スカンジウム
テンプレート:Elementbox スカンジウム(テンプレート:Lang-lan[1])は原子番号 21 の元素。元素記号は Sc。
概要
遷移元素で、イットリウムと共に希土類元素に分類される。第3族元素の一つで、スカンジウム族元素の一つでもある。銀白色の金属で、比重は2.99、融点は1541 テンプレート:℃、沸点は2831 テンプレート:℃(融点、沸点とも異なる実験値あり)。常温常圧で安定な結晶構造は六方最密充填構造 (HCP, α-Sc)。
水にはゆっくり溶け、熱水や酸には易溶。常温において空気中で酸化され、ハロゲン元素と反応する。安定な原子価は3価。比較的希少な金属である。トルトベイト石などに含まれる。
歴史
1879年にスウェーデンの分析学者ラルス・ニルソンによりガドリン石から発見され、スカンジナビアにちなんで名付けられた。ほぼ同時にこれを発見したクレーヴェにより、1870年にドミトリ・メンデレーエフが存在を予言したエカホウ素にあたると判明した[2]。
スカンジウムの化合物
- 酸化スカンジウム(III) (Sc2O3)
- 塩化スカンジウム(III) (Sc</sub>Cl3)
- 硝酸スカンジウム(III) (Sc</sub>(NO3)3)
同位体
用途
スカンジウムは反応性と価格が共に高いため、化合物の応用法の研究開発はあまり進まなかった。このため以前は有機化学の限られた分野で触媒としてわずかに用いられるにとどまっていたが、現在は用途の拡大に伴い新素材として注目されている。その筆頭格が照明での利用で、ヨウ化スカンジウム ScI3 をメタルハライドランプに使用してより強い光を得られる。ほかの用途としては、アルミニウム合金への添加、ニッケル・アルカリ蓄電池の陽極にスカンジウムを加えて電圧の安定や長寿命化を計ったり、ジルコニア磁器に酸化スカンジウム(III)を添加してひび割れを防ぐなどの用途がある。
スカンジウムの重量比でみた主要な用途は、高機能素材であるアルミニウム-スカンジウム合金の形での、一部の航空宇宙用部品、スポーツ用品(自転車、野球のバット、射撃、ラクロスなど)の材料である。しかしこれらの分野では、軽さや強度が近いチタンの方がはるかに多く利用されている。
スカンジウムをアルミニウムに添加すると、溶接における加熱部分での再結晶化や結晶粒成長が大幅に抑制される。アルミニウムは面心立方構造の金属であり、粒径の縮小はそれほど強度に対する効果がない。しかし Al3Sc が細かく分散することによって、合金中にいろいろな析出相が有るにもかかわらず、ミクロな単位で強度が増大する。本来の添加の目的は、溶接可能な構造材用合金の加熱時の過度な結晶粒成長の抑制であるが、添加によって二つの効果が促進される。一つは他の相がより細かく析出することによる強度の大幅な増大で、もう一つは時効硬化型合金における粒界の非析出帯の減少である。
最初にアルミニウム-スカンジウム合金が使用されたのは、旧ソビエト連邦の一部の潜水艦発射弾道ミサイルのノーズ・コーンである。海氷を貫通してもミサイル本体が壊れないほどの強度を確保できたため、北極海での、海氷下に潜行中のミサイル発射が可能になった。
テンプレート:仮リンクは、有機化学においてルイス酸触媒として用いられる。
1990年代半ばに東邦ガスの水谷らが、酸化ジルコニウム(IV)に酸化スカンジウム(III)を4-11 mol%固溶させたスカンジア安定化ジルコニアを固体酸化物燃料電池の電解質として見い出し、2000年になって第一稀元素化学工業の柿田らによって世界で初めて工業生産された。これまで高価と思われていたスカンジウムが市場に安価に供給されつつある。