ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン
「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」 (Happiness is a Warm Gun) はビートルズの楽曲である。
解説
本作は1968年に発表されたビートルズのイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』(通称ホワイト・アルバム)に収録された曲のひとつ。LPレコードでは、A面最後に配置されていた。レノン=マッカートニー名義だが、実際の作者はジョン・レノン。製作中の仮題は"Happiness is a Warm Gun in Your Hand"。ビートルズのプレス・オフィサーであるデレク・テイラーが作詞に一部協力している。この曲は「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」と「マザー・スーペリア・ジャンプト・ザ・ガン」と「アイ・ニード・ア・フィックス」という3つの曲をつなげたとジョンが語っている。
この曲は、70のテイクを重ねた上、うまく演奏できた部分を切り張りして完成された。それは、ギターが4分の3拍子、ドラムが4分の4拍子となるポリリズムが取り入れている部分があり、一度に通して演奏するには複雑なためである。結局、詞も曲調も異なった3つの部分からなる作品に仕上がった。
レノンはこの曲について、「ロックンロールの歴史みたいなもの」と述べている。曲はそれぞれ三分以下の五つの部分から成り、軽快な短い部分から始まる。次に、ドラムとベース、そしてディストーションのかかったギターが入る。この部分のシュールな曲想は、LSDでのトリップ体験からとられたと言われている。曲は不吉な印象を強めていき、同じ詩節が繰り返される。最後の部分はドゥーワップのパロディーで、「バン・バン、シュート(撃て)」というバックコーラスが入る。
歌詞に見える「銃」は、「性交」、「ヘロインの使用」、そして「火器全般」の隠喩であると解釈されることが多い。いずれも、他者の犠牲の上に成り立つ自己満足という主題を示している。
- 歌詞の一連目には、性欲の発散を求める男が現れ、標的となる相手の苦痛を省みずに快楽を求めるさまを描く。
- 二連目では、麻薬注射を欲するジョンに、女子修道院長 "("Mother Superior") 、すなわちオノ・ヨーコが銃(皮下注射器の針)で穴を開ける ("jump a gun") 。
- 三連目では、銃にとり憑かれたこの男が、やはり他者を省みずに銃を使い、自分が一人前の男であると感じる。
ただしレノン自身は、この曲はヘロインとは関係ないとしている。
この曲は、アメリカの銃器専門雑誌に書かれていた記事をそっくりそのままタイトルとして拝借して作った曲だが(ちなみにその記事のタイトルの元ネタはチャールズ・M・シュルツの「スヌーピーのしあわせは…あったかい子犬 (Happiness is a Warm Puppy)」という本のタイトルである)、内容はスラングで訳すと猥褻な意味に取れるもの。具体的な例を挙げると、
- 「幸せとはぬくもりの残る拳銃」がスラング訳になると「幸せとはぬくもりの残るペニス」となる。
- 「女子修道院長さん…」と数回繰り返すところがスラング訳になると「女子修道院長さん、エッチをしろ」といろいろな言葉で書かれている。
- バック・コーラスの「バン・バン・シュート(引き金を引く際に出る音)」が「射精・射精」と連呼している風にとれる。
など。
そのため、「性的シンポリズム曲」という理由でアメリカのラジオ局では放送禁止になってしまい、アルバムにはウォーニング・ステッカーが貼られることになってしまった。
『アンソロジー3』には、アコースティック・ギターによるデモテイクが収録されているが、"Yoko Oh,No(=Ono),Oh,Yes"と小野洋子のことを駄洒落にして歌っている。
なお、ポール・マッカートニーは、このアルバムではこの曲がいちばん好きだと述べている。