ファウンデーション対帝国
テンプレート:Portal 『ファウンデーション対帝国』(Foundation and Empire)は、アイザック・アシモフのSF小説。ファウンデーションシリーズの第2巻で、『ファウンデーション』の続編にあたる。アメリカにおいて初版は1952年に発行された。
概要
2編の中編からなる。1945年の『アスタウンディング・サイエンスフィクション』誌に掲載された「死者の手」と、2回に分けて掲載された「ザ・ミュール」をまとめたもの。
銀河系の端にある惑星ターミナスに銀河百科辞典編纂者の集団ファウンデーションが追放されて約200年後、貿易の力によって拡張を続けるファウンデーションはついに銀河帝国と直接対峙することになった。さらにその後、数学者ハリ・セルダンらによって作り上げられた第二銀河帝国復興までの計画、セルダン計画(プラン)を破壊する存在が登場する。
あらすじ
ファウンデーションはセルダン危機と呼ばれる非常事態を定期的に迎え、乗り越えることで力をつけていった。圧倒的な科学力を保持し、貿易によって周辺諸国を従え勢力を伸ばすファウンデーションだが、そのことが若くて有能な銀河帝国将軍ベル・リオーズの耳にはいり、自身で確認した後、軍を率いて制圧に乗り出す。それに対しファウンデーションの権力者たちは、貿易商人ラサン・デヴァーズらを使い、帝国軍の動向を探り侵攻を食い止めようとした。デヴァーズは帝国軍に一旦捕まり、将軍に同行させられているドゥーセム・バーを味方に引き入れて画策するが、事態は悪化する一方だった。デヴァーズらは将軍の元から逃げて帝国の首都惑星トランターに行き画策するが、これも失敗して脱出する。しかしその頃、事態は急展開を迎えていた。
約1世紀後、ファウンデーション内部は腐敗しきっていた。圧政に反発する独立貿易商人らは内戦を計画したが、その頃ミュールという人物が登場する。ミュールは、独立王国となる寸前だった惑星カルガンを戦うことなく占領した上、ファウンデーション及び貿易商人らの世界に戦争をしかけた。この事態にファウンデーションと独立貿易商人たちは手を結ぶが、事態は改善されなかった。やがて時間霊廟が開き、それまでにもあったようにハリ・セルダンのホログラフ画像が心理歴史学に基づいて予測していた現状の説明を行うが、それらはすべて外れており、詰めかけていた人は混乱に陥る。直後、ミュールの軍隊による襲撃を受けてファウンデーションは陥落する。逃げおおせた独立貿易商人世界の人間トランとその妻ベイタ、学者のエブリング・ミス、ミュールから逃げてきた道化師マグニフィコらは状況を打破するため、存在だけが知られていた第二ファウンデーション探索の旅に出る。一同は、40年前に大略奪に遭い廃墟と化した、かつての首都惑星トランターに赴いて昔の資料を捜索した。調査で衰弱しきったエブリング・ミスにより、ついに第二ファウンデーションの場所が明らかになったと思われた瞬間、事態は急転する。
登場人物
第1部・将軍
- ベル・リオーズ
- 銀河帝国の元老院議員で三級将軍。34歳。人心掌握や戦略的能力に優れる人物。ファウンデーションの噂を確かめ、制圧に乗り出す。
- クレオン二世
- 銀河帝国最後の強力な皇帝。年老いて病弱の身だが、未だに強大な権力を誇る。
- ブロドリック
- 皇帝のそばに仕える内務秘書官。リオーズの監視役に赴く。
- ドゥーセム・バー
- 惑星シェウナに住む帝国貴族の老人で、オナム・バーの唯一生き残った息子。ファウンデーションを知るものとしてリオーズに協力させられた後、デヴァーズと共に脱出する。シェウナを蝕む銀河帝国を憎んでいる。
- ラサン・デヴァーズ
- ファウンデーションの貿易商人。リオーズに捕まってドゥーセム・バーと接触する。脱出後トランターに赴き画策するが失敗に終わる。
- セネット・フォレル
- ファウンデーションの実力者。デヴァーズを使って危機を乗り切ろうとする。
第2部・ザ・ミュール
- ベイタ・ダレル
- トランの妻。24歳。新婚旅行地に選んだ惑星カルガンでマグニフィコを庇護して以来、ファウンデーションとミュールを巡る事態に巻き込まれ、行動する。元ターミナス市長ホバー・マロウの遠い子孫。
- トラン
- 独立貿易商人の世界の一つである惑星ヘイブン出身で、ベイタの夫。
- フラン
- トランの父。片腕で頑固者。
- ランデュ
- トランの叔父。惑星ヘイブンの実力者で冷静な判断力をもつ。
- ラサン・デヴァーズ
- 会話の中にのみ登場。すでに昔の人間であり、トランの曽祖父と共に迎えた最期が語られる。
- インドバー三世
- ターミナス市長。世襲制となった市長の3代目。
- ハン・プリッチャー
- ファウンデーションの中尉で諜報活動を行う。43歳。惑星ヘイブンへの出張を命ぜられるが、独断でミュールがいる惑星カルガンに行き、ベイタらと接触することになる。
- エブリング・ミス
- 惑星ターミナスの科学者で伊達者。途絶えてしまった心理歴史学を一部再建し、セルダン危機が近いことを知る。その後第二ファウンデーション探索に乗り出す。
- マグニフィコ・ギガンティクス
- 道化師。身体は細く、鼻が大きく突き出ている。ミュールの下から逃げ、ベイタらに保護されたあと、行動をともにする。ヴィジ・ソナーの演奏にかけては天才的。
- ミュール
- 突然変異体(ミュータント)。無名から数年で勢力を広げ、ファウンデーションをも占領し、セルダン計画を潰す。
その他
- ヴィジ・ソナー(Visi-Sonor)
- 物語のキーとなるアイテムの一つで、電子楽器の一種。楽器であると同時に舞台演出装置でもあり、人間の視覚中枢を刺激して、様々な幻覚を見せる機能を持つ。
- 外形についての詳しい描写はないが、胸に抱えて使うタイプの楽器であり、表面の多数のキーを操作して演奏するものであるらしい。
- 優れた演奏家の手にかかれば、文字通り魔術的な効果を発揮する、究極の楽器である。しかし演奏には特別な資質が必要で、優れた演奏家どころかまともに弾ける者すら稀という、別の意味でも究極の楽器であった。
- 演奏者を選び過ぎるが故に、物語の時点ですでに過去の遺物と化しており、物語中で使用されるそれも、博物館の収蔵庫から持ち出された物である。
- マグニフィコは、ヴィジ・ソナーの演奏にかけては、天才的な技倆を備えていた。
- アニメ「フューチュラマ」 (Futurama) において、ヴィジ・ソナーと同様の(ただし幻覚ではなく、ホログラムによる立体映像を作り出す)機能を持つ管楽器「Holophonor」が登場している。
- 原子フィールド抑圧機
- 物語のもう一つのキーアイテム。ミュールの軍隊が使う唯一の新兵器。あらゆる核反応を止める機能を持ち、これを使われると原子力で駆動されるすべての機器が使用不能となる。宇宙船は動けず、発電所も止まってしまう。
- 化学反応には効果はないので対抗手段が無いわけではないが、社会や軍のメインのエネルギー源が失われるので、その打撃は非常に大きい。
書誌情報
- 『銀河帝国の興亡2 -怒濤編』、厚木淳訳、創元SF文庫、1969年10月 ISBN 4-488-60402-1
- 『ファウンデーション対帝国』、岡部宏之訳、ハヤカワ文庫SF571、1984年8月 ISBN 4-15-010571-5
関連項目
テンプレート:アイザック・アシモフの作品テンプレート:Asboxsv:Stiftelseserien#Stiftelsen och imperiet