ハロルド・バッド
ハロルド・バッド(Harold Budd, 1936年5月24日 -)はアメリカ合衆国の作曲家であり、ピアニストである。
カリフォルニア州ロサンゼルス出身である彼は幼少期をモハーベ砂漠で過ごし、幼い頃には電話線を吹き抜ける風によって生じる騒音に興味を覚えたという。
彼が作曲家としてスタートしたのは1962年のことである。それから後の数年間、地方の前衛的なコミュニティですばらしい名声を集めた。1966年に彼は南カリフォルニア大学の作曲コースを卒業した。
大学卒業後、音楽の制作を進めていくにしたがって彼の作曲はますますミニマル的に変貌していった。彼の実験的な作品のうちでも単調な二つの作品が"Coeur d'Orr"と"Oak of the Golden Dream"という作品である。 "Oak of the Golden Dream"はバリ島のスレンドロ音階を用いている。 "Lirio"と題した長い形式のソロ曲を作った後に, 彼はミニマリズムと前衛音楽に自らの限界を感じた。1970年に彼は一時的に作曲を中止し、カリフォルニア芸術協会の教職に就いた。ダニエル・レンツ、ジーン・ボーウェン、ジェームズ・テニー、ジョン・ボールデサリーらと活動を共にする。
二年後、彼は教職に就いたまま作曲家として再デビューした。1972年から1975年の間、彼はThe Pavilion of Dreamsという題にまとめられた、4つの自主制作作品を作曲した。それらの作品のスタイルはポピュラー・ジャズと前衛音楽を変わった方法で混ぜ合わせたものであった。
1976年に協会の教職を辞職し、その新しい曲のレコーディングに着手した。レコーディングはイギリスのアンビエントミュージックの創始者であるブライアン・イーノのプロデュースにより進められた。二年後、ハロルドは再デビュー・アルバムであるThe Pavilion of Dreamsをイーノのレーベルである「オブスキュア」からリリースした。
彼は独創的でありながら活発にアンビエントミュージックのスタイルを追究していった。ブライアン・イーノとの合作であるThe Plateaux of MirrorとThe Pearlをリリースしたときから次第に彼の特徴である浮遊した感覚のピアノスタイルを確立していった。Lovely Thunderでは精巧な電子音のテクスチャーを披露した(シンクラヴィアを導入)。テーマ的な作品である2000年発表のThe Roomではミニマリスト的アプローチへの回帰が見られる。
また、カリフォルニア芸術協会からの仲間で、イーノとのコラボレーションにも参加しているジーン・ボーウェンと1981年にCantil Recordsを設立、3枚のアルバムを制作している。
作品
- 1971年 Harold Budd
- 1978年 The Pavilion of Dreams
- 1980年 The Plateaux of Mirror (ブライアン・イーノと合作)
- 1981年 The Serpent (in Quicksilver)(EP, Cantil Records)
- 1981年 Eugene Bowen / Bourgeois Magnetic (EP, プロデュース, Cantil Records)
- 1982年 Abandoned Cities (Cantil Records)
- 1984年 The Pearl (ブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワと合作)
- 1986年 Lovely Thunder(元タンジェリン・ドリームのミハエル・ヘーニッヒと共同プロデュース)
- 1986年 The Moon and The Melodies (コクトー・ツインズと合作)
- 1987年 Myths 3: La Nouvelle Serenite (ギャヴィン・ブライヤーズ、ジョン・ハッセルと合作)
- 1988年 The White Arcades
- 1991年 By the Dawns Early Light (ビル・ネルソンが参加)
- 1992年 Music for 3 Pianos (ダニエル・レンツ、ルーベン・ガルシアと合作)
- 1994年 She is a Phantom (Zeitgeistと合作)
- 1994年 Through the Hill (アンディ・パートリッジと合作)
- 1995年 Agua (コンピレーション)
- 1995年 Glyph (エクトル・ザズーと合作)
- 1996年 Walk Into My Voice: American Beat Poetry (ダニエル・レンツ、ジェシカ・カラカーと合作)
- 1996年 Luxa
- 2000年 The Room
- 2003年 La Bella Vista (ダニエル・ラノワがプロデュースとして参加)
- 2003年 Translucence/Drift Music (ジョン・フォックスと合作)
- 2004年 Mysterious Skin (ロビン・ガスリーと合作、映画サウンドトラック)
- 2004年 Avalon Sutra/As Long As I Can Hold My Breath
- 2005年 Music for 'Fragments from the Inside'(エラルド・ベルノッチと合作)
- 2007年 Before The Day Breaks(ロビン・ガスリーと合作)
- 2007年 After The Night Falls(ロビン・ガスリーと合作)
- 2007年 Gene Bowen / Bourgeois Magnetic (EP reissue, プロデュース, Amorfon)
- 2008年 A Song For Lost Blossoms (Clive Wrightと合作)
- 2009年 Candylion (Clive Wrightと合作)
- 2010年 Little Windows (Clive Wrightと合作)
- 2011年 Bordeaux (ロビン・ガスリーと合作)
- 2011年 Nighthawks & Translucence & Drift Music(ジョン・フォックス、ルーベン・ガルシアと合作、Translucence & Drift Musicは旧作)
- 2011年 In the Mist
- 2011年 Winter Garden (Eraldo Bernocchi、ロビン・ガスリーと合作)
- 2012年 Bandits of Stature
- 2013年 Jane 1-11
また、ブライアン・イーノ名義のオムニバス作品"Music For Films Ⅲ"(1988年)でも一部の曲に参加している。