マスクメロン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マスクメロン(Musk Melon)は、麝香(Musk)のような強い芳香を持つメロンの総称である。別名:ジャコウウリ。
日本では、主にアールスフェボリット(あるいはその系統の品種、後述)のことを指し、品種名ではない。
名称の「マスク」は上記の通りであり、「仮面」の意味の「マスク(Mask)」ではない。
目次
主なマスクメロン
カンタルペンシス群 (Cantalupensis group)
レティクラトゥス群 (Reticulatus Group)
アールスフェボリット
アールスフェボリット(Earl's Favourite)は、網メロンの代表品種である。略してアールスメロンとも呼ばれる。
- 特徴
- 果実は、ほぼ球形。果皮表面には、コルク質の網目を生じる。果肉は、黄緑色、果汁が多く、非常に甘い。つる割れ病に抵抗性がなく、うどんこ病などの他の病害にも抵抗性がないので栽培は非常に難しい。根が弱くつる割れ病抵抗性のメロン(大井、バーネットヒルフェボリットなど台木専用種)に接ぎ木をして栽培されている[1]。
- 生産
- 栽培は温度・湿度を管理した温室内で行わなければならず、まめに手を加えなければ品質の良いものはできない。また1本のつるからは1個だけしか生産しない。このため価格も高く、高級品では1玉3万円を超えるものもある。主産地は静岡県で、高知県がこれに次ぐ。
- なお、複数の実が結実した場合、1個を残し他は小さいうちに摘み取られる。摘み取られた実は「小メロン」の名で漬物(メロン漬け)や刺身のつまに利用される。
- 歴史
- この品種が開発されたのは19世紀末のイギリスである。「伯爵のお気に入り」という意味の名は、ラドナー伯爵邸の農園で作られたことに由来する。日本では1925年(大正14年)に導入され、静岡県温室農業協同組合クラウンメロン支所の前身である磐田温室農協丸静支所などで栽培方法の確立が行われ、日本全国へと広まっていった。現在では本国イギリスではこの種は栽培されなくなっている。
- 交配種
- 赤肉メロンの代表格である夕張メロンは、この「アールスフェボリット」(母)と「スパイシーカンタロープ」(父)の交配種である。
アールス系品種
アールスの弱点である耐候性・病害抵抗性を付与し改良されたアールスとそっくりの品種の事を指す。ハウスメロン並みの丈夫さを持ち、栽培が容易で糖度も上がりやすい品種が多い。上手に栽培すると純粋なアールスと見分けがつかなくなるぐらいで、食味もアールスと同等の品質のメロンである。サカタのタネの「アールスナイト」、八江農芸の「アールスセイヌ」、横浜植木 の「雅」シリーズが各地で栽培されている。この三つのシリーズは全てうどんこ病耐病性・つる割れ病抵抗性であり、栽培も容易である。茨城・愛知・熊本県がおもな産地、1玉500円~2000円前後で入手できる。
脚注
- ↑ 大井とバーネットはアールスが導入される前に温室栽培での主流であった品種である。つる割れ病抵抗性があったため、台木として使用されるようになった。つる割れ病はアールス種に大発生することから「アールス病」と呼ぶ場合もある。