ドライアイ

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ドライアイは、の疾患の一つ。「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う」と定義されている[1]の量が少なくなったり、成分が変化する事により、眼球の表面が乾燥し、傷や障害が生じる病気

病態と発生

角膜上の涙液は、油層、水層、粘液ムチン)層で構成され、いずれかの要素が欠乏しても安定性が崩れドライアイとなる[2]。 主にテレビコンピュータの画面を見る行為等による目の酷使、冷暖房による空気の乾燥化、コンタクトレンズの装着により発生が増加するといわれる。 コンピュータ作業(VDT作業)によるドライアイは、画面を凝視し瞬きの回数が減少することによると考えられている。また、コンタクト装着によるドライアイのうち、ソフトコンタクトでは表面から涙液の蒸発量が増すため症状を引き起こす[2]。 現代人は目を酷使する事が多く、一般的なオフィスでは約30%がドライアイと言われる。 コンタクトレンズを装着していると、その率は約40%と更に上がる。

主な病因

薬や他の病気によって症状がでることもある。代表的な病因は以下のとおり[2]

症状

以下の症状が発生する。

  • 目がゴロゴロする
  • 光がまぶしい
  • 目の痛み
  • 視界がかすむ
  • 10秒間以上目をあけていられない
  • 目の乾き
  • 目が重たくなる
  • 視力の低下
  • 結膜炎など、目の感染症にかかりやすくなる

診断

患者背景や、以下のことを参考に診断する。

  • 涙液の産生量低下
  • 涙液の蒸発量の上昇
  • 角結膜の異常(角膜上のキズなど)

また最近ではドライアイの自動診断装置(TSAS)を使い、10秒程で診断が出来るようになった。 今までは5分以上かかる上に、ろ紙を目に挟むなど患者の痛みを伴ったり、目に触れない場合でも医師の主観が入るなどの課題があった。 それを改良するため、角膜上に広がる涙の層が薄くなって拡散する様子を測定することで、ドライアイかどうかを判定できる手法も開発されている。

診断基準

ドライアイの診断基準[2]
試験法等 判定 判定 判定 判定
1.




A) シルマー試験第I法にて5mm以下
いずれかを
満たすもの

いずれかを
満たすもの

いずれかを
満たすもの
×
B) 涙液層破壊時間(BUT)5秒以下
2.






A) フルオレセイン染色スコア:3点以上(9点満点)
いずれかを
満たすもの
×
いずれかを
満たすもの

いずれかを
満たすもの
B) ローズベンガル染色スコア:3点以上(9点満点)
C) リサミングリーン染色スコア:3点以上(9点満点)
3.自覚症状 ×
ドライアイの診断 確定 疑い 疑い 疑い

治療

また最近では、ジクアホソルナトリウム(ジクアス)や本来胃腸薬であるレバミピド(ムコスタ)がドライアイの治療にも有効であることが確認されており、いずれも目薬として製品化されている[3][4]

予防

  • 長時間のデスクワークを避け、毎時間おきに目を休める。目を静かに瞑り、蒸しタオルをかけると良い。
  • 加湿器や濡れタオルなどで湿度を上げる。特に冬場の暖房使用時には乾燥を避ける。
  • 意識してまばたきをする。
  • エアコンの風が直接当たる場所での作業を避ける。
  • タバコの煙を避ける。
  • パソコンのモニタはOAフィルターを使用し、室内照明や日光の映り込みを避け、自分の目の高さより低い位置に設置する。
  • コンタクトレンズの使用時間を短くする。パソコン使用時にはなるべくコンタクトレンズを外す。

ヒト以外のドライアイ

イヌネコもドライアイになることが知られている。点眼治療が一般的であるが、獣医師の判断でピロカルピン等の経口投与も行われている。

脚注

  1. ドライアイ研究会 島﨑潤「2006年ドライアイ診断基準」『あたらしい眼科』2007年、24巻、p181-184
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 工藤かんな、島﨑潤「病気について知りたい!臨床講座1:ドライアイ」『PharmaTribune』2009年、1巻、1号、p28-32
  3. ドライアイ治療剤「ジクアス点眼液3%」製造販売承認取得 - 参天製薬・2010年12月
  4. ドライアイ治療剤「ムコスタ®点眼液UD2%」製造販売承認取得 - 大塚製薬・2011年9月26日

関連項目

外部リンク


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