トランスリンク (バンクーバー)
テンプレート:Infobox Government agency トランスリンク(英語:TransLink)は、カナダのブリティッシュコロンビア州南西部に位置するバンクーバー都市圏(メトロバンクーバー)の交通行政を所管する団体で、公式名称はSouth Coast British Columbia Transportation Authorityである(2007年11月に、それまでの Greater Vancouver Transportation Authority から改称)。圏内の公共交通を総称して「トランスリンク」と呼ぶことが多い。
目次
概要
ブリティッシュコロンビア州政府およびメトロバンクーバーのもと、交通を主体とした計画立案と予算管理を行う。圏内の社会資本の拡充と公共交通機関の統括や交通行政における環境保護を担当し、交通の円滑化と自動車交通量の抑制を目指す一元的な組織である。各事業の運営は下位に位置づけられた団体および組織に委ねられているためそれ自体の規模は小さい。しかしながらバンクーバー広域行政体の首長が役員をつとめ、財源についても域内の関連税制の変更を行うことが可能であるなどその権限は強く、中長期に渡り地域に対して効率的な社会資本の整備を行うことを可能としている。一方で、ストライキやロックアウトといった労使紛争が比較的多い文化の中にあっては、一元的であるがために地域社会に大きな影響を及ぼしてしまうことも否定できない。2001年4月1日から7月31日まで4ヶ月に及んだバス運転手の全面ストライキによって麻痺状態に陥ってしまうなど過去にも例がある。
歴史
ブリティッシュコロンビア州全土の公共交通を統括していたBCトランジットからバンクーバー都市圏のみを管轄する組織として1998年に独立し発足した。バンクーバーの公共交通に関する歴史は以下の通りである。
- 1889年 - 路面電車を開業
- 1922年 - カナダ自治領政府が、アメリカ合衆国にあわせて道路法規を変更
- 1923年 - ガソリンエンジンバスを導入
- 1948年 - 路面電車を置き換えるため、トロリーバスの運行を開始
- 1955年 - 路面電車を全廃
- 1963年 - ディーゼルエンジンバスを導入
- 1975年-76年 - トロリーバスを第二世代へ更新
- 1977年 - 通勤用フェリー、シーバスの運航を開始
- 1980年 - 障害者、高齢者用のバス、ハンディダートサービスの開始
- 1985年 - スカイトレインのエキスポ線を開通させる
- 1989年 - カナダ初のバリアフリー化事業を開始
- 1995年 - ウエストコーストエクスプレスの運行を開始
- 1996年 - Bライン設置
- 2005年 - トロリーバスを除く全てのバスを車椅子対応車に切り替え完了
- 2006年1月6日 - スカイトレインのミレニアム線の終着駅であるコマーシャルドライブ駅から一駅延長し、VCC・クラーク駅が開業。VCCの最寄駅となる。これに合わせ、当駅からブリティッシュコロンビア大学を結ぶ84番のバス路線を新設
- 2008年1月1日 - 運賃を値上げ
- 2008年4月20日 - トロリーバスを全て新型車に更新
- 2009年8月17日 - スカイトレインのカナダ線が開通し、これによってリッチモンド市中心部やバンクーバー国際空港と、バンクーバー市中心部が鉄道によって結ばれる
主な事業と運営組織
幹線道路網整備事業
他の北米の諸都市と同様に、マイカー通勤が一般的な圏内では幹線道路網の整備はメジャーロードネットワーク(略称MRN)と名づけてトランスリンクの中核事業となっている。全域の一般道路の延伸や拡張といった整備計画の立案と建設を21の下部組織や地域自治体と協力して行っている。圏内は多くの河川が流れているために、橋梁およびバイパス建設といった高速道路以外の大規模工事を伴うものもこれら道路整備計画に含んでいる。目下の最大の事業は2009年に開業を予定しているフレーザー川のゴールデンイヤーブリッジの架橋工事である。
路線バス事業
トランスリンクの最も主要な事業のひとつ。近隣ではマイカーの使えない学生や女性の交通手段としてバスの重要性はこれまでも高い上に、近年の原油価格の高騰に伴ってマイカーからバスへと通勤手段を変える人も少なくないため、トランスリンクでは需要がさらに高まることも予想している。運営はコーストマウンテンバスおよびウエストバンクーバー市営交通という2つの組織が担当しているが、BCトランジットがこの地域を管理していた時代からウエストバンクーバー市営交通は別の組織として独立していたため、前者はトランスリンクの下部組織である一方で、後者は委託契約を結んだ外部組織という位置づけになっている。各々の営業区域や規模は異なり、コーストマウンテンバスがバンクーバー都市圏のほとんどを網羅する広大な営業範囲を維持するのに対し、ウエストバンクーバー市営交通は小規模な組織でありサービスや車両も若干異なっている。
