マリンバ (Marimba) は、鍵盤打楽器の一種。
構造
ピアノと同様の配列をした木製(ローズウッド/Rosewoodやパドック/Padauk)の鍵盤をマレットと呼ばれる枹・ばちでたたいて演奏する。同じ木琴の一種であるシロフォンと同様の構造であるが、シロフォンよりも鍵盤が広く厚く造られており、深みのある音色を表現できる。さらに、鍵盤の下部に各音階によって長さを変えた共鳴用の金属管が設けられており、その下端を閉じることにより、鍵盤の音に共鳴し増幅させる。それにより、さらに豊かな音色となる。
音域は通常の4オクターブから80年代に5オクターブをヤマハが開発し世界に普及させた。その後、マリンバ・ワンが高音域に拡張しほかのメーカーがこれを追った。さらに近年5オクターブ半(こおろぎ社/ヤマハ/アダムス/マリンバ・ワン)のものやアーチストモデル(安部/ヴァン・サイス)まであり、理論上は6オクターブ半(G0-D7)まで拡張することが可能である。近年は奏者の指向が中音域~低音域にマリンバの魅力を見出す傾向にある。マリンバを高音域に拡張して、鍵盤の材質を根本的に変えたものはシロリンバと呼ばれる。また低音専用のマリンバはバスマリンバと呼ばれるが、共鳴管と構造のみが違い、コンサートマリンバの低音部と同一の音域に作られている。また、ピッコロマリンバやコントラバスマリンバを特注して使う奏者もいる。
なお、シロフォンとマリンバの大きな違いに、その調律方法の違いがある。現在のシロフォンは3倍音(オクターヴと5度上)が基本で、低音域では7倍音(2オクターヴと短7度上)も調律されるのに対し、マリンバの調律は4倍音(2オクターヴ上の音)で、低音部ではさらに10倍音(3オクターヴと長3度上)も調律される。その結果、シロフォンに比べて豊かな低音が特徴となる。
なお、Studio 49によるMARIMBA concert RXMV 5100はC1からD7までの6オクターブ強を市販で実現させている。
歴史
起源はアフリカにあると言われ、木の板を並べた下にひょうたんをぶら下げて共鳴管の役割を果たしていたと言われている。アフリカのバントゥー語群で、「リンバ」は木の棒を意味し、「マ」が多くの数を表す接頭語であるから、「マリンバ」は、多数の木の棒から成る楽器をあらわす。
現在の形のマリンバが生まれたのは、19世紀後半、グアテマラであると言われている。またメキシコ等南米でもマリンバが古くから演奏されておりメキシカン・マリンバとして民族音楽のスタイルを形成している。これらは米国に持ち込まれるようになり、1910年代には、米国での製作が始まり、シカゴのディーガン(Deagan) は、木製パイプを金属製パイプに取り替えた。その後、鍵盤の配列をピアノ同様の配列にするなど多くの改良がなされ、また、演奏スタイルは、従来一つの楽器を複数人で叩くスタイルであったのが、現在の西洋伝統音楽の独奏者のように演奏するスタイルへ徐々に変貌した。
現在ではマリンバは、単にオーケストラ楽器というだけでなく、パイプによってもたらされた大きな音量によってソロ楽器としても取り扱われるようになった。特に、ソロ楽器としての開拓者としては、日本の安倍圭子の貢献が大きい。近年ではマリンバを多く取り入れたマリンバオーケストラとしてのスタイルも確立され、多種多様な場面で用いられている。またソロ・マリンバ向けの楽曲も多く作曲されており、非常に高度な技術を要する曲も増えてきている。
譜面上の略記
- Mar. Mari. Mrb. 等
奏法
演奏に際しては通常マレットが使われる。マレットは、ゴムの玉にさまざまなものをかぶせることによって、音色を変えることができる。通常演奏される際は、マレット2本~4本で演奏されることが多い。しかし、特殊な楽曲によっては6本を必要とする場合もある。また、4本マレットの持ち方(グリップ)にも様々な方式がある。クロスグリップのトラディショナル&バートン・グリップ、ノンクロスのマッサー&スティーブンス・グリップ。日本ではクロスグリップが主流であるのに対して欧米ではインディペンデント・グリップ(ノンクロス)が主流となっている。 通常の"マレットの先端を鍵盤に落とす"奏法やロールのみならず、マレットを鍵盤に押し付けるように弾くことで音に消音効果と独特の打音を持たせるデッドストローク、先端で鍵盤の表面をこするように鳴らすグリッサンド奏法、片手に持った複数本のマレットを縦に並べて鍵盤を挟み表裏を連続して弾くマンドリンロール、マレットの柄で鍵盤を弾く、楽器の側板を打楽器として叩く、などその奏法は多種多様であり、また更なる開発が進められている。
マリンバ奏者
- 安倍圭子
- 木村恭子
- 三村奈々恵
- フランソワ・デュ・ボワ
- 神谷百子
- 山下やよい
- 高橋美智子
- 中川佳子
- SINSKE
- 竹島悟史
- 山本晶子
- 布谷史人
- 大茂絵里子
- 吉田ミカ
- 塚越慎子
- 臼杵美智代
- 宅間久善
- 相澤睦子
- 通崎睦美
- 出田りあ
- 沓野勢津子
ビブリオグラフィ
- Helmut Brenner: Marimbas in Lateinamerika. Historische Fakten und Status quo der Marimbatraditionen in Mexiko, Guatemala, Belize, Honduras, El Salvador, Nicaragua, Costa Rica, Kolumbien, Ecuador und Brasilien (=Studien und Materialien zur Musikwissenschaft 43), Hildesheim–Zürich–New York: Georg Olms Verlag, 2007.
関連項目
外部リンク