フォボス (衛星)
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フォボス(Mars I Phobos)は、火星の第1衛星。もう1つの火星の衛星であるダイモスより大きく、より内側の軌道を回っている。1877年8月18日にアサフ・ホールによって発見された。ギリシア神話の神ポボスにちなんで命名された。
特徴
フォボスは太陽系の惑星の衛星の中で最も主星に近く、火星の表面から6,000km以内の軌道を回っている。
フォボスの軌道は火星の静止軌道より内側にあるため、公転速度は火星の自転速度よりも速い。従って、1日に2回西から上り速いスピードで空を横切り東へ沈む。表面に近いため、火星のどこからでも見えるわけではない。また、火星の自転より早く公転しているので、フォボスは火星の潮汐力のために徐々に火星に引きつけられ(1.8m/世紀)、いずれロシュ限界に達し壊れる運命にある。5000万年以内に火星の表面に激突するか、破壊され火星の環となると考えられている。
フォボスは、ダイモスと共に火星の重力に捕捉された小惑星だと考えられている。実際、両者はC型小惑星同様に炭素化合物に富んでいるが、密度が非常に小さいことから、氷と岩石の混合物だと考えられている。
近接探査
1988年に打ち上げられたソ連の探査機フォボス2号は、翌年火星の周回軌道に入り、フォボスへの接近中に故障したが、その直前にフォボスからごくわずかな気体が安定して噴出していることを発見した。この気体は水蒸気だと考えられている。
2011年に打ち上げられたロシアの探査機フォボス・グルントは、フォボスからのサンプルリターンを計画していたが地球周回軌道からの離脱に失敗し、大気圏へ突入した。
地形
テンプレート:Main フォボスには一つの峰 (Ridges) と十数個のクレーターが確認されている。峰はヨハネス・ケプラーに因んでケプラー・ドルスムと名付けられた。クレーターは天文学者、および『ガリヴァー旅行記』の登場人物に因んで名付けられた。
フォボス最大のクレーターは直径が10kmあり、ホールの妻アンジェリンの旧姓にちなみスティックニー・クレーターと命名されている。スティックニーを中心としてフォボスには放射状の溝が見られるが、これはスティックニーを作った天体が衝突した際の衝撃でできたと考えられている。
フォボス空洞説
1950年代から60年代にかけて、フォボスの奇妙な軌道と密度の低さから、フォボスは中空の人工天体ではないかという説が唱えられたことがある。
1958年頃、フォボスの公転の永年加速について研究していたロシア人の宇宙物理学者ヨシフ・シクロフスキーは、フォボスが「薄い金属板」構造であると提唱した。これはフォボスが人工的な起源を持つことを示唆するものである[1]。シクロフスキーは火星の上層大気の密度の推定値に基いて、微弱な制動効果でフォボスの永年加速を説明するためには、フォボスが非常に軽くなければならないと推論した -- ある計算では直径が16km、厚さは6cm未満の中空の鉄の球が導かれた[2]。
アイゼンハワー合衆国大統領の科学顧問を務めていたジークフリード・シンガーは、"Astronautics" 誌の1960年2月号でシクロフスキー説を支持し、さらに「フォボスの目的は、おそらく火星人が彼らの惑星の周囲で安全に活動できるように、火星の大気中の放射を吸い取ってしまうことだろう」というところまで飛躍させた。また、シクロフスキーと親しかったカール・セーガンやフレッド・ホイルも人工的要素を指摘していた。
しかし、後にこうした考えが生まれる切っ掛けとなった永年加速に関する疑問が提示され[3]、そして1969年までにはこの問題は解決された[4]。初期の研究では、軌道高度が低下する速度を5cm/年という過大な値を使用していたが、後に1.8cm/年まで修正された。現在では、永年加速は当時考慮されていなかった潮汐効果の結果だと考えられている。また、フォボスの密度は1.9 g/cm3と測定されており、これは中空の殻であるという説とは矛盾する。さらに、1970年代にバイキング探査機によって得られた画像は明らかに天然の天体であり、人工物ではないことを示していた。
同様の月空洞説や地球空洞説も唱えられたことがある。
フォボスを扱った作品
脚注
- ↑ Shklovsky, I. S.; The Universe, Life, and Mind, Academy of Sciences USSR, Moscow, 1962
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