鉄道事業
北米の都市は日本やヨーロッパ諸国の都市と比較して都市の規模に対して鉄道網が発達しておらず、東海岸からのカナダナショナル鉄道、カナダ太平洋鉄道、VIA鉄道そしてアメリカからのアムトラックといった数多くの長距離鉄道が終着点とするバンクーバー都市圏でも都市鉄道網は存在しないに等しかった。しかしながら圏内では1986年のバンクーバー国際交通博覧会の開催をきっかけにスカイトレインと呼ばれる新交通システムの運行を開始した。同年のカナダ連邦政府による雇用均等法や1988年のカナダ多文化主義法の制定はバンクーバー都市圏の移民を大幅に増やして地域経済を繁栄させているが、それにともなう通勤圏の拡大や交通渋滞の悪化は万博以降における鉄道事業の拡大をさらに後押しさせた。今後もスカイトレインの延伸を中核にウエストコーストエクスプレスが運行する近郊都市を結ぶ通勤列車、ウエストコーストエクスプレスの設備拡充など、2010年のバンクーバーオリンピックに向けて鉄道事業をさらに発展させて交通手段を分散させていくことを予定している。
フェリー事業
海や河川の多いバンクーバー都市圏ではバスや鉄道についで短距離フェリーの利用も公共交通としても一般的であり、橋梁が未整備の箇所や陸上交通よりも移動時間が短縮できる箇所も存在するためトランスリンクでは陸上の公共交通機関を補完する目的でフェリーの運航している。1900年より運航を開始したバラード入り江連絡フェリーはシーバスとして、現在はコーストマウンテンバスが運航している。また、1957年に開設されフレーザー川の両岸、ラングリーとメイプルリッジを結んでいたアルビオンフェリーは、20台前後の自動車と旅客を積載できる2隻の小型のカーフェリーで運航していたが、2009年6月に近接してゴールデンイアーズブリッジが開通したことに伴い、その役目を終えた。
環境対策事業
交通がもたらす環境破壊の抑制に努力し地域住民の健康と大気汚染を考慮している。自転車の利用を積極的に促すためにバスにキャリアを架設、近年ではパークアンドライドシステムの運営によるマイカーの通勤利用削減や、路線バスでのハイブリッドカーおよび低排気ガス車など低公害車の採用や、新交通システムの利用促進など次世代の公共交通を検討している。一方で環境障害者の利用環境の改善も行っており路線バスの低床化や車椅子用リフトの設置を進めハンディダートと呼ばれる障害者用車両の運営も行う。
運賃制度
1ゾーン | 2ゾーン | 3ゾーン | YVR追加運賃 | |
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大人 (Adult) | $2.75 | $4.00 | $5.50 | +$5.00 |
割引 (Concession) | $1.75 | $2.75 | $3.75 | +$5.00 |
ウェストコーストエクスプレスを除いたすべてのトランスリンク管轄の公共交通機関はゾーン制と呼ばれる運賃制度を採用している。これはバンクーバー都市圏を3つの区域に分け、域内は同一運賃とし区域をまたぐごとに運賃が上がる仕組みで、大人の最低運賃は1ゾーン2.75カナダドルである。また4歳までの幼児は無料であり、5歳児から13歳までの児童、許可証を持った14歳から19歳までの学生および65歳以上の高齢者および障害者認定証をもった障害者は1ゾーンで1.75カナダドルの小人扱いの最低運賃としている。最高運賃については大人が3ゾーンで5.50カナダドル、小人は3.75ドルとしている。しかしながらこれらの運賃は曜日や日時によっても変則的に運用されており、平日の18時30分以降および土曜・日曜・祝祭日は全利用者に対し全ゾーン内で1ゾーン料金を適用する。ただし、バンクーバー国際空港からスカイトレインに乗車した場合は年齢や曜日に関係なく、通常料金の他に5.00カナダドルの特別運賃が追加される。 またマンスリーパス(1ヶ月定期券)利用者は日曜・祝祭日については1定期券で本人を含む大人最大2名と子供最大4名までを乗車可能とするなど利用特典もある。 トランスリンクでは発券から90分間トランスリンク内のみで有効な、これらの切符を路線バス車内・シーバス発着港・スカイトレイン各駅で販売するほか、一日乗車券、1ヶ月定期券(各暦月の末日まで有効、複数月の定期券は存在せず)、10枚綴りの回数券を圏内のコンビニエンスストアなどで委託販売している。これらの前売りの券を利用すれば、空港から利用する時の追加運賃は免除される。