パンデクテン方式
パンデクテン方式(パンデクテンほうしき)とは、民法典において、一般的・抽象的規定を個別的規定に先立ち「総則」としてまとめることにより、法典を体系的に編纂することに主眼をおいた著述形式である。日本の民法典は、パンデクテン方式によって構成・記述されている。対する形式がインスティトゥティオネス方式(de:Institutiones)。
成り立ち
パンデクテンとは、『ローマ法大全』のうち著名な法学者の学説を編纂した『学説彙纂』(がくせついさん。希 pandectes,羅 pandectae/digesta,独 Pandekten/Digesten)のことである。19世紀のドイツ私法学では、『学説彙纂』を重視した概念法学が隆盛を極め、パンデクテン法学 (Pandektenwissenschaft) と称された。パンデクテン方式は、パンデクテン法学の代表的学者であるベルンハルト・ヴィントシャイト(de:Bernhard Windscheid)が著した『パンデクテン教科書』で用いられ、後にパンデクテン法学の成果として結実したドイツ民法典(1900年成立)で用いられたことから、この名で呼ばれる。
1896年(明治29年)に公布され1898年(明治31年)に施行された日本の民法典は、ドイツ民法典に先行して成立したものの、当時起草中であったドイツ民法典、特にドイツ民法典第一草案の影響を強く受け、パンデクテン方式によって構成・記述された。もっとも、その内容においては、フランス民法典や他の先進各国私法の影響も見られる。
具体例
日本の民法典の目次を見ると、まず「第一編 総則」とあり、以下「第二編 物権」「第三編 債権」「第四編 親族」「第五編 相続」と続く。「第一編 総則」の内容は、「人」「物」「法律行為」「時効」など、以降の編に共通の事項がまとめられている。さらに、各編の中でも「第二編 物権」の第一章は「総則」、「第一編 総則」「第五章 法律行為」の第一節も「総則」という具合に、必要に応じて章・節を設定し、その章・節の中の共通部分も「総則」として前にくくりだされる。
利点
- 体系的に構成されているため、必要な条文を検索しやすい。
- 重複を少なくして、条文の数を少なくできる。
- 解釈の幅を広くしやすく、解釈を統一しやすい。
欠点
- 法学初心者・一般国民にはわかりづらく、使い難い。
- 現実の事案に適用する際には、必要な条項が散在してしまう。
パンデクテン体系の立法例
ドイツ民法典、日本民法典、タイ民法典、ロシア民法典、ベトナム民法典、カンボディア民法典草案など。ヨーロッパ民法典(検討中)についても、基本的にパンデクテン体系に則った構想がある。
なお、インスティトゥティオネス体系によるものとして、プロイセン一般ラント法典(1794年)、フランス民法典(1804年)、オーストリア一般民法典(1811年)などがある[1]